READYFOR株式会社 CEO 米良はるか氏 / 株式会社 日立コンサルティング 代表取締役 取締役社長 八尋俊英
ポストAI時代、日本の大企業に代表される既存の労働集約型の会社はどうなるのだろうか。米良さんは、大企業ならではの役割があると語る。大企業が起業家を支援し、育て、連携し、再び自らの中に取り入れるといった自在な関係性を築くことができれば、市場に流動性が生まれ、現在の社会の閉塞感を打ち破ることができると語る。

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大企業の意識も変わりつつある

八尋
前回、クラウドファンディングはポストAI時代のサービス基盤になる、というお話がありました。つまり、AIが進展して、人間が労働から解放されたとき、それぞれの人が生きる目的を果たすうえで、米良さんたちが手がけるしくみが役立つだろうと。

一方で、そういう時代が来ると、既存の労働集約型の日本の大企業などは大きく変わらざるを得ないでしょう。はたして、うまく変革できるでしょうか?

米良
前にもお話ししたように、当社では大企業と一緒に取り組んでいるプロジェクトもたくさんありますが、大企業だからといって動きが遅いとか、思いがないと感じたこともありません。むしろ、あれだけ大きな組織なのに、危機感を持ちながら、素早くトライしている。だからこそ、私たちもその企業に長期にわたってリターンがあるかたちで、一緒にしくみを設計していきたいと思っています。

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その一つが、今年から始まった法人向けのSDGsマッチング事業です。この事業は、参加企業がSDGs目標、支援テーマを決定し、我々が該当する活動・プロジェクトの募集を行って、選ばれたプロジェクトへ目標金額の50%を上限としてマッチングギフト(*)を実施するというサービスです。すでに5社が参加していて、マッチングギフトの総額は6,000万円に上ります。

(*)企業や団体などが社会貢献を目的として寄附や義援金を募る際、寄せられた金額に対して企業側が一定比率の額を上乗せし、寄附金額を増やした上で寄附する上乗せ贈与制度。

八尋
それは、面白い試みですね。大企業も、クラウドファンディングを積極的に使う時代になってきたわけですね。

私が2005年に経済産業省で主導した「情報大航海プロジェクト」では、そのメンバーに日立をはじめとする大企業とともに、デジタルコンテンツ制作会社のチームラボを加えたのですが、なぜベンチャー企業を国家プロジェクトに加えるのかと、たいへんなお叱りを受けたものです。いまや、チームラボはメジャーになり、グローバルに活動されています。そういう意味では、世の中は変わってきていると実感します。

米良
もちろん経営者の中には、「いやぁ、君たちはいいことをやっているね」などと言って、自分たちとは無関係といった感じであしらう人もいますが、新しいことをやっている以上、当然のことですよね。次にお会いするときには、「ぜひ、うちでもやりたい」と言ってもらえるようなサービスに進化させていきたいと思っています。

逆に、今はベンチャーというだけで謎の期待を寄せてもらっています(笑)。日本では女性起業家はまだ少ないので、それだけでも注目していただける。逆境だと感じたことはほとんどありません。

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組織を飛び出し、起業してみては

八尋
いまは、米良さんのように明確なビジョンを持っている若い人たちがたくさんいて、SDGsなどの社会課題を敏感に感じ取って行動している人たちがいます。一方で、大企業の中には、米良さんのように起業して活躍するような人にはなれないけれど、問題意識を持つ若い人たちも多い。その人たちの思いをうまく汲み上げて、企業活動に生かすことができれば、よりよい未来をつくることができると思うのですが、なかなかそれができていないようです。

実際に、世代間のコミュニケーションギャップに苦しんで、すぐに会社を辞めてしまったり、精神的に病んだりする若い人もいます。どうすればいいと思いますか?

