READYFOR株式会社 CEO 米良はるか氏 / 株式会社 日立コンサルティング 代表取締役 取締役社長 八尋俊英
2011年3月に、大学院在学中に、23歳で日本初となるクラウドファンディングサービス「Readyfor」を創設した米良(めら)はるか氏。インターネットを活用して不特定多数の人や企業から小口資金を集めるクラウドファンディングを日本に根づかせたイノベーターだ。従来の枠組みにとらわれることなく、多様なプレイヤーとともに未来をつくるために活動する米良氏に、八尋俊英が起業のきっかけを聞いた。

若きイノベーターとの対話から、エコシステムのつくり方を学ぶ

八尋
米良さんに初めてお会いしたのは、昨年、AI研究者の松尾豊先生にご紹介いただいたのがきっかけです。日本初のクラウドファンディング「Readyfor」を創設されて、会社を急成長させるだけでなく、世の中の変化を先取りするように、震災支援やSDGsなど、さまざまな社会課題に積極的に取り組んでこられました。その熱意と行動力に、鮮烈な印象を受けました。

画像: 若きイノベーターとの対話から、エコシステムのつくり方を学ぶ

米良さんのように、今の若い起業家の方たちは、人との縁をうまく活用しながら、新しいビジネスを生み出し、世の中を大きく変えつつあります。それは、単なる「人脈」を超えて、新たなビジネスエコシステムを創生し、エコシステム全体で大きなうねりをつくりながら社会を動かしているように見えます。

一方、私が社会人になったのは平成元年(1989年)ですが、我々の世代の中には、ビジネス環境の急激な変化に戸惑っている人が多くいます。今回から始まるこの新連載シリーズでは、米良さんのような新時代のイノベーターや創造者との対話を通じて、ビジネスや社会の変化にいかに立ち向かっていったらいいのか、ヒントを探っていきたいと思っています。

松尾豊氏との出会いがきっかけで、未来をつくる人へ

八尋
最初に、米良さんがなぜ、現在のような取り組みを始められたのか、きっかけをお聞かせください。

米良
ターニングポイントになったのは、先ほどお名前が挙がった松尾先生との出会いです。私が慶應義塾大学経済学部に通っていた3年次のインターゼミでのことでした。ちょうど松尾先生がスタンフォード大学から戻られて、東京大学の准教授になられたタイミングで、うちのゼミの藤田康範教授と共同研究を始められたのがきっかけです。

実は私は小学校から高校まで私立一貫校に通っていて、外の世界をあまり知らなかったんですね。学校は楽しいけれど、もっといろんな人と出会いたいと、内部進学はせず、中学のときの家庭教師で、憧れていた先生が通っていた慶應義塾大学に進学しました。

大学では新しい友人もできたし、大学祭の実行委員を務めるなど、忙しく過ごしていましたが、一方で、就職を考える時期になっても、自分は本当は何がしたいのかわからないまま、モヤモヤした気持ちを抱えていました。というのも、私の祖父は発明家、父はコピーライターで、いわゆるクリエイターの家庭に育ったものの、二人とも最初は大企業に勤めていましたし、母の願いもあって、私も大企業に就職するものだろうと漠然と考えていたからです。

画像: 松尾豊氏との出会いがきっかけで、未来をつくる人へ

そんな折、松尾先生にお会いして、研究者として未来に対して、自分が何ができるのかをピュアに考えている姿に感銘を受けたのです。しかも、シリコンバレーにいた経験を踏まえて、世の中に大きなインパクトをもたらすイノベーションを、いかにITで加速させ、社会に還元していくのかに真剣に取り組んでいらした。先生とお話をする中で、私自身も未来をつくる人たちと一緒に社会を変えていきたいと強く願うようになったのです。

初めてのWebサービスで経験したインターネットのスピード感

八尋
進路を迷っているときに、素晴らしい師との出会いが進むべき道へ導いてくれたわけですね。

米良
そうですね。インターゼミのテーマは、松尾先生が開発された「あのひと検索SPYSEE」という人物検索Webサイトを使ったサービスの考案でした。このサイトはその人の経歴だけでなく、人物相関図のつながりの強さを示すという、従来にはないサイトでした。そこでインターネットの世界の面白さとともに、試行錯誤しながらユーザーとともによりよいサービスへ仕上げていくスピード感を経験しました。このスピードに自分も乗ってみたいと思ったのです。

それからは、毎日のように東大の松尾研究室に通いました。研究室の人たちも、私がやたらと「面白い! すごい!」と感動するので、宇宙人がきたといった感じで興味をもってくれて、一緒にいろんなサービスをつくりました。

このときに手掛けたのが、「cheering SPYSEE(あの人応援チアスパ!)」という、アスリートや伝統芸能に取り組む人たちに、個人が小口で資金支援ができる、いわば投げ銭的なWebサービスです。この中で、パラリンピック日本代表スキーチームの備品代100万円を集めたのですが、この経験が後の起業のヒントになりました。

