「第1回:インテリアと家電の視点から考える『おうち時間』とは?」
「第2回:家具とインテリアのニーズに見る、ワークスタイルの変化とは?」はこちら>
「第3回:アフターコロナにおける『ウェルネス』の高め方とは?」はこちら>
出演者
日立製作所 研究開発グループ 東京社会イノベ―ション協創センタ
プロダクトデザイン部 リーダ主任デザイナー 助口聡(ナビゲーター):家電・ホームソリューション分野のデザインマネージャー
プロダクトデザイン部 プロダクトデザイナー 佐藤知彦:冷蔵庫のデザイン開発を担当
プロダクトデザイン部 プロダクトデザイナー 關舞:掃除機と空気清浄機のデザイン開発を担当
価値創出プロジェクト サービスデザイナー 日野水聡子:都市向けのソリューション創生を担当
価値創出プロジェクト サービス研究者 高田芽衣:まちづくりや働き方、オフィスのあり方を研究
株式会社アクタス
ビジュアルマーチャンダイザー 岡田夕起氏:日立の冷蔵庫のデザイン監修を担当
ヨーロッパ家具バイヤー 野口礼氏:ヨーロッパ家具の買い付けと商品開発の責任者
雑貨グリーンバイヤー 徳増和司氏:ライフスタイルとインテリアグリーンのブランドを担当
プロダクトデザインの視点と、インテリアの発想。
日立 助口(すけぐち)
ナビゲーターを務めさせていただく、日立製作所 研究開発グループ プロダクトデザイン部の助口聡です。本日は「暮らしとシゴトのちょうどよい関係」をテーマに、インテリア業界から株式会社アクタスさまをお迎えして日立の社員との座談会をお送りします。
アクタスさまには2019年に、日立のデザインチームからのオファーで冷蔵庫のデザイン開発を監修いただきました。その際に伺った、「北欧は日照時間が短く冬が長いため、必然的に家で過ごす時間が長い。だから、『おうち時間』を大切にする文化やインテリア産業が発展した」というお話が非常に印象に残っています。奇しくも今、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で日本でも自宅で過ごす時間が長くなり、ライフスタイルは劇的に変化しました。以前から「豊かな暮らし」を提案し続けてこられたアクタスさまと一緒に、アフターコロナの新しいライフスタイルを考察する。今こそそのタイミングだと考え、この座談会を企画しました。
アクタスさまからは、岡田夕起さん、野口礼さん、徳増(とくます)和司さんの3名にお越しいただきました。
アクタス 岡田
ビジュアルマーチャンダイザーの岡田です。先ほどご紹介いただいた、日立さまの冷蔵庫のデザイン監修を担当しました。
アクタス 野口
野口です。わたしはヨーロッパ家具バイヤーおよび家具の商品開発の責任者をしています。
アクタス 徳増
雑貨グリーンバイヤーの徳増です。「スローハウス」というライフスタイルブランドと、インテリアグリーンのブランド「NODERIUM(ノードリウム)」を担当しています。
日立 助口
よろしくお願いします。日立からは、研究開発グループの佐藤知彦、關(せき)舞、高田芽衣、日野水(ひのみず)聡子が参加させていただきます。
日立 佐藤
プロダクトデザイナーの佐藤です。冷蔵庫のデザイン開発を担当しています。
日立 關
プロダクトデザイナーの關です。掃除機と空気清浄機のデザイン開発を担当しています。
日立 日野水
サービスデザイナーの日野水です。主にスマートシティをテーマに、都市向けのソリューション創生に携わっています。
日立 高田
サービス研究者の高田です。主にデベロッパーと一緒にまちづくりや働き方、オフィスのあり方を検討しています。
コロナ禍で変わった、家電とインテリアのニーズ
日立 助口
それではひとつめのトピックに参ります。コロナ禍の2年間でおうち時間が増えたことで、インテリアと家電、それぞれの分野で新たにどんなニーズや価値観の変化が生まれているのでしょうか。まずは日立側からお願いします。
日立 關
2020年に政府の緊急経済対策として特別定額給付金が支給されたタイミングで、スティック型掃除機の販売数がとにかく伸びました。在宅勤務の方が増えたことで、ちょっとしたすき間時間にご家庭の気になる箇所をお掃除したいというニーズが生まれ、手軽に使えるスティック型が選ばれました。
日立 佐藤
ご家庭で調理し食事する「内食」のニーズが非常に高まったことで、食品をまとめ買いする傾向も強くなりました。特に、いつも利用している定番食品の買い忘れを防ぐために冷蔵庫のストック状況を頻繁に確認する“ルーティン家事”が生活の中で日々増え、消費者の負担になっています。そういった世相を踏まえて2021年3月に日立が発売したのが、まとめ買いの食品を保存する“2台目の冷蔵庫”としての使用を想定した「スマートストッカー」です。
庫内に設置した重量センサーが食品の残量を検知し、専用のスマートフォンアプリに表示することで、ご家庭での定番食品のストック管理ができます。アプリは食品のECサイトとも連携しているので、買い足しもスムーズです。コロナ禍が終息したあとも、このニーズは定着していくと考えています。
日立 助口
アクタスさまのほうはいかがでしょうか。
アクタス 徳増
