READYFOR株式会社 CEO 米良はるか氏 / 株式会社 日立コンサルティング 代表取締役 取締役社長 八尋俊英
23歳で起業して以来、仕事一筋で走ってきた米良さんは、2017年7月に大病を患い、7カ月にわたり仕事を休んだ。だが、療養中もあれこれやりたいことを見つけて、実行してきたという。病気を経て、経営者としての意識はどのように変わったのか、中高年へのエールも含めて話を伺った。

「第1回:起業のきっかけは師との出会い」はこちら>
「第2回:変えたいという『思い』とパートナーシップが大切」はこちら>
「第3回:ポストAI時代のサービス基盤として」はこちら>
「第4回:若者の起業が、市場の流動性を高める」はこちら>

病気を機に、思いを新たに

八尋
療養のためにお休みをされていたことは、経営者としての気持ちに何か変化をもたらしましたか?

米良
私はじっとしていられないタイプで……。病気で休んでいる間、家から出られないので、家の中でいろんなことをして過ごしていました。

まず、朝起きたら、リビングで1時間半ほどヨガをやって、その後は、ペン習字の通信教育の課題をやったり、読みたかった本を片っ端から読んだり。おかげで字がうまくなって、みんなから褒められました。私がこの後、大成功したときに、字が汚いと、色紙や契約書にサインをしたときに恥ずかしい思いをしますからね(笑)。

画像1: 病気を機に、思いを新たに

八尋
体調的には大変だったと思うのですが……。

米良
もちろんしんどかったけれど、自分のやりたいと思うときに、やりたいことができる、しかも誰にも文句を言われない独りの時間はなんてストレスフリーなんだろうとも思いました(笑)。

最初は、「READYFOR=米良はるか」という目で見られていましたので、休むことも、病気の公表も不安でした。ただ、休んでいる間に、一緒に頑張ってきた経営陣やメンバーがしっかりサポートしてくれて、会社を成長させてくれました。病気を通じて、覚悟を持って一緒にやっていく仲間がいると感じられたことはとてもよかったと思います。

だからこそ、もう一度、社会と関わっていきたいと思えたし、自分のやりたいことを徹底的に実行しようと思いを新たにして戻ってきたのです。それから、病気を患ったことで、いま自分がやるべきことと、人に任せてもいいことが明確に分けられるようになったようにも思います。

八尋
病いを克服されて、むしろパワーアップして戻ってこられたわけですね。

画像2: 病気を機に、思いを新たに

クラウドファンディングは行動を変えるきっかけになる

八尋
インターネットやSNSを駆使して、実際には会ったことのない人とも自在にコミュニケーションを取ったり、やりたいことを実現したりしているいまの若い人たちと、このEFOの読者にも多い40〜50代の世代では、さまざまなギャップがあるように思います。

ポストAI時代を迎えるにあたり、いま中高年の人たちは大きな意識の変革を迫られることになると思うのですが、どうすれば良いと思いますか?

米良
たくさんのプロジェクトが「やりたいこと」に向かって資金を集めているので、1,000円でも1万円でもかまわないので、一つでも支援していただけると、新たな気づきがあると思います。プロジェクトに関心を持てば、実際に現場を見てみようとか、仕事が忙しいからという理由でやらずじまいだったことを思い起こして、実際に行動に移したりすることにつながると思います。

さほどお金をかけなくても、人とつながれる時代ですし、自分が行動を変えることで、一気にコミュニティは広がります。クラウドファンディングは、まさにそのきっかけづくりに役立つと思います。

もちろん、ご自身がプロジェクトの実行者になることもできます。ちなみに、「Readyfor」のプロジェクトの実行者の中には90歳を超える方もいらっしゃるし、小学生もいます。実際に、プロジェクトが注目されてマスコミで紹介されるようになって、さまざまな方から連絡が来るようになったという年配の方もいます。

画像: クラウドファンディングは行動を変えるきっかけになる

行動を変える第一歩は「応援」

八尋
意識を変え、行動を変える最初の一歩を踏み出す際に、クラウドファンディングが役立つわけですね。一方で、長く会社人間として働いてきた人たちの中には、急にビジョンを持てとか、楽しい人生を生きろとか言われても、なかなか難しいと感じる方もいるかもしれません。

米良
確かに、大企業などにいて、部下を何十人、何百人も従えていたような人が退職して、地位も肩書きも持たずに、会社以外のコミュニティに新たに参加するのは、最初は戸惑いもあるでしょうし、とてもタフなことだと思います。

だからこそ、最初は応援するだけでもいいのではないででしょうか。誰もが実行者になる必要はありませんし、誰かを応援すること自体、自らのアイデンティティを醸成するのに役立つ、素晴らしい行為だと思います。

私は病気になって休むとき、READYFORという存在が自分の中の大きな割合を占めていましたので、それを失って、このまま病人というアイデンティティを生きることになるのだろうかと、とても不安になったことがあります。

ところが、休職中も結局、制約のある中でやりたいことを存分にやって、幸いにも生きる意味を見出すことができました。その気持ちの変化を経て、復帰後は、READYFORという会社に、いい意味であまり固執しなくなったんですね。いまは、たとえ辞めても、また何か新しいことを見つけるだろう、と思っています。

いずれにせよ、人の役に立つ、社会の役に立つ、誰かに喜んでもらえる、というのは生きるうえでとても大事なことだと思います。人生100年時代、60代で引退されても、まだまだ残りの人生は長い。その時間を少しでも社会に、あるいは誰かに役立てることができれば、人生はもっと楽しく、豊かになると思います。

ぜひ、応援から始めてみてください。

八尋
本日はさまざまに示唆に富むお話をしていただき、ありがとうございました。

(取材・文=田井中麻都佳/写真=秋山由樹)

画像1: クラウドファンディングで未来をつくる
その5 人を応援し、社会に役立つことで人生を豊かに

八尋俊英

株式会社 日立コンサルティング代表取締役 取締役社長。中学・高校時代に読み漁った本はレーニンの帝国主義論から相対性理論まで浅く広いが、とりわけカール・セーガン博士の『惑星へ』や『COSMOS』、アーサー・C・クラークのSF、ミヒャエル・エンデの『モモ』が、自らのメガヒストリー的な視野、ロンドン大学院での地政学的なアプローチの原点となった。20代に長銀で学んだプロジェクトファイナンスや大企業変革をベースに、その後、民間メーカーでのコンテンツサービス事業化や、官庁でのIT・ベンチャー政策立案も担当。産学連携にも関わりを得て、現在のビジネスエコシステム構想にたどり着く。2013年春、社会イノベーション担当役員として日立コンサルティングに入社、2014年社長就任、現在に至る。

画像2: クラウドファンディングで未来をつくる
その5 人を応援し、社会に役立つことで人生を豊かに

米良はるか

READYFOR株式会社 創業者 兼 代表取締役CEO。1987年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。2011年に日本初・国内最大のクラウドファンディングサービス「Readyfor」の立ち上げを行い、2014年より株式会社化、代表取締役 CEOに就任。World Economic Forumグローバルシェイパーズ2011に選出、日本人史上最年少でダボス会議に参加。現在は首相官邸「人生100年時代構想会議」の議員や内閣官房「歴史的資源を活用した観光まちづくり推進室」専門家を務める。

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