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2022年9月14日にSHIBUYA QWS(渋谷キューズ)にて、日立製作所主催のイベント「Z世代と企業リーダーが語る!社会貢献をビジネスにするには?~ 社会課題を自分ごと化して創る未来 ~」が開催された。サステナブルな社会において、企業が社会課題をどのように社会貢献につなげ、さらにビジネスとして成り立たせるために必要なものとは。Z世代のリーダー2人に、東急株式会社の東浦氏、日立製作所の森、日立アカデミーの迫田を交えて、活発な議論が行われた。最初は、Z世代と企業をつなげるプラットフォームの運営を行う、一般社団法人SWiTCHの佐座槙苗氏のキーノートスピーチを2回にわたってお届けする。

「第1回:サステナブルを自分ごとに」
「第2回:気候危機下で私たちができること」はこちら>
「第3回:イノベーションの敷居を下げるには?」はこちら>
「第4回:起業の原点となった志とは?」はこちら>
「第5回:サステナブル時代の人財開発戦略とは?」はこちら>
「第6回:サステナブル時代の人財育成のあり方とは?」はこちら>
「第7回:組織におけるイノベーションの仕組み」はこちら>
「第8回:社会課題を自分ごと化して創る未来」はこちら>

「なぜ自然と私たちは共生できないのか」

一般社団法人SWiTCHの代表理事をしている佐座槙苗です。私の志や、どんな活動をしているかについてお話しさせていただきます。私は2021年、イギリスのグラスゴーで開催されたCOP26に日本ユース代表としてに参加しました。ロンドン大学大学院でサステナブル開発を専攻しておりますが、現在、コロナの影響で休学中です。

私は昔から自然と動物が大好きで、裸足で走り回り、木登りもするようなやんちゃな子どもでした。小さい頃から気候変動に興味を持っていました。そのきっかけは皆さんもご存知の映画『もののけ姫』です。主人公のアシタカの「森とタタラ場、双方生きる道はないのか」というセリフを聞き、当時、小学生だった私は「なんで自然と私たちは共に生きられないのかな」と、疑問を持つようになりました。

その後、国際関係や人権問題に興味を持つようになり、中学生の時、インドネシアやカンボジアで家を建てるボランティアに行きました。実際に行ってみて、国際支援のほとんどは実際に現地の人たちに届いていないという事実を目の当たりにしました。

サステナブルな社会の実現について学ぶため、ロンドン大学大学院に進学

高校生になり、環境問題には政治や人権などが密接に絡み合っていることがわかってきました。自然を愛してるだけじゃ駄目なんですね。そこで、カナダのブリティッシュコロンビア大学で人文地理を専攻し、国際関係と自然と共にある人間の活動について勉強しました。大学卒業後は国際機関への就職を考えていましたが、サステナブルな社会の実現のために見識を深めるには、大学院レベルの勉強が必要だとわかり、サステナブル開発教育で歴史のあるロンドン大学大学院に進学することにしました。

そこで、すごく刺激的だったのは、クラスメイト40人の半分以上が違う国から来ていることでした。多様性があり、タイ人もいればペルー人も、ナイジェリア人もいる。その多くが発展途上国出身なんですね。今、気候変動の大きな影響を受けている発展途上国の人たち、特に南半球のMAPA(※)と呼ばれる人々です。

※ Most Affected People and Areas:最も影響を受ける人々と場所で、南半球に偏在している発展途上国

あなたの意見は全てお金持ちの国の人の発想

私がサステナブルな政策についてクラスメイトたちと話し合っていたとき、ペルー出身のビビアナから「あなたの意見はすべてお金持ちの国の人の意見だよ」と言われてしまったんです。「私は、こんなにも気候変動や、国際的にも人々のことを考えてるのに」とショックを受けましたが、世界にはインフラが整っていない国が多いことが考えのベースになかった自分に気づきました。その一方で、「お金持ちの国出身だからこそできることって、たくさんあるじゃないか」とも思い始めました。

データをご覧いただくとわかりますが、CO2排出量において、日本は世界5位です。とても残念なことですが、裏返して考えると、日本が脱炭素を推進することで、世界に大きく貢献できると思います。

ソロモン諸島出身の友人の家は海に沈んだ

世界の気候は今、危機的な状況です。2021年には記録的な熱波の影響で、私が大学時代を過ごしたカナダのブリティッシュコロンビア州で、600人近くが亡くなりました。インドでも干ばつで極端な水不足が発生し、600万人が被害を受けました。そんなことが普通になってしまっているのが、気候危機の現状なのです。

