日立製作所 關舞・日野水聡子・高田芽衣/株式会社アクタス 岡田夕起氏・徳増和司氏・野口礼氏
2021年12月14日に配信されたウェビナー「アフターパンデミックの職住ライフスタイル」における、株式会社アクタスと日立による座談会の最終回。3つめのトピックに取り上げるのは、在宅勤務で課題となっている「ウェルネス」だ。インテリアと家電、そしてまちづくりの観点からディスカッションが進んだ。

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「第1回:インテリアと家電の視点から考える『おうち時間』とは?」はこちら>
「第2回:家具とインテリアのニーズに見る、ワークスタイルの変化とは?」はこちら>
「第3回:アフターコロナにおける『ウェルネス』の高め方とは?」

出演者
日立製作所 研究開発グループ 東京社会イノベ―ション協創センタ
プロダクトデザイン部 リーダ主任デザイナー 助口聡(ナビゲーター):家電・ホームソリューション分野のデザインマネージャー
プロダクトデザイン部 プロダクトデザイナー 佐藤知彦:冷蔵庫のデザイン開発を担当
プロダクトデザイン部 プロダクトデザイナー 關舞:掃除機と空気清浄機のデザイン開発を担当
価値創出プロジェクト サービスデザイナー 日野水聡子:都市向けのソリューション創生を担当
価値創出プロジェクト サービス研究者 高田芽衣:まちづくりや働き方、オフィスのあり方を研究

株式会社アクタス
ビジュアルマーチャンダイザー 岡田夕起氏:日立の冷蔵庫のデザイン監修を担当
ヨーロッパ家具バイヤー 野口礼氏:ヨーロッパ家具の買い付けと商品開発の責任者
雑貨グリーンバイヤー 徳増和司氏:ライフスタイルとインテリアグリーンのブランドを担当

家の外のモノを、家の中に採り入れる

日立 助口
3つめのトピックは「ウェルネス」です。コロナ禍以降、おうち時間が充実したり、多様な働き方ができるようになったりした反面、在宅勤務におけるオン・オフの切り替えの難しさや、一日中家の中にいることによる運動不足といった課題も生まれています。心身のリフレッシュを図るというニーズが家具やインテリアにも表れてきているのではと思うのですが、いかがですか。

アクタス 徳増
ルームフレグランスの売り上げがぐっと伸びています。外出中、人気のないところでマスクを外したときに、街の中にいろいろな臭いが混在していることに改めて気づく。そんな経験はないでしょうか。普段いろいろな臭いを遮断して生活している中で、自宅に戻ったら何かよい香りでリラックスしたい。そんなニーズが高まっています。店頭でお客さまとお話ししていても、エッセンシャルオイルや天然由来の香料に対する反応が劇的に変わりました。また、冒頭でも触れたように、インドアグリーンの需要も伸びています。本物に接することで、脳が刺激される。その大切さに、この閉ざされた生活の中で多くの方が気づかれたと思います。

画像: アクタス 徳増和司氏

アクタス 徳増和司氏

ずっと家の中にいると、視界に入ってくる情報が限られてくるじゃないですか。北欧に暮らす方々がアートやポスターを生活に採り入れる際に上手なのが、気分や季節によって色の異なるものを飾ることで、自分の心情の揺らぎも感じている点です。美術鑑賞のように家の外だけに頼っていたことを、家の中でも感じようとする。コロナ禍をきっかけに、日本でもそんな変化が起きているのではないでしょうか。

家の中と外との境界線があいまいに。

日立 日野水
在宅勤務は、通勤に比べて時間や空間の制約が緩く働きやすい反面、発想に乏しくなるなどの弊害も意外とあることを、みなさん感じ始めているのではないでしょうか。外に出る機会が貴重だからこそ、その時間を活用し、刺激を受けようと楽しむ。思いがけない素敵な偶然に出会う。そういったセレンディピティ(偶発性)が、これからの都市生活では大切になると思います。

日立 高田
以前のわたしは、平日=オフィスに通う日が「ケ」で、休日は「ハレ」という感覚でした。ところがコロナ禍でずっと家にいる日が続いたせいで、たまに用事があって会社に行く日がむしろ「ハレ」になり、「せっかく外に出るのだからあれもやろう、これもやろう」と、ハレとケが逆転したのを感じます。

画像: 日立 高田芽衣

日立 高田芽衣

また、在宅勤務になって感じるのは、家の中と外との境界線が混じってきたことです。最近、カフェとコインランドリーが併設されているケースがあります。子どもたちが遊んでいる横で、お母さんたちがアイロンがけをしている。外にいても、家の中にいるように過ごせるしかけが面白いと思いました。

