Q1:自分のセンスを知り、磨く方法は?
Q2:自分の好き嫌いの市場価値は?
Q3:スキルを越えた自分のポジションを見つけるヒントは?
Q4:仕事を選ぶ時の基準は?
Q5:センスを育てるために教育の現場でできることは?
Q6:望まない仕事でも関心を持って取り組む方法は?
Q7:センスを排除しようとする人たちとの戦い方は?

Q7:センスを排除しようとする人たちとの戦い方は?

センスで仕事をすることに対する恐怖心とか嫌悪感を持っている人たちというのは、世の中に一定量いると思います。つまり、センスに頼ったら再現性がないとか、他の人がやったらできないだろうみたいなところで、仕事からセンスを排除しようとする人たちと、どう戦えばいいのか。その戦い方について教えてください。

楠木
それは戦う必要なんてなくて、「いや、あなた成果が出てないじゃん」「あなたに注文、来ませんけど」、そういう結果のほうで勝負していくというのが私の考えなんですが。

山口
でも、上司だとそういうふうに言えないこともありますよね。

楠木
なるほど。ひとつの組織の中でだと、そうかもしれません。

山口
その上司とは、今後あと何年くらい仕事をすることになりそうなんですか。

楠木
定年が近いので、たぶん1年くらいだと思います。

山口
それならもう、つつがなく過ごすということでいいんじゃないでしょうか。

楠木
センスというテーマは、待つという行為と親和性が高いんです。自分のツボがわかるのを待ってみるとか、仕事の環境は自分の思いどおりにはなりませんけれども、それが整うのを1年待ってみるとか。

画像1: Q7:センスを排除しようとする人たちとの戦い方は?

山口
でも、センスが怖いという感覚は、ものすごくわかるんです。これはちょっと自慢めいた感じになるかもしれませんが、私も本気で悩んだ時期があったんです。コンサルティング会社に入って、先ほど言ったとおり「これ自分に割と向いているな」と思って、それでマネージャーになると今度はパートナーと一緒に提案活動をやるわけです。提案書を書く、そしてその提案書でコンペ(コンペティション:競合)が取れるんです。最後の時期はそうでもなかったのですが、たぶん7〜8年の間にコンペで1回も負けたことなかったんです。ファームの中でも伝説的というか、「もう、これ勝負コンペだから山口で」というふうになってきたときに、私は非常に恐怖していたんです。

感覚的に言うと、なんか投げたなっていうので目をつむってバットを振って、目を開けるとホームランになっている、そういう感じだったんです。で、また投げた、目をつむってバットを振るとホームラン。それが何年か続いた時期があって、次は打てないかもしれないという感じが、だんだんと恐怖になってくるんです。

楠木
なるほど。

山口
これ、たまたま当たっている感じなんです。センスとはそういうものだと思うのですが、全然自分で説明できないんです。「なぜ勝てたの」とか、「この提案書は導入から普通の作り方と全然違うけれど、どうやって思い付くのですか」と聞かれても、言語化できないんです。それを、何とか言語化しようとした時期もありました。クライアントのこういう悩みだとかこういうパターンのときに、こういうデータで攻めるとかいろいろなことをやろうとしたのですが、結局それはわからないまま、そのうちだんだん勝てなくなってきて、辞めざるを得なくなったという。

楠木
いや、よくわかります。私は、そういうときのひとつのお勧めとして、“悲観的楽観”ということを言っています。まずですね、最初の設定はものすごく悲観的なほうがいい。絶対にうまくいかない、もういいことなんか一個もないと基本的に思っておく。たまに何かうまく行って、「君、それ上手だね」と言われても、それはお世辞だと考えて悲観しておく。そうやって悲観に悲観を重ねていても、その悲観を突き破って入ってくる楽観というものが現れるときがあるんです。もうこれだけ駄目だと思ってやっていても、なぜかうまく行くことが続くと、これが実は相当得意なんじゃないかなっていう楽観になる。これを私は「悲観を突き破って入ってくる楽観」と言っています。

画像2: Q7:センスを排除しようとする人たちとの戦い方は?

Q1:自分のセンスを知り、磨く方法は?
Q2:自分の好き嫌いの市場価値は?
Q3:スキルを越えた自分のポジションを見つけるヒントは?
Q4:仕事を選ぶ時の基準は?
Q5:センスを育てるために教育の現場でできることは?
Q6:望まない仕事でも関心を持って取り組む方法は?
Q7:センスを排除しようとする人たちとの戦い方は?

画像1: 楠木建×山口周『仕事ができるとはどういうことか』-「Q&Aライブ」Question 7

山口 周(やまぐち しゅう)

独立研究者・著作家・パブリックスピーカー。1970年東京都生まれ。電通、BCGなどで戦略策定、文化政策立案、組織開発等に従事した後、独立。著書に『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 』、『武器になる哲学』など。最新著は『ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式』(ダイヤモンド社)。慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院美学美術史学専攻修了。神奈川県葉山町に在住。

画像2: 楠木建×山口周『仕事ができるとはどういうことか』-「Q&Aライブ」Question 7

楠木 建

一橋ビジネススクール教授
1964年東京生まれ。幼少期を南アフリカで過ごす。一橋大学大学院商学研究科博士課程修了(1992)。一橋大学商学部専任講師、一橋大学商学部助教授、一橋大学イノベーション研究センター助教授、ボッコーニ大学経営大学院(イタリア・ミラノ)客員教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授、2010年より現職。
著書に『室内生活 スローで過剰な読書論』(2019、晶文社)、『すべては「好き嫌い」から始まる』(2019、文藝春秋)、『「好き嫌い」と才能』(2016、東洋経済新報社)、『好きなようにしてください:たった一つの「仕事」の原則』(2016、ダイヤモンド社)、『「好き嫌い」と経営』(2014、東洋経済新報社)、『戦略読書日記』(2013、プレジデント社)、『経営センスの論理』(2013、新潮新書)、『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』(2010、東洋経済新報社)などがある。

シリーズ紹介

[特集]ポストコロナの社会とビジネス

破壊の先にある創造へ――。「グレート・リセット」後に求められる社会とビジネスのあり方を、各界の有識者の言葉から探ります。
※グレート・リセット:2021年夏に開催される予定の次回世界経済フォーラム年次総会、通称ダボス会議におけるテーマ

楠木建の「EFOビジネスレビュー」

一橋ビジネススクールの楠木教授の思考の一端を、切れ味鋭い論理を、毎週月曜日に配信。

山口周の「経営の足元を築くリベラルアーツ」

山口周氏をナビゲーターに迎え、経営者・リーダーが、自身の価値基準を持つための「リベラルアーツ」について考える。

八尋俊英の「創造者たち」~次世代ビジネスへの視点~

八尋俊英日立コンサルティング社長を導き手とし、新世代のイノベーターをゲストに社会課題の解決策や新たな社会価値のつくり方を探る。

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SDGs、人工知能(AI)、デザイン思考、ブロックチェーンなど、経営戦略に関わるホットイシューについて、斯界の第一人者に聞く。

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