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女性特有の健康課題を起点に始動したこのプロジェクトは、当初描いたフェムテックの枠を越えて、あらゆる人が働きやすい社会をめざして取り組むことになった。かつ、ビジネスとして成立し継続させるためには、収益性も求められる。これから歩む道のりは決して容易くないが、メンバーは全員つねに前向きだ。本シリーズ最終回では、蒲生高也、北森美菜、松野真由子、西村宏美、宮森百穂、西郷健一の6名のメンバーに、今抱えるそれぞれの想いも語ってもらう。

「第1回:女性の健康課題を解く、新規ビジネス」はこちら>
「第2回:有志チームで挑むゼロからの挑戦」はこちら>
「第3回:キャリアとライフの両立を支援するソリューション」はこちら>
「第4回:すべての従業員の働きやすさを支えるサービスへ」はこちら>
「第5回:社会課題に挑む「志」で結ばれたチームの強さ」

新規ビジネスに立ちはだかる壁とは

このプロジェクトは、まだ現在進行形の真っ只中にある。当初の計画に対しての進捗状況を尋ねると、次のような答えが返ってきた。

「日立グループとしてのビジネス化をめざして事業計画書を作成していますが、アプリケーション開発の中身や技術的な面も含めて、思っていたより難しいなと感じています。『Make a Difference』の時点では2022年11月に商用化完了予定でしたが、そう簡単には行きません」(蒲生)

さらに西村は「性別、年齢、国籍も関係なくあらゆる人々を対象にサービスを提供していくとなると、最初の『女性の健康課題を解決したい』という思いだけで突き進むことはできません」と続ける。事業として成立させるには、ユーザーへの提供価値だけではなく、収益性、企業としての社会的意義や責任など、さまざまなものが当然求められる。

「世の中に新しいサービスを出すのであれば、何より継続させなくてはなりません。きちんと収益を上げて、それをもとにまた次の機能をつくっていくというサイクルを回し続けていく。『Make a Difference』を通じて、このビジネス性や収益化が非常に大きな壁だと思い知りました。

ビジネスとしての価値を伝えるのは、提供先の企業はもちろん、まずは日立に対しても必要です。やはり先行投資がなければ立ち行かないため、投資に対してどれだけ回収できるのか、根拠を持って証明することが本当に難しく、日々試行錯誤を繰り返しています」(北森)

画像: 左から日立の西村宏美、北森美菜

左から日立の西村宏美、北森美菜

前向きなチームが新しい可能性を切り拓く

メンバーはそれぞれ自分の仕事を持っているため、活動できるのは就業時間の前後となり、どうしてもプロジェクトに割く時間が限られてしまう。宮森はその難しさを「あくまで有志の活動なので、本業とのバランスも皆感じているところだと思います」と語る。

それでも、毎朝のリモート会議を欠かさず、本業よりも密にコミュニケーションを取っているという。そうすることで、和気あいあいとしたチームワークの良さや団結力が生まれ、お互いの存在が支えになっている。2022年12月からは、産休・育休を取得していた西村も徐々に復帰し、フルメンバーの足並みが揃ってきたところだ。

いくら困難な局面を迎えても、未来の自分とチームを信じているメンバーたち。北森は「このチームは怖いくらいポジティブで、全然弱音を吐かないのです」と言う。意見が割れることは当然あるが、衝突したり気まずくなったりする雰囲気は一切ない。業務の分担も明確には決めておらず、お互いのタイミングや忙しさ、希望によって柔軟に進めているという。

こうしたチームのあり方が、社会課題の解決を実現するための、しなやかで強い力になるのかもしれない。

画像: 前向きなチームが新しい可能性を切り拓く

「働きたい人が働き続けられる社会」を実現したい

最後にこのプロジェクトに対する思いや、伝えたいことについて一人ずつ話を聞いた。

「働きやすさというテーマは、何も今急に出てきた話ではなく、前々からずっと放置されてきた問題だと思っています。今はダイバーシティ&インクルージョンが掲げられ、デジタルでコミュニケーションを取れる環境も整ってきていますので、企業と従業員の対話をもっと促進していきたい。日立社内から社会にも広げて実現できたらと考えています」(蒲生)

「私自身は、このプロジェクトを通じて新しいマインドが生まれました。このチーム内では、あえて場を乱すような、議論が深まるきっかけを提供する役割でありたいとも考えています。また、新しいビジネスをつくる際には、会社の方針や流れにうまく乗ることも大事だと感じました。例えば私たちの事業部では『社会にデジタルでどうイノベーションを起こしていくか』に今フォーカスしていて、そういった流れをとらえることでプロジェクトの推進力も得られるはずです」(西郷)

画像: 左から日立の西郷健一、蒲生高也

左から日立の西郷健一、蒲生高也

「やはり、働きたい人が働き続けられる社会に変えていかなくてはいけません。健康や家庭の課題によって、働くことを中断してしまう人を一人でも減らしたいのです。でも一足飛びでは到達できないので、まずはすでに企業で働いている人に向けて、高いエンゲージメントで楽しく働ける仕掛けづくりや、コミュニケーションが取れる環境を提供していきます。そして、社内で新事業を起こすのが難しい中、メンバーは本業とは別のところで集まって日々頑張っています。本当に素晴らしいチームなので、もっと応援してほしいし、できれば投資していただけるとさらに嬉しく思います(笑)」(北森)