アクタス 岡田
以前、バンライフ(※)による旅行企画で「自動車の中を部屋のように改装したい」という相談をいただいたことがありました。そのときに、アウトドア家具ではなく、普段家の中で使うような家具を自動車に搭載し、部屋が移動するような感覚で旅行できるインテリアのしつらえを提案したところ、とても好評でした。

※「バン(VAN)」と「ライフ(LIFE)」を掛け合わせた造語。荷台スペースが広いバンの内部を家やオフィスのように改装し、生活や仕事、アウトドア活動の拠点とするライフスタイル。

画像: アクタスがインテリアの提案を行った、バンの内装

アクタスがインテリアの提案を行った、バンの内装

コロナ禍で、宿泊施設に知らない人たちと一緒にいることに抵抗がある。でも、旅はしたい。なおかつプライベート感も欲しい。そんな声に応えられるバンライフの需要が増えていることそのものが、まさに家の外と中との境目があいまいになってきたことを示していると思います。

画像: アクタス 岡田夕起氏

アクタス 岡田夕起氏

暮らしとシゴトのちょうどよい関係を築くために。

日立 助口
では最後に、「暮らしとシゴトのちょうどよい関係」について、みなさんのお考えをお聞かせください。

日立 關
自分が落ち着けるもの、好きなものに囲まれて働くことができれば、より作業がはかどるでしょうし、前向きな気持ちで仕事に取り組めると思います。使う人がほっとしたり、ほんのちょっぴりときめいたりするようなデザインとは何か。そんな視点がこれからは欠かせません。

日立 佐藤
家事や仕事がモザイク状に交錯することでストレスがかかる在宅勤務だからこそ、無理のない形で生活環境を整えていくことが重要です。例えば、一日の締めくくりとして掃除をすることで、“生活の句読点”を整える。生活をより良くするために、そんな発想も大切になると思います。

日立 高田
まちづくりの視点から言うと、人と地域とのつながりをもっと増やせるしくみが必要です。例えば、街のいたるところにポップアップショップ(※)を手軽に出店できるようなしくみをはじめとした、働き方や暮らしを変えるきっかけづくりが求められてくるのではないでしょうか。

※ 短期間のみ出店する、期間限定の臨時店舗。

日立 日野水
在宅勤務でプライベートと仕事の境界が曖昧になることで、だれもが働きやすい環境やイレギュラーを受け入れるマインドセットが育ちつつあると感じます。一方で、香りや自然環境といったリアルなものに触れる体験も求められていることを、みなさんとのお話から実感しました。人々がもっと家の外に出て行きたくなるような、リアルな体験を楽しめるようなまちづくりを考えていきたいと思います。

アクタス 徳増
コロナ禍に見舞われながらも、家族の時間が増え、豊かな生活ができるようになった。この“良い変化”を忘れることなく、そのまま継続していきたいです。例えば、観葉植物が家の中にあると、本物を感じることができる。この感覚を一度体験すると、例えばおいしい料理をまた食べたくなるように、もう一度体験したいという気持ちが起きるはず。そう信じて、引き続きライフスタイルを提案していきたいです。

アクタス 野口
新たなデザインが生まれるには、経済や歴史、風土、文化などいろいろな理由があると思います。特殊な時代に生まれたデザインというものは、きっと10年後思い返してみても面白いはず。コロナ禍で生まれてきたデザインや習慣には、衣・食・住・働をまたげるような、だれしもが愛着を持てる発見が必ずあるはずです。消費者のみなさんにとってはとても面白い時代だと思います。

アクタス 岡田
在宅勤務が定番になったことがきっかけで、家の中のことにみなさんの関心が向いてきたことがとてもうれしいです。やっとそこに気づいてくれたか、と。わたしは家の中を飾ったりディスプレイしたりすることで、インテリアに遊び心を持っていただける提案をしています。インテリアの楽しさをたくさんの人にお伝えすることが、暮らしとシゴトのちょうどよい関係づくりにつながるのではと思います。

日立 助口
インテリア、家電、まちづくりの視点から、おうち時間とワークスタイル、ウェルネスについて有意義なディスカッションができました。貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

株式会社アクタス

日本の暮らしの質的向上をめざし「美しく丁寧な暮らし」を広めるため、衣食住のすべてにまつわる優れた商品とサービスを、幅広い販売チャネルで提供。インテリアショップ「ACTUS」におけるヨーロッパ家具の輸入販売やオリジナル家具・雑貨の開発・販売をはじめ、レストラン・カフェやアパレル、リノベーション、公共施設や商業施設のインテリアデザイン・設計施工など幅広く手掛けている。

シリーズ紹介

[特集]ポストコロナの社会とビジネス

破壊の先にある創造へ――。「グレート・リセット」後に求められる社会とビジネスのあり方を、各界の有識者の言葉から探ります。
※グレート・リセット:2021年夏に開催される予定の次回世界経済フォーラム年次総会、通称ダボス会議におけるテーマ

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