「ちょっとよい家具やインテリアを使うことで、長い時間家にいても、より豊かに過ごせるようになりたい」。そんなニーズの高まりを感じています。コロナ禍になって最初に売れ出したのが、家族みんなで使えるような中高級のソファ、その次が観葉植物でした。わたしたちは観葉植物を「インテリア以上、ペット未満」と位置づけています。ペットほど手はかからないけれど、インテリアと違って日々成長するものだから、それを愛でる気持ちが生まれる。このニーズが、コロナ禍のライフスタイルにフィットしたようです。
日立 關
わたしもコロナ禍以降、観葉植物を多く採り入れるようになりました。グリーンが家の中にあるだけで外の空気を感じられ、リフレッシュにつながっています。
アクタス 徳増
生き物という有機的なものが身近にいないと居心地が悪い。そんな感覚が人間には本能的に備わっているのではないでしょうか。だから、多くの消費者さまが観葉植物にたどり着いたのだと思います。
モノがあって、生活がある。
アクタス 野口
近年、大きく変わったのが照明のデザインです。LEDの普及でデザインの自由度が高まったうえ、コードレスなので持ち運びができるポータブルライトも増えてきました。その一方、在宅勤務によりおうち時間が増えたなかで、明かりを変えるだけでオンとオフの切り替えができるといった照明の重要性に多くの方が気づかれたのではないでしょうか。照明とご家庭の需給関係が今ようやくマッチしたと感じています。
アクタス 徳増
2つ、要因があると思います。1つは、野口も触れたように、コロナ禍で強制的におうち時間が長くなったことで、「居心地のよさって何だろう?」という問いに、多くの方が向き合えるようになってきたこと。
もう1つは、既存のプロダクトを使うことでより暮らしやすくなると多くの方が気づき始めたことです。夜だけでなく昼間も家に家族がいて、それぞれが仕事や勉強、家事に取り組んでいるなか、常に家の中のどこかに自分のスペースを確保しなくてはいけない。そういった暮らし方に、野口が挙げたポータブルライトはフィットします。
日立 佐藤
先ほどご紹介した冷蔵庫「スマートストッカー」も、従来の冷蔵庫のようにキッチンに置くだけではなく、リビングやダイニングにも置くことを意識してデザインしました。
プロダクトが発する“重力”があるというか、やはり「モノがあって生活がある」ということだと思います。ポータブルライトを持ち込んだ場所が自分のスペースになり、そこで本を読んだりお酒を飲んだりできるように、ご家庭の中にさまざまな生活スタイルが生まれるのではないでしょうか。(第2回へつづく)
関連リンク Linking Society
■プログラム1
「アフターパンデミックの、職住ライフスタイル」
■プログラム2
「暮らしとシゴトのちょうど良い関係」
株式会社アクタス
日本の暮らしの質的向上をめざし「美しく丁寧な暮らし」を広めるため、衣食住のすべてにまつわる優れた商品とサービスを、幅広い販売チャネルで提供。インテリアショップ「ACTUS」におけるヨーロッパ家具の輸入販売やオリジナル家具・雑貨の開発・販売をはじめ、レストラン・カフェやアパレル、リノベーション、公共施設や商業施設のインテリアデザイン・設計施工など幅広く手掛けている。
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Linking Society
シリーズ紹介
楠木建の「EFOビジネスレビュー」
一橋ビジネススクール一橋ビジネススクールPDS寄付講座特任教授の楠木建氏の思考の一端を、切れ味鋭い論理を、毎週月曜日に配信。
山口周の「経営の足元を築くリベラルアーツ」
山口周氏をナビゲーターに迎え、経営者・リーダーが、自身の価値基準を持つための「リベラルアーツ」について考える。
協創の森から
社会課題の解決に向けたビジョンの共有を図る研究開発拠点『協創の森』。ここから発信される対話に耳を傾けてください。
新たな企業経営のかたち
パーパス、CSV、ESG、カスタマーサクセス、M&A、ブロックチェーン、アジャイルなど、経営戦略のキーワードをテーマに取り上げ、第一人者に話を聞く。
Key Leader's Voice
各界のビジネスリーダーに未来を創造する戦略を聞く。
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今後企業が持続的に成長していくために経営戦略として取り組むべき「働き方改革」。その本質に迫る。
ニューリーダーが開拓する新しい未来
新たな価値創造に挑む気鋭のニューリーダーに、その原動力と開拓する新しい未来を聞く。
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日本を元気にするイノベーターの、ビジョンと取り組みに迫る。
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マーケティングにおける「デジタルシフト」を、いかに進めるべきか、第一人者の声や企業事例を紹介する。
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