日立製作所 研究開発グループ 森正勝/日立製作所 Lumada Innovation Hub Senior Principal / シナモンAI 取締役会長 加治慶光
2021年8月5日にウェビナーにて配信された、日立製作所 Lumada Innovation Hub Senior Principalの加治慶光と、日立製作所 研究開発グループの森正勝による対談。最終回では、社会イノベーションを起こすためにDXが果たすべき役割について語ってもらった。

「第1回:社会課題の解決に、DXはどう関係するのか?」はこちら>
「第2回:なぜ「越境して接続する場」が重要なのか?」はこちら>

社会イノベーションを起こす=DX

丸山
これまで、「社会課題の解決とDXの関係」「越境して接続することの重要性」について語っていただきました。3つめのトピックとして、日立が社会イノベーション事業をお客さまとの協創で進めていくうえで、DXが果たすべき役割についてお二人の考えをお聞きしたいと思います。

加治
今、世の中ではDXが猛スピードで動き出しており、これはどんどん加速する方向に行くと思います。さらに、日本ではデジタル庁がスタートすることで世の中が大きく変わっていくはずです。

世界レベルでの大きな変化をめざした議論も近年盛んです。2019年、アメリカの主要企業の経営者をメンバーとする財界団体「Business Roundtable」が、「ステークホルダー資本主義」という新たな資本主義のあり方を唱えました。つまり、これまでの株主至上主義の企業経営ではなく、企業に関与するさまざまなステークホルダー全員に価値をもたらすことをめざすという考え方です。

画像: 社会イノベーションを起こす=DX

また、我が国においては2020年11月に経団連が「。新成長戦略」を発表しました。なぜ頭に「。」が付いているかというと、かつての世界的な経済成長を支えてきた資本主義にいったんピリオドを打って、新たな戦略のもと経済を成長させていこうという意図があるからです。この成長戦略の背景に、内閣府が提唱する未来社会のコンセプト「Society 5.0(※)」があり、その柱の1つとしてDXが位置づけられています。経団連の戦略と日立がめざす方向が非常に似ていまして、イノベーションを起こして世界のいろいろな社会課題を解決していくということはすなわちDXである、と。そして今、SDGsを通じて世界中の企業が同じ方向に向かって覚醒し始めています。

※ サイバー空間とフィジカル(現実)空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会を指す。

めざすべき未来像の共有こそ、DXの出発点


社会課題の解決にDXを役立たせるということは、つまるところ、世の中のしくみを変えることです。そのためには、先ほどお話に挙がったステークホルダーの合意が不可欠です。ステークホルダーがたくさんいるということは、それだけプロジェクトを進めるのが難しいことでもある。そのなかでどう合意形成をし、「三方良し」を実現していくかが非常に重要になると思います。

画像: めざすべき未来像の共有こそ、DXの出発点

ステークホルダー間の合意形成ができて、解決すべき問題が特定されれば、あとは技術を駆使することで解決に近づくことができます。大事なことは、どうしたら社会がよくなるかという方向性を、ステークホルダーの合意のもと設定することです。日立の研究開発グループでは、さまざまなデータを組み合わせることでデジタル空間での実証実験を可能にする「Cyber-Proof of Concept (Cyber-PoC)」というシミュレーターをお客さまとの協創に用いています。社会にどんな施策やソリューションが実装されるとどんなことが起きるかというシミュレーションを行ったうえで、「よし、これで行きましょう」という合意を形成してからプロジェクトを進めています。

画像: 日立の研究開発グループが開発したシミュレーター「Cyber-PoC」の活用例

日立の研究開発グループが開発したシミュレーター「Cyber-PoC」の活用例

「こうすれば社会全体がよくなる」という未来像を可視化してステークホルダー間で共有し、協力して進んでいく。そんなプロジェクトを1つずつ仕掛けていきながら、社会がよりよい方向に変わっていけるよう日立としてお手伝いできればと思っています。

丸山
冒頭で加治さんから、「VUCA」の時代において社会イノベーションを起こすには、バックキャスティングのアプローチを用いて理想と現実のギャップを埋めていくことが重要だというご指摘がありました。そのギャップを埋めるときに、例えばデジタル空間での可視化による合意形成がDX推進の起点となるという森さんのお話でした。1つの答えを導き出せたわけではありませんが、社会イノベーション事業におけるDXの意義について議論ができたと思います。本日はお二人とも、ありがとうございました。

画像1: 問いからはじめるイノベーション-Vol.3 社会のしくみを変えるDXとは。
【その3】社会イノベーション事業における、DXの役割とは?

加治 慶光(かじ よしみつ)
日立製作所 Lumada Innovation Hub Senior Principal。シナモンAI 取締役会長、 鎌倉市スマートシティ推進参与。青山学院大学経済学部を卒業後、富士銀行、広告会社を経てケロッグ経営大学院MBAを修了。日本コカ・コーラ、タイム・ワーナー、ソニー・ピクチャーズ、日産自動車、オリンピック・パラリンピック招致委員会などを経て首相官邸国際広報室へ。その後アクセンチュアにてブランディング、イノベーション、働き方改革、SDGs、地方拡張などを担当後、現職。2016年Slush Asia Co-CMOも務め日本のスタートアップムーブメントを盛り上げた。

画像2: 問いからはじめるイノベーション-Vol.3 社会のしくみを変えるDXとは。
【その3】社会イノベーション事業における、DXの役割とは?

森 正勝(もり まさかつ)
日立製作所 研究開発グループ 社会イノベーション協創統括本部 統括本部長。1994年、京都大学大学院工学研究科修士課程を修了後、日立製作所に入社。システム開発研究所にて先端デジタル技術を活用したサービス・ソリューション研究に従事した。2003年から2004年までUniversity of California, San Diego 客員研究員。横浜研究所にて研究戦略立案や生産技術研究を取りまとめたのち、日立ヨーロッパ社CTO 兼欧州R&Dセンタ長を経て、2020年より現職。博士(情報工学)。

画像3: 問いからはじめるイノベーション-Vol.3 社会のしくみを変えるDXとは。
【その3】社会イノベーション事業における、DXの役割とは?

ナビゲーター 丸山幸伸(まるやま ゆきのぶ)
日立製作所 研究開発グループ 東京社会イノベーションセンタ 主管デザイン長。日立製作所に入社後、プロダクトデザインを担当。2001年に日立ヒューマンインタラクションラボ(HHIL)、2010年にビジョンデザイン研究の分野を立ち上げ、2016年に英国オフィス Experience Design Lab.ラボ長。帰国後はロボット・AI、デジタルシティのサービスデザインを経て、日立グローバルライフソリューションズ㈱に出向しビジョン駆動型商品開発戦略の導入をリード。デザイン方法論開発、人材教育にも従事。2020年より現職。

新たな協創のカタチ

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[特集]ポストコロナの社会とビジネス

破壊の先にある創造へ――。「グレート・リセット」後に求められる社会とビジネスのあり方を、各界の有識者の言葉から探ります。
※グレート・リセット:2021年夏に開催される予定の次回世界経済フォーラム年次総会、通称ダボス会議におけるテーマ

楠木建の「EFOビジネスレビュー」

一橋ビジネススクールの楠木教授の思考の一端を、切れ味鋭い論理を、毎週月曜日に配信。

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山口周氏をナビゲーターに迎え、経営者・リーダーが、自身の価値基準を持つための「リベラルアーツ」について考える。

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