ここで私の友人をご紹介します。1分ほどの動画をご覧ください。

画像: 祖父母が住んでいた水没した島の上でメッセージを送るグラディス・ハブさん  shibuya-cop.com

祖父母が住んでいた水没した島の上でメッセージを送るグラディス・ハブさん

shibuya-cop.com

衝撃的な動画は、私と同い年の仲間、グラディス・ハブからのメッセージです。彼女は元ミスソロモン諸島で、ユニセフ太平洋大使も務めています。彼女が立っている場所には、祖父母が住んでいましたが、気候変動の影響で、完全に海に沈んでしまいました。

皆さんも子供の頃から遊びにいっている祖父母の家が、海に沈んでしまったらショックですよね。グラディスがこんな目に遭ったのは、ソロモン諸島に住んでいる人たちのせいでしょうか? この島に住む人たちはCO2をほとんど排出していないのに、大きな被害を受けました。それは、ちょっとおかしいですよね。

このように気候変動が危機的な状況になったのは、人間の活動によるエネルギー消費や環境汚染が高まり、地球環境の境界を超えてしまったことが原因です。

画像: 人間の活動が地球環境の境界を超えていることを知ってほしい。

人間の活動が地球環境の境界を超えていることを知ってほしい。

プラネタリーバウンダリーの図は、人間が地球上で持続的に生存していくためには、超えてはならない地球環境の境界があることを示しています。

9つの項目のうち4つが、地球環境を維持できるエリアを超えてしまっています。本当はこのグリーンゾーンの中に収まる範囲で人間活動することが必要です。地球の資源には限界があることを知った上で、その限界の中でいかに活動していくかを考えていきたいですね。

私達はすでに気候危機の中に生きていますが、最近、科学者の間では「365日災害の中に生きている」という新しい表現に移行し始めています。(第2回へつづく)

協力:SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)

「第2回:気候危機下で私たちができること」はこちら>

画像: Z世代と語る!社会貢献をビジネスにするには?
【その1】サステナブルを自分ごとに

佐座槙苗(さざ・まな)
一般社団法人SWiTCH 代表理事
1995年生まれ。カナダUBC卒業。ロンドン大学大学院 サステナブル・ディベロプメントコース在学中。2020年、COP26の延期を問題視した若者たちが設立した「Mock COP26」のグローバルコーディネーターに就任。140ヵ国の代表をまとめ、COP26と各国首相に18の政策提案を行い世界的な注目を浴びる。2021年1月、若者のアイデアや意見を大人世代がサポートし、循環型社会をつくるプラットフォーム「一般社団法人SWiTCH」を設立。代表理事として活躍。

シリーズ紹介

楠木建の「EFOビジネスレビュー」

一橋ビジネススクール一橋ビジネススクールPDS寄付講座特任教授の楠木建氏の思考の一端を、切れ味鋭い論理を、毎週月曜日に配信。

山口周の「経営の足元を築くリベラルアーツ」

山口周氏をナビゲーターに迎え、経営者・リーダーが、自身の価値基準を持つための「リベラルアーツ」について考える。

協創の森から

社会課題の解決に向けたビジョンの共有を図る研究開発拠点『協創の森』。ここから発信される対話に耳を傾けてください。

新たな企業経営のかたち

パーパス、CSV、ESG、カスタマーサクセス、M&A、ブロックチェーン、アジャイルなど、経営戦略のキーワードをテーマに取り上げ、第一人者に話を聞く。

Key Leader's Voice

各界のビジネスリーダーに未来を創造する戦略を聞く。

経営戦略としての「働き方改革」

今後企業が持続的に成長していくために経営戦略として取り組むべき「働き方改革」。その本質に迫る。

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日本発の経営戦略「J-CSV」の可能性

日本的経営の良さを活かしながら利益を生み出す「J-CSV」。その先進的な取り組みに迫る。

ベンチマーク・ニッポン

日本を元気にするイノベーターの、ビジョンと取り組みに迫る。

デジタル時代のマーケティング戦略

マーケティングにおける「デジタルシフト」を、いかに進めるべきか、第一人者の声や企業事例を紹介する。

私の仕事術

私たちの仕事や働き方の発想を変える、膨らませるヒントに満ちた偉才たちの仕事術を学ぶ。

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さまざまな分野で活躍する方からビジネスや生活における新しい気づきや価値を見出すための話を聞く。

禅のこころ

全生庵七世 平井正修住職に、こころを調え、自己と向き合う『禅のこころ』について話を聞く。

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明治期に始まる産業振興と文明開化、日本社会の近代化に多大な影響を及ぼした岩倉使節団。産業史的な観点から、いま一度この偉業を見つめ直す。

八尋俊英の「創造者たち」~次世代ビジネスへの視点~

新世代のイノベーターをゲストに社会課題の解決策や新たな社会価値のつくり方を探る。

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