釜石ブランド マイナスからの挑戦
【第1回】水産業の復興を、待つ人がいる。
岩手県釜石市、唐丹(とうに)町。市の中心部から南へ10㎞のところにある、静かな漁師町だ。小さく入り組んだ湾内の港には、いくつもの小ぶりな漁船が並ぶ。ここでは、ワカメをはじめメカブやホタテ、ホヤが養殖され、サケやウニ、アワビなどが水揚げされる。限られた平地と高台には約1,800人が暮らし、そのうち400人ほどが漁業に携わってきた。しかし近年は、全国の漁村の例に漏れず、高齢化と人口流出が進んでいた。 2011年3月11日、この小さな町を東日本大震災が襲った。津波は堤防を越えて港と集落を破壊し、漁船のほとんどをさらった。その惨状を前にして、地域から消えかけた水産業の灯を再びともし、住民に自信と...