不識
~達磨大師の禅の教え:自分など何者でもないと識る~
「あなたは何者か?」そう問われたとき、あなたならどう答えるでしょうか。
名前、職業、資格、勤務先や役職、家族構成、趣味…自分にまつわるさまざまな物事が思い浮かぶことでしょう。けれど、それらの要素はどれも、あなたのある一面を説明しているにすぎません。あなた自身は一体、何者か分かりますか。
この問いに、禅の宗祖である達磨大師は「不識」(ふしき)と答えました。かつて達磨大師がインドから中国の梁(りょう)に渡ったとき、国を治めていた武帝から宮廷に招かれました。仏教に帰依していた武帝は、高名な達磨大師と問答ができると喜び勇んで質問を投げかけます。
「朕、寺を立て僧を度す。何の功徳か有る(私は仏教に...