一般社団法人企業間情報連携推進コンソーシアム(NEXCHAIN) 加藤晃三氏
EFOが2020年9月4日にイベント形式でオンライン配信した公開取材「ブロックチェーンを活用した企業間情報連携という新たな潮流」では、一般社団法人企業間情報連携推進コンソーシアム NEXCHAIN(ネクスチェーン)会員企業による座談会に続き、NEXCHAIN事務局の加藤晃三氏が登壇。NEXCHAINの具体的な活動内容や、社会実装をめざし検討が進んでいる3つのユースケースについて解説した。

「第1回:企業の連鎖で、未解決の社会課題に立ち向かう」はこちら>
「第2回:ブロックチェーンで解決する、引っ越し・相続・基地局の困りごと」はこちら>
「第3回:NEXCHAIN参画企業の『危機感』」はこちら>
「第4回:イノベーションの壁、オープンイノベーションの可能性。」はこちら>
「第5回:自社ならではのデータとアセットを、オープンに活かす」はこちら>
「第6回:座談会を終えて。NEXCHAIN参画企業の本音」はこちら>

自社だけでやろうとしたら大変だった、オープンイノベーション

NEXCHAINの運営を担当している加藤と言います。わたしからは、企業の情報連携によるビジネス創成をNEXCHAINがどうサポートしているか、また、情報連携をベースにどんなユースケースが議論されているか、お伝えしていきます。

その前に、NEXCHAIN設立のキッカケに触れさせてください。端的に言いますと、オープンイノベーションの推進を自社だけでやろうとしたら非常に苦労をしたからです。

画像: 自社だけでやろうとしたら大変だった、オープンイノベーション

この図は、わたしとチームメンバーが新規事業立ち上げ時に実際に行った作業を書き出したものです。最初に社会課題を洗い出し、それぞれの課題にリンクするビジネステーマを選ぶ、その中で自社が実現したいこと、できることを整理したあと、ビジネスアイデアを実現する上で自社に足りないデータアセットを整理し、どんな企業がそのデータアセットをお持ちなのかを調査する。さらに、その企業と協創させていただくために自社からご提供できるインセンティブを検討し、それをもって交渉に臨むという手順を踏むのですが、時間と手間がすごくかかるのは皆さんも想像できるかと思います。

ほかの業界のことを深く知らないので、どの企業がどんなデータをお持ちなのか想像しづらく、ステークホルダーが享受できる価値をどう定義するのかも非常に難しい。さらに、企業にコンタクトするにもそもそも自社との接点がないというケースが少なくありませんでした。

こうした経験から、あらゆる企業が対等な立場でビジネスアイデアを話し合える場の必要性を強く感じました。「オープンイノベーションの苦労を解消できる場にしたい」という思いから、NEXCHAINの活動を設計させていただいています。

仮説の立案→検証のサイクルを回し、ビジネス創成へ

画像: 仮説の立案→検証のサイクルを回し、ビジネス創成へ

NEXCHAINではまず、参画企業さまから「こんなビジネスがやりたい」というアイデア、つまり仮説をほかの参画企業さまにぶつけていただきます。そして各企業からのフィードバックを受け、仮説→検証のサイクルを回し続けてアイデアをブラッシュアップし、ビジネスとしてのフィージビリティ(実現の可能性)を高めていくという流れで検討を進めています。フィージビリティが確保できた段階で、「やりたい」と手を挙げる企業が集まっており、検証/商用化に向けてすぐに動き出せる。そんな状態をNEXCHAINの中にどんどんつくろうとしています。

「仮説・検証のサイクルなんて本当にうまく回るの?」といった疑問もあるかと思いますが、「引っ越し手続きのワンストップ」などのユースケースもこのサイクルから生まれ、実際に社会実装に向けた検証も行い、商用化をめざしています。本日は、NEXCHAINの中からアイデアが生まれ、検討が進められているユースケースのうち「外国人就業者向け手続きワンストップ」「ライフイベント手続き効率化」「相互利用型オフィスシェア」の3つをご紹介させていただきます。

