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Z世代のリーダー2人と、企業における人財育成、事業開発のエキスパート三人によるシンポジウムは、組織において、志を持った人財をどのようの発掘し、事業化へと導けば良いのか、それぞれの経験を元にした奥深い意見が飛び交った。

「第1回:サステナブルを自分ごとに」はこちら>
「第2回:気候危機下で私たちができること」はこちら>
「第3回:イノベーションの敷居を下げるには?」はこちら>
「第4回:起業の原点となった志とは?」はこちら>
「第5回:サステナブル時代の人財開発戦略とは?」はこちら>
「第6回:サステナブル時代の人財育成のあり方とは?」はこちら>
「第7回:組織におけるイノベーションの仕組み」
「第8回:社会課題を自分ごと化して創る未来」はこちら>

「うちの会社では無理」と諦めさせない仕組み

佐藤
次は組織のイノベーションの仕組みという観点でお話できればと思います。東浦さんから新しい事業をつくる試み、仕組みづくり、会社の風土を変えるご経験を語っていただきます。

東浦
2年前からフューチャーデザインラボという、社長直轄のイノベーション組織の責任者をやっています。ラボの中に、東急アライアンスプラットフォームというスタートアップやグループの協業を促進するプログラムがあります。これは私のユニークで優秀な部下が、「こういうことをやってみたい、これが東急に必要なんじゃないか」と、提案してきてくれたものです。「でもうちの会社じゃ無理ですよねって」諦め半分で相談にきたので「そんなことなはない、一般管理部門だとスケールしないで潰されちゃうかも、だから俺のところでやろう」と、彼の志の高さに惚れ込んで私がOKを出して、2015年にスタートしました。それから、年々認知度が上がって会社の仕組みになってきています。

我々も9月2日に100周年を迎えましたが、今までの鉄道やビルなど、密であるほど儲かるというビジネスがコロナで大打撃を受けたので、社長以下101年目にどうするか、パーパス経営のところまで上り詰めて、侃々諤々(かんかんがくがく)の議論をして方向性を決めて、新しいプロジェクトとして風土改革や社風改革をやっている最中です。

日立社内で行われている人財掘り起こし策

佐藤
日立という会社は事業の幅が広すぎてイメージがわかない人も多いと思いますので、何を実現しようとしているか、どんな取り組みをしているかを森さんから紹介していただけますか。


日立は「Hitachi Social Innovation is POWERING GOOD 」というスローガンを掲げています。要するに世の中に対していい価値につながる活動をそれぞれの事業の観点でやるということです。例えば、再生エネルギーを使ってグリーンなねぶたを出したりですね。事業ではありませんが、それもひとつの社会課題解決、貢献のひとつだと。

また「I am Hitachi」という、社内で「いいこと」をやっている人たちをムービーにして皆さんに知ってもらう活動をしています。自分の置かれた環境、事業の中で一人称でやっていることです。いわゆる教育として、体系的にきちんと長い時間をかけて自分の体に染み込ませていきながら、社会イノベーションに取り組むということです。

最後に紹介するのは、自分の事業との関係の中で「新しい何かをやりたい」を表現するビジネスコンテスト「Make a difference!」を全社的にやっています。選考を通れば最後は社長にプレゼンをして、いいアイディアならばアクションしていくというもので、事業化されたものもあります。

大企業しか持ち得ないアセットがある

佐藤
東浦さんは諦めかけた新規事業などに、ダメ出しせずにいろいろとアドバイスをされていて「東浦塾」とも呼ばれてるそうです。山内さん何かございますか。

山内
会社員として自社で新規事業や社内ベンチャーを立ち上げるとき、なぜ日立や東急でやるのかを「自分ごと化」するのが大事かなと思います。人財育成の土台として、日立や東急でしかできないことを自覚できるといいと思います。それと、大企業のアセットを使わないとできない大きなイノベーションがあると思うので、そこを社員が前提として理解することで、より創造性が広がるのかなとまず思いました。

あと東浦さんのお話の、失敗を許容する、まずはやってみな、というスタンスはすごくいいなと思います。自分自身がビジネスに取り組む中で掴んできた感覚を、後から振り返ると、いつの間にかSDGsの本質や、事業的な三方よしの本質と一致したりはあると思います。