「現在の働く環境にはこういった課題感があるということを、まずは少しでも理解していただければと思います。また、若い世代の人たちには、新しいビジネスの立ち上げにぜひ挑戦してほしいです。長い間同じ仕事に携わっていると、自分が思ったよりも狭い社会で働いていることに気付けません。本業とは違う経験をし、新しい人たちに出会うことで意識改革ができるので、臆せず飛び込んでみてください」(西村)

画像: 左から日立の松野真由子、宮森百穂、西村宏美

左から日立の松野真由子、宮森百穂、西村宏美

「実は当初、私はライフとキャリアの両立における社会課題についてなかなか自分ごとと思えず、葛藤もありました。でも、色々な人とコミュニケーションを交わす中で新しい意見を吸収でき、『解決すべき社会課題である』という意識が強まりました。また、新しいビジネスを立ち上げる際には孤独を感じることもありますが、課題に共感してくださる仲間を増やしたり、知って理解していただいたりすることが重要なのかなと。大きな会社の中で新規ビジネスを立ち上げる難しさはありますが、それでも、情熱と責任感、お互いに助け合うチームワークがあれば必ずできると信じています」(宮森)

「この活動を通じて、働いていく上では、性別や年齢にかかわらず、病気や家庭との両立で皆さん悩みを抱えていると知りました。でも、職場でそういった悩みをシェアすることはなかなか難しいんだなと。だからこそ、世の中がもう少し話し合える雰囲気になればいいなと思いますし、そのために私たちの『共助』のサービスが機能してほしいと願っています。私自身も本業とこの活動の掛け持ちは大変でしたが、このプロジェクトがなければ悩み続けていたでしょうし、このプロジェクトがモチベーションや本業を頑張る糧にもなっていました。志の高い仲間とともに、事業化に向けて頑張っていきたいです」(松野)

本プロジェクトは当初のフェムテックの域を越えて、働きたい人が働き続けられる社会をつくるためのサービスとして、今もなお進化を続けている。現時点では、2023年度内の商用サービス実現をめざしているという。有志メンバーの思いから生まれた新しいビジネスの芽が、社会課題の解決に向けた有望な事業に成長することが期待される。

取材・文=田原 未沙記/写真=斎藤 弥里

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画像1: フェムテック発、だれもが働きやすい社会づくりへ
【第5回】社会課題に挑む「志」で結ばれたチームの強さ

蒲生高也(がもう たかや)
株式会社日立製作所 デジタルシステム&サービス営業統括本部 デジタルマーケティング統括本部 DX Proposal Planning 兼 デジタルエンジニアリングビジネスユニット Business Development DX Proposal Planning 部長

2004年、日立製作所に入社。通信事業者向けの営業活動及び新規事業創生に従事したのち、2022年4月にデジタルマーケティング統括本部に異動。GlobalLogic Japanの日本市場におけるGTM(Go To Market)戦略の策定と実行を担当している。

画像2: フェムテック発、だれもが働きやすい社会づくりへ
【第5回】社会課題に挑む「志」で結ばれたチームの強さ

西村宏美(にしむら ひろみ)
株式会社日立製作所 社会プラットフォーム営業統括本部 第一営業本部 第二営業部 主任

2012年、日立製作所に入社 。通信事業者向けの営業活動及び新規事業創生に従事。2017年頃に婦人科系疾患を発症し数カ月の休職を経験したのち、同部署にて復職。2021年4月~2022年12月まで産休・育休を取得。

画像3: フェムテック発、だれもが働きやすい社会づくりへ
【第5回】社会課題に挑む「志」で結ばれたチームの強さ

松野真由子(まつの まゆこ)
株式会社日立製作所 金融システム営業統括本部 金融営業第一本部 第一部

2016年、日立製作所に入社。金融機関向けのITシステムの営業活動及び新規事業創出に従事。

画像4: フェムテック発、だれもが働きやすい社会づくりへ
【第5回】社会課題に挑む「志」で結ばれたチームの強さ

宮森百穂(みやもり もえ)
株式会社日立製作所 人財統括本部 HRストラテジー・コミュニケーション部

2019年、日立製作所に入社。通信事業者向けの営業活動及び新規事業創生に従事。2023年1月、社内公募に応じ人財統括本部に異動。日立グループの戦略実現のためにグローバル人財戦略の施策に関わる業務に従事。

画像5: フェムテック発、だれもが働きやすい社会づくりへ
【第5回】社会課題に挑む「志」で結ばれたチームの強さ

西郷健一(さいごう けんいち)
株式会社日立製作所 社会プラットフォーム営業統括本部 第二営業本部 第一営業部

2020年、日立製作所に入社。通信事業者向けの営業活動及び新規事業創出に従事。情報通信事業における基幹システムをはじめ、カーボンニュートラルやセキュリティの領域を担当している。

画像6: フェムテック発、だれもが働きやすい社会づくりへ
【第5回】社会課題に挑む「志」で結ばれたチームの強さ

北森美菜(きたもり みな)
株式会社日立製作所 社会プラットフォーム営業統括本部 企画本部 営業推進部 第一グループ 主任

2009年、日立製作所に入社。通信事業者向けの営業活動及び新事業創出に従事。2013年~15年に産休・育休を取得。

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一橋ビジネススクール一橋ビジネススクールPDS寄付講座特任教授の楠木建氏の思考の一端を、切れ味鋭い論理を、毎週月曜日に配信。

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