外国人就業者を悩ませる、賃貸・口座・通信の契約手続き

最初にご紹介するのは、「外国人就業向け手続きのワンストップ」です。背景にあるのは、日本の生産年齢人口がずっと右肩下がりにある中で、外国人就業者の受け入れが拡大している状況です。2019年度時点での外国人就業者は166万人。前年比36%増、つまり20万人も増えています。それから、外国人就業者を雇用する事務所が前年比20%増と、受け入れがどんどん拡大しています(出典:総務省統計局ホームページ)。

NEXCHAINでは生活者目線での社会課題解消を1つの活動のコンセプトとしており、まずは外国人就業者の方々が何にお困りなのかを知ることからアプローチしています。ヒアリングを通してわかってきたのは、来日して生活を立ち上げる段階でかなり苦労されているケースが多いことです。と言うのは、不動産の契約、銀行口座の開設、通信の契約にとても時間がかかる上、それぞれの契約の窓口が分かれているからです。不動産契約の入居審査では電話番号と銀行口座が要求され、口座開設では住所が、通信契約では住所と銀行口座が必要になります。それぞれの情報に相互依存関係があるので、どれか1つでも契約できないと次のプロセスへ進まないという状況が生まれているのです。

画像1: 外国人就業者を悩ませる、賃貸・口座・通信の契約手続き

これを企業間の情報連携で解消しようというアイデアが、「外国人就業者向け手続きワンストップ」です。外国人向けの登録支援団体や、パブリックサービスを提供している企業に入り口になっていただいて、外国人就業者ご本人の許諾に基づき、本人情報を銀行・通信会社・不動産会社と連携していく。これによって、契約手続き時に窓口で同じことを何枚も書かなくてはいけないというご苦労を軽減するだけでなく、通信会社・不動産会社・銀行の間で新たに生まれる情報を相互補完・連携していただくことで、すべての契約がタイムリーに終わる。そんな状況を実現できたらと考えています。ばらばらに生まれる情報を企業間でつなげることで、手続きの効率化・短縮化を狙っています。

画像2: 外国人就業者を悩ませる、賃貸・口座・通信の契約手続き

参画企業さまとの議論を通じて、不動産のオーナーが外国人向けには賃貸を対象外にしているケースが多いとの新たな課題も見えてきました。オーナー側からすると、「家賃を滞納されるのではないか」「物損をされるのではないか」といった潜在的な不安から、契約をお断りすることが多いことがわかってきました。

この問題も、企業間連携で解消できると考えています。例えば、外国人就業者の本人情報を家賃保証会社と事前に連携し、家賃保証をつけた状態であれば、オーナーの潜在的な不安が解消され、安心してアパートを貸すことができるのではないでしょうか。さらに、不動産や家賃保証以外の業界とも連携することで、サービスの間口を広げていきたいと考えています。

煩雑かつ、スピードが求められる相続手続き

次にご紹介する検討テーマが「ライフイベント手続き効率化」です。日本社会において年間の死亡者数は増え続けています。2019年度の死亡者数は137万人と、2000年度から1.4倍増えています。同時に、65歳以上の一人暮らしの方も増え続けていまして、2020年度の累計推計値は702万世帯となっています(出典:厚生労働省ホームページ)。

その中でNEXCHAINでは、死亡時の手続きが非常に煩雑なこと、さらに、それぞれの手続きの窓口が分かれている上、所定の期間内に手続きを終えなくてはいけないことを社会課題として捉えています。

画像1: 煩雑かつ、スピードが求められる相続手続き

こうした手続きの中でNEXCHAINが着目しているのが図の青い部分、相続財産調査、預貯金相続、不動産相続、株式相続です。被相続人がどれだけ財産を持っていたかの調査は、今後非常に難しくなってくることが予想されます。一人暮らしの方が増えている今、財産相続人の方とのコンタクトがほとんどなく、被相続人が亡くなった場合の財産調査が難航してしまう。そんなシチュエーションが増えてくるからです。