その後、大学院修士課程(メディアデザイン研究科)のとき、プログラミングを学ぼうとスタンフォード大学へ約半年間留学した際、当時、アメリカですでにサービスが始まっていたクラウドファンディングビジネスの状況を知ったことも、起業にたいへん役立ちました。

ちなみに、当時ともにサービスを考えた松尾研究室のメンバーとは、いまだにつながりがありますが、多くの人が起業したり、ベンチャーのCTOになったりして活躍しています。松尾先生が、「インターネットテクノロジーの世界を担うのは若い君たちだから、どんどん起業しなさい」と言って、皆の背中を押していたからだと思います。

画像: 初めてのWebサービスで経験したインターネットのスピード感

夢を語れる人を応援し、ともに活動したい

八尋
未来をつくるには、ファイナンスの力は重要ですが、原動力となるのはやはり人の「思い」なのでしょうね。ピンで活躍できるような個の力とつながることが重要ですね。

米良
日本社会では、新しいことへ挑戦することや、夢物語を語ることを恥ずかしいことだと捉えるところがありますよね。でも私はそういう人たちを応援したいし、一緒に活動したい。クラウドファンディングを立ち上げた根っこもそこにあります。

いまは、フリーランスで活動する人も増えていますし、組織をまたがる活動も広がっています。イノベーションというのはまさにそうしたさまざまな人たちの強い「思い」やテクノロジーがクロスするところで起こるものだと思っています。

(取材・文=田井中麻都佳/写真=秋山由樹)

画像1: クラウドファンディングで未来をつくる
その1 起業のきっかけは師との出会い

八尋俊英

株式会社 日立コンサルティング代表取締役 取締役社長。中学・高校時代に読み漁った本はレーニンの帝国主義論から相対性理論まで浅く広いが、とりわけカール・セーガン博士の『惑星へ』や『COSMOS』、アーサー・C・クラークのSF、ミヒャエル・エンデの『モモ』が、自らのメガヒストリー的な視野、ロンドン大学院での地政学的なアプローチの原点となった。20代に長銀で学んだプロジェクトファイナンスや大企業変革をベースに、その後、民間メーカーでのコンテンツサービス事業化や、官庁でのIT・ベンチャー政策立案も担当。産学連携にも関わりを得て、現在のビジネスエコシステム構想にたどり着く。2013年春、社会イノベーション担当役員として日立コンサルティングに入社、2014年社長就任、現在に至る。

画像2: クラウドファンディングで未来をつくる
その1 起業のきっかけは師との出会い

米良はるか

READYFOR株式会社 創業者 兼 代表取締役CEO。1987年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。2011年に日本初・国内最大のクラウドファンディングサービス「Readyfor」の立ち上げを行い、2014年より株式会社化、代表取締役 CEOに就任。World Economic Forumグローバルシェイパーズ2011に選出、日本人史上最年少でダボス会議に参加。現在は首相官邸「人生100年時代構想会議」の議員や内閣官房「歴史的資源を活用した観光まちづくり推進室」専門家を務める。

「第2回:変えたいという『思い』とパートナーシップが大切」はこちら>

シリーズ紹介

楠木建の「EFOビジネスレビュー」

一橋ビジネススクールの楠木教授の思考の一端を、切れ味鋭い論理を、毎週月曜日に配信。

山口周の「経営の足元を築くリベラルアーツ」

山口周氏をナビゲーターに迎え、経営者・リーダーが、自身の価値基準を持つための「リベラルアーツ」について考える。

八尋俊英の「創造者たち」~次世代ビジネスへの視点~

八尋俊英日立コンサルティング社長を導き手とし、新世代のイノベーターをゲストに社会課題の解決策や新たな社会価値のつくり方を探る。

新たな企業経営のかたち

SDGs、人工知能(AI)、デザイン思考、ブロックチェーンなど、経営戦略に関わるホットイシューについて、斯界の第一人者に聞く。

Key Leader's Voice

各界のビジネスリーダーに未来を創造する戦略を聞く。

経営戦略としての「働き方改革」

今後企業が持続的に成長していくために経営戦略として取り組むべき「働き方改革」。その本質に迫る。

ニューリーダーが開拓する新しい未来

新たな価値創造に挑む気鋭のニューリーダーに、その原動力と開拓する新しい未来を聞く。

日本発の経営戦略「J-CSV」の可能性

日本的経営の良さを活かしながら利益を生み出す「J-CSV」。その先進的な取り組みに迫る。

ベンチマーク・ニッポン

日本を元気にするイノベーターの、ビジョンと取り組みに迫る。

デジタル時代のマーケティング戦略

マーケティングにおける「デジタルシフト」を、いかに進めるべきか、第一人者の声や企業事例を紹介する。

私の仕事術

私たちの仕事や働き方の発想を変える、膨らませるヒントに満ちた偉才たちの仕事術を学ぶ。

EFO Salon

さまざまな分野で活躍する方からビジネスや生活における新しい気づきや価値を見出すための話を聞く。

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