米良
無責任かもしれませんが、組織が合わないと思ったら辞めてしまっていいと思います。辞めて外から会社を見てみると、逆に会社のありがたみもよく理解できるでしょう。企業に対して不満を持って、いろいろ文句を言っている人たちは、組織に守られているからこそ言える側面もあるのです。それを知ることも大事です。

私自身は、早いうちに起業して、自分で実績をつくってお金を稼がなければ生活ができない、という経験ができたことはとてもよかったと思っています。ただ、皆が皆、私のようになんでも自分でやらなきゃ気が済まないという人ばかりではありません。やはり、合う/合わない、向き/不向きはあると思います。

ダメなら元の場所へ戻ればいい

米良
いったん外に出て、自分で起業するなり、やってみてダメだったらまた元の企業に戻れる仕組みがあれば、もっと気軽に動けるし、市場の流動性も高まるはずです。誰だってやってみなければわかりませんからね。経験を通じて学ぶこともたくさんあるし、企業側にとっても、経験を積んで戻ってきた人を受け入れることは大きなメリットになると思います。

画像: ダメなら元の場所へ戻ればいい

八尋
日立コンサルティングにはそういう人がけっこういますね。日立製作所も、一度、退職した人の再入社を認める制度があります。

米良
それはいいことですね。良い人材ならその人が立ち上げたベンチャーに出資して、自由に活躍させてみて、大きく成長したら、買収することだってできる。企業を出て、ベンチャーを立ち上げた人が、元の企業とのつなぎ役として重要な役割を担うこともあるでしょう。さらに、ベンチャーで経営者としての経験を積んだ人を、次の経営者として改めて迎え入れることもできると思います。

いまや、ベンチャーを立ち上げること自体のリスクは、かなり低くなっています。自ら借金を背負ったり、生活水準を下げたりしなくても、うまくやる方法はいろいろあります。しかも、その経験は失敗も含めて、その後の仕事に必ず生かすことができるはずです。

現状では、一度、出てしまったら戻れない企業が多いから、皆、動きづらいのだと思います。大企業にはむしろ、自社から出て起業する人たちを応援してもらいたい。そのことが、自分たちにとっても、社会全体にとっても有用だということを理解してほしいと思います。

(取材・文=田井中麻都佳/写真=秋山由樹)

画像1: クラウドファンディングで未来をつくる
その4 若者の起業が、市場の流動性を高める

八尋俊英

株式会社 日立コンサルティング代表取締役 取締役社長。中学・高校時代に読み漁った本はレーニンの帝国主義論から相対性理論まで浅く広いが、とりわけカール・セーガン博士の『惑星へ』や『COSMOS』、アーサー・C・クラークのSF、ミヒャエル・エンデの『モモ』が、自らのメガヒストリー的な視野、ロンドン大学院での地政学的なアプローチの原点となった。20代に長銀で学んだプロジェクトファイナンスや大企業変革をベースに、その後、民間メーカーでのコンテンツサービス事業化や、官庁でのIT・ベンチャー政策立案も担当。産学連携にも関わりを得て、現在のビジネスエコシステム構想にたどり着く。2013年春、社会イノベーション担当役員として日立コンサルティングに入社、2014年社長就任、現在に至る。

画像2: クラウドファンディングで未来をつくる
その4 若者の起業が、市場の流動性を高める

米良はるか

READYFOR株式会社 創業者 兼 代表取締役CEO。1987年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。2011年に日本初・国内最大のクラウドファンディングサービス「Readyfor」の立ち上げを行い、2014年より株式会社化、代表取締役 CEOに就任。World Economic Forumグローバルシェイパーズ2011に選出、日本人史上最年少でダボス会議に参加。現在は首相官邸「人生100年時代構想会議」の議員や内閣官房「歴史的資源を活用した観光まちづくり推進室」専門家を務める。

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シリーズ紹介

楠木建の「EFOビジネスレビュー」

一橋ビジネススクールの楠木教授の思考の一端を、切れ味鋭い論理を、毎週月曜日に配信。

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山口周氏をナビゲーターに迎え、経営者・リーダーが、自身の価値基準を持つための「リベラルアーツ」について考える。

八尋俊英の「創造者たち」~次世代ビジネスへの視点~

八尋俊英日立コンサルティング社長を導き手とし、新世代のイノベーターをゲストに社会課題の解決策や新たな社会価値のつくり方を探る。

新たな企業経営のかたち

SDGs、人工知能(AI)、デザイン思考、ブロックチェーンなど、経営戦略に関わるホットイシューについて、斯界の第一人者に聞く。

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各界のビジネスリーダーに未来を創造する戦略を聞く。

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