沿線住民の環境意識を「見える化」

東浦

環境関係での話をひとつ。東急は郊外の住宅地開発のために山林原野を切り開き、都市をつくってきました。そこで苗木を街に返すグリーニング運動というのをやっていました。私には違和感があって「みどリンク」という事業に変えました。緑と地域をリンクするという造語です。それまでは一方的に「ごめんなさい、山から木を切っちゃって」と免罪符のように苗木を渡して終わっていた。みどリンクは誰にも頼まれずに花植え活動などをポケットマネーでやっている東急沿線有志団体に、企画書を出していただければ優れた活動を支援しますという形に変えました。今までの半分の予算でものすごい効果を得て、地域の方々の満足度も上がりました。こちらも名もなき人たちの活動を可視化でき、新たな関係性を築くことでビジネスチャンスに変えることができました。

これには原体験があります。ある沿線で、ビル開発のために駅前の桜の木を2本切りました。社有地ですから、誰からも非難されることなどないと思っていました。そうしたら「この桜の面倒を誰が見てたと思っていたのよ」と、地域住民に怒られた。「知らないだけで、沿線では街の緑や花の面倒を見ている人がいるんだな」と気付かされました。今までやってきたことをちょっと変えることによって、地域と環境が良くなるっていう、事例かなと思います。

佐藤
佐座さん今の話に何かありますか。

佐座
消費者がプレーヤーとしてすごい活動ができるのは素敵です。多くの方が自然とどうやって関わっていけばいいのか、特に都市の中で、生物多様性をいかに維持をするかについて知らない人も多いと思います。企業の活動を通して市民の方に教えていく。環境の大切さについて教えていくのは素晴らしいと思います。(第8回へつづく)

協力:SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)

「第8回:社会課題を自分ごと化して創る未来」はこちら>

画像1: Z世代と語る!社会貢献をビジネスにするには?
【その7】組織におけるイノベーションの仕組み

東浦亮典(とううら・りょうすけ)
東急株式会社 常務執行役員(フューチャー・デザイン・ラボ、 沿線生活創造事業ユニット 管掌 沿線生活創造事業部長)
1985年、東京急行電鉄(現・東急)入社。 自由が丘駅駅員、大井町線車掌研修を経て、都市開発部門に配属。 その後、東急総合研究所に出向し、復職後は、商業施設開発やコンセプト賃貸住宅ブランドの立ち上げなど、新規事業を担当。

画像2: Z世代と語る!社会貢献をビジネスにするには?
【その7】組織におけるイノベーションの仕組み

山内萌斗(やまうち・もえと)
株式会社Gab 代表取締役CEO 
2000年、静岡県浜松市生まれ。静岡大学情報学部行動情報学科2年次休学中(22歳)
東京大学起業家育成プログラムEGDE-NEXT2018年度、同プログラムシリコンバレー
研修選抜メンバー、MAKERS UNIVERSITY 5期生 水野雄介ゼミ代表。大学一年次の2月にシリコンバレーを訪れた際に、人類の存続に必要不可欠な「must haveな事業」をつくることを決意し、同年12月に「ポイ捨てをゼロにする。」ことをミッションに掲げ、株式会社Gabを創業。現在3期目。フォロワー3.9万人のInstagramアカウント「エシカルな暮らし」の運営や、ゲーム感覚ゴミ拾いイベント「清走中」を全国展開など、「社会課題解決の敷居を極限まで下げる。」ことをミッションに掲げて複数の事業を展開中。

画像3: Z世代と語る!社会貢献をビジネスにするには?
【その7】組織におけるイノベーションの仕組み

佐座槙苗(さざ・まな)
一般社団法人SWiTCH 代表理事
1995年生まれ。カナダUBC卒業。ロンドン大学大学院 サステナブル・ディベロプメントコース在学中。2020年、COP26の延期を問題視した若者たちが設立した「Mock COP26」のグローバルコーディネーターに就任。140ヵ国の代表をまとめ、COP26と各国首相に18の政策提案を行い世界的な注目を浴びる。2021年1月、若者のアイデアや意見を大人世代がサポートし、循環型社会をつくるプラットフォーム「一般社団法人SWiTCH」を設立。代表理事として活躍。

