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右:一般社団法人日本トップリーグ連携機構会長 川淵三郎氏/左:日立製作所執行役常務 産業・流通ビジネスユニットCEO 阿部淳
チームがうまく機能していくには、先輩が若い人に言うべきことをしっかりと伝え、コミュニケーションすることも重要だと語る阿部。川淵氏は、昨年のワールドカップ・ロシア大会のベルギー戦でのスーパープレイや、元日本代表の中田英寿選手の行動を例に出し、阿部に同意。若手選手の成長にも期待しているという。

「第1回:サッカーのプロ化に取り組んだ原点は『挫折経験』」はこちら>
「第2回:目標設定の仕方で、勝負は決まる」はこちら>
「第3回:同じ方向をめざしていくためのリーダーシップと信頼感」はこちら>

チーム内コミュニケ―ションが生んだスーパープレイ

阿部 
チームがうまく機能していくには、一人ひとりの経験とともに、チームのメンバー同士が、日常の仕事の中でルールやマナーを教えていくことも大切ですね。リーダーシップというと、部長など役職についている人の指導力のことを考えがちですが、チームの中の先輩が若い人に遠慮したり、迎合したりしないで、言うべきことをしっかりと伝えることも重要だと思いますが、いかがでしょうか。

川淵 
そうですね、若い人に迎合したり、遠慮して言わないというのは、チームづくりで一番まずいことです。相手にもっとこうしてほしいということがあっても、言わないでいれば、相手はいつまでたっても同じようなミスを繰り返します。ですからチームの中のコミュニケーションというのはとても重要です。こういう時にはこう動いて欲しいといった要求をお互いに出していくと、時には口論になることもあるかも知れません。それでも、お互いの言い分を口に出すことで、相手がどう考えて動いていたのかも分かりますし、それが次のステップにつながっていきます。そういうコミュニケーションが取れていれば、試合中に思わぬ好プレイも生まれます。たとえば、昨年のワールドカップ・ロシア大会のベルギー戦で、柴崎選手が原口選手の走っていった先にボールを出し、原口選手はそこにボールが来ると信じて走っていくという、2人が同時に動くことで、得点につながるプレイを見せました。あれは予めコミュニケーションが取れていたからこそできたスーパープレイです。

画像: チーム内コミュニケ―ションが生んだスーパープレイ

阿部 
なるほど、メンバー同士のコミュニケーションは、そういう成果を生み出すわけですね。率直に話し合える環境は、会社の仕事でも大切です。そういう環境がないと、悪い話もなかなか出てこなくなって、問題の解決が遅れてしまいます。もちろん悪いことは起きないに限りますが、それでも問題が起こった時は、その問題を早く把握して対応しないと、お客さまへのご迷惑が大きくなってしまいます。良いことも悪いことも率直に話し合える環境は大切だと思います。

川淵 
ぼくは、報告がある時は悪い話を先にしてくれと言っているんです。その方が話し易いでしょう。悪い話が後に控えていると思うと、良い話もしづらい。

チームのメンバーがフランクに話し合うということで思い出すのは中田英寿です。先輩後輩という垣根を最初に取っ払ったのは中田でした。彼は日本代表チームに入った時、大先輩だった井原も名波も全部呼び捨てにしました。中田は、グラウンドの中では対等なのだから「さん」付けする必要はない、上も下もなく要求すべきことは要求するという考え方をチームに定着させました。それは、井原など当時のベテラン選手たちが中田を認め、中田がやりたいことをやった方が、日本代表チームのためになるのだから、やりたいようにやらせてやろうと許容したからなんです。これが大きかったですね。一つの目標達成のために何が大事かを考え、中田の主張を受け入れたほうがチーム全体がうまく機能すると、みんなが合意していたわけです。いったんグラウンドに出たら対等だというのは、いまの日本代表にも引き継がれていますね。

若手選手の活躍から期待する、日本サッカーの未来

阿部 
いまJリーグがこのように盛んになっていて、ワールドカップにも出場するようになりましたが、川淵さんはいまのサッカーの状況をどうご覧になっていますか。

画像: 若手選手の活躍から期待する、日本サッカーの未来

川淵  
ぼくとしては順調に伸びてきていると思っています。最初のワールドカップは、岡田監督がチームを率いて3連敗しましたが、試合の中身はすごく良かったと思います。同じく岡田監督が率いた2010年の南アフリカ大会ではベスト16でしたが、この時はどちらかというと守備に重きを置いて戦いました。今回のロシア大会は、敗れはしましたがあのベルギーを相手に対等に攻め、いい試合をしました。ぼくは、3年後うまくいけばベスト4くらいに入れるのではないかと思っています。それだけ若手の成長が著しいのです。これまでの日本代表はストッパーとゴールキーパーが心配だと言われてきましたが、ストッパーでは20歳の冨安選手などが出てきました。ぼくが全然知らないところで、若い選手が海外に出たりして自分を高める努力をしています。ヨーロッパに行って活躍するゴールキーパーが出てくる可能性もあります。ですから、このポジションは日本人に向かないという議論をしなくても済む時代になっていくのではないでしょうか。それくらい、若手の成長は早いです。

画像1: 挫折も衝撃も、成長発展の「きっかけ」に変えられる
【第4回】一人ひとりの経験と、チームメンバーのコミュニケーションが成果を生む

川淵 三郎(かわぶち・さぶろう)
1936年、大阪府出身。早稲田大学サッカー部在学中にサッカー日本代表に選出。1961年古河電気工業に入社。1970年、現役引退。日本代表監督などを経て、1991年Jリーグ初代チェアマンに就任。2002年日本サッカー協会会長。2014年から日本バスケットボール界の改革に関わる。2015年、日本トップリーグ連携機構会長。2016年、日本バスケットボール協会エグゼクティブアドバイザーに就任。2018年より日本サッカー協会相談役。『虹を掴む』、『「J」の履歴書』、『51歳の左遷からすべては始まった』、『采配力』、『独裁力』、『黙ってられるか』など著書多数。

画像2: 挫折も衝撃も、成長発展の「きっかけ」に変えられる
【第4回】一人ひとりの経験と、チームメンバーのコミュニケーションが成果を生む

阿部 淳(あべ・じゅん)
1984年 株式会社日立製作所入社、2001年 ソフトウェア事業部DB設計部長、2007年 日立データシステムズ社 シニアバイスプレジデント、2011年 ソフトウエア事業部長、2013年 社会イノベーション・プロジェクト本部・ソリューション推進本部長、2016年 理事 サービス&プラットフォームビジネスユニット 制御プラットフォーム統括本部長(大みか事業所長) 兼 ICT事業統括本部 サービスプラットフォーム事業本部長、2018年 執行役常務 産業・流通ビジネスユニットCEO

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