以前は、同居していた遺族の方が家の中にある関係書類を調べたり、郵送物から口座や契約内容をチェックしたりといったことができましたが、一人暮らしの方が増えると当然難しくなりますし、あるいは仮想通貨をはじめとするデジタルアセットをお持ちだった場合、資産のありかがまったくわからない状況が起こりえます。また、故人に借金債務があった場合の相続放棄は、基本的に3カ月以内にやらなくてはいけません。つまり何も調査をせずに相続をしてしまった後で、実は莫大な借金があったというケースが起きえるということです。

画像2: 煩雑かつ、スピードが求められる相続手続き

こういった相続手続きにまつわる課題を、企業連携で図のように解決しようと考えています。被相続人の死亡情報と相続人の情報を、例えば銀行や保険会社などと連携することで、被相続人に関する契約情報や必要な手続きを通知いただくというものです。企業からしますと、タイムリーな契約者情報やライフエンディングにまつわる情報が得られますし、サービスのユーザーにとっては、相続手続きが非常に簡素化できるというメリットがあります。

New Normal時代の「場所のギャップ」「余剰スペース」問題

最後にご紹介するのが「相互利用型オフィスシェア」です。NEXCHAINは2020年4月というコロナ禍の真っただ中に設立されたこともあり、New Normalな世界にどう対応していくのかは重大なテーマの1つです。

コロナ禍で、従来からの働き方が大きく変化し、移動を極力控えるワークスタイルに移行する中で、オフィススペースの在り方が大きく変わってきています。特にシェアオフィスの需要が高まっていると同時に、シェアオフィスそのものは都心に集中している、しかし従業員の多くは郊外に住んでいるという「場所のギャップ」が生じています。我々はこれを社会課題と捉えています。

現在は、働く場所をマザーオフィス・サテライトオフィス・在宅に分類し、それぞれについてBeforeコロナ・Underコロナ・New Normal以降において求められる機能がどう変わるかを整理しながら、参画企業さま同士の議論を進めています。

画像1: New Normal時代の「場所のギャップ」「余剰スペース」問題

マザーオフィスを見てみると、従来は都市部に集中して従業員が「毎日通う場所」と定義されていたものが、Underコロナでは在宅勤務者が利用しない場所となり、New Normal以降ではおそらくマザーオフィスの機能自体が大きく見直され、一極集中型から分散型のオフィスに移行していくと考えられます。また、もともとは従業員のすき間時間に利用されていたサテライトオフィスは、New Normal以降では在宅勤務の代替場所としての活用が期待され、地方あるいは郊外の立地が増えてくることが予想されます。

以上の検討を踏まえて我々が今考えているのが、コロナ禍で自社の保有スペースの余剰が発生してしまった企業の「空きスペース情報」と、サテライトオフィスを設置したい企業の「ロケーションニーズ情報」の連携です。

画像2: New Normal時代の「場所のギャップ」「余剰スペース」問題

ただし、オフィスシェアに関しては、場所情報の連携だけでは成り立ちません。例えば、社外の方が自社の空きスペースを利用することになるわけですから、セキュリティの確保やリスク管理も重要です。そのための機能やアセットをお持ちの企業とも情報連携することで、よりスムーズにこのサービスが機能すると考えています。NEXCHAINでは現在、実際に空きスペースをお持ちの企業、サテライトオフィスを必要とされている企業、セキュリティやリスク管理のアセットをお持ちの企業とディスカッションを重ね、どのタイミングでどの情報が連携されれば最適なオフィスシェアが実現できるのか検討しています。

次回は、NEXCHAINの活動に関する聴講者からの質問に加藤氏が答える。

「第8回:社会課題解決に向けたユースケース(Q&A篇)」はこちら>

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