一点梅花蘂 三千世界香
~寒苦に耐えて花をひらき清香を放つ梅にまつわる禅語~
いま日本人にとって花といえば桜ですが、万葉集が詠まれた時代の代表花は梅だといわれています。万葉集の巻五には梅花の項があり、令和の語源となった「初春の令月にして、気淑く風和らぎ、梅は鏡前の粉を披き…」という序文からも、当時の人たちの梅に対する強い思いが伝わってきます。
梅の花は禅とも深いつながりを持っています。寒苦に耐えて花をひらき清香を放つ。これが苦境に遭うなかで、そこから逃げずに真正面から向き合う修行の身そのものと重なります。大事なのは清香、ほのかな香りです。一所懸命に修行に取り組んでいることを声高に言わなくても、その姿そのものが周りの人たちを自然と感化していく謙虚な強さ、そして人をや...