画像4: Z世代と語る!社会貢献をビジネスにするには?
【その7】組織におけるイノベーションの仕組み

森正勝(もり・まさかつ)
株式会社日立製作所 イノベーション成長戦略本部副本部長
1994年京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、日立製作所入社。システム開発研究所にて先端デジタル技術を活用したサービス・ソリューション研究に従事。2003年から2004年までUniversity of California, San Diego 客員研究員。横浜研究所にて研究戦略立案や生産技術研究を取り纏めた後、2018年に日立ヨーロッパ社CTO 兼欧州R&Dセンタ長に就任。2020年より研究開発グループ 社会イノベーション協創統括本部(統括本部長 兼 東京社会イノベーション協創センタ長。2022年より現職。
博士(情報工学)

画像5: Z世代と語る!社会貢献をビジネスにするには?
【その7】組織におけるイノベーションの仕組み

迫田雷蔵(さこだ・らいぞう)
株式会社日立アカデミー 取締役社長 
1983年日立製作所入社。電力,デジタルメディア,情報部門の人事業務を担当後,2000年から本社にて処遇制度改革を推進。2005年米国駐在,Hitachi Data SystemsでHR部門Vice President(~2009年)。2012年本社グローバルタレントマネジメント部長,2014年中国・アジア人財本部長,2016年人事勤労本部長,2017年日立総合経営研修所取締役社長。2019年4月に日立アカデミーが設立され,初代社長に就任。

画像6: Z世代と語る!社会貢献をビジネスにするには?
【その7】組織におけるイノベーションの仕組み

佐藤雅彦(さとう・まさひこ)
株式会社日立製作所 Team Sunrise代表
NGOのIT責任者を経て、2001年日立製作所に入社。情報通信事業のシステムエンジニアリングや新会社設立、M&Aなど新事業企画に従事しながらMBAを取得。本社IT戦略本部などを経て、現在、研究開発グルーブ 社会イノベーション協創センター主任研究員。2006年より社内ネットワーク活動「Team Sunrise」の代表を務める。

シリーズ紹介

楠木建の「EFOビジネスレビュー」

一橋ビジネススクール一橋ビジネススクールPDS寄付講座特任教授の楠木建氏の思考の一端を、切れ味鋭い論理を、毎週月曜日に配信。

山口周の「経営の足元を築くリベラルアーツ」

山口周氏をナビゲーターに迎え、経営者・リーダーが、自身の価値基準を持つための「リベラルアーツ」について考える。

協創の森から

社会課題の解決に向けたビジョンの共有を図る研究開発拠点『協創の森』。ここから発信される対話に耳を傾けてください。

新たな企業経営のかたち

パーパス、CSV、ESG、カスタマーサクセス、M&A、ブロックチェーン、アジャイルなど、経営戦略のキーワードをテーマに取り上げ、第一人者に話を聞く。

Key Leader's Voice

各界のビジネスリーダーに未来を創造する戦略を聞く。

経営戦略としての「働き方改革」

今後企業が持続的に成長していくために経営戦略として取り組むべき「働き方改革」。その本質に迫る。

ニューリーダーが開拓する新しい未来

新たな価値創造に挑む気鋭のニューリーダーに、その原動力と開拓する新しい未来を聞く。

日本発の経営戦略「J-CSV」の可能性

日本的経営の良さを活かしながら利益を生み出す「J-CSV」。その先進的な取り組みに迫る。

ベンチマーク・ニッポン

日本を元気にするイノベーターの、ビジョンと取り組みに迫る。

デジタル時代のマーケティング戦略

マーケティングにおける「デジタルシフト」を、いかに進めるべきか、第一人者の声や企業事例を紹介する。

私の仕事術

私たちの仕事や働き方の発想を変える、膨らませるヒントに満ちた偉才たちの仕事術を学ぶ。

EFO Salon

さまざまな分野で活躍する方からビジネスや生活における新しい気づきや価値を見出すための話を聞く。

禅のこころ

全生庵七世 平井正修住職に、こころを調え、自己と向き合う『禅のこころ』について話を聞く。

岩倉使節団が遺したもの—日本近代化への懸け橋

明治期に始まる産業振興と文明開化、日本社会の近代化に多大な影響を及ぼした岩倉使節団。産業史的な観点から、いま一度この偉業を見つめ直す。

八尋俊英の「創造者たち」~次世代ビジネスへの視点~

新世代のイノベーターをゲストに社会課題の解決策や新たな社会価値のつくり方を探る。

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