株式会社 日立製作所 執行役副社長 德永俊昭/インタビュアー:久保純子氏(フリーアナウンサー)
最後に、德永さんのパーソナリティについても少し深掘りしてみました。早朝、どよーんとした頭で思いをめぐらせながら過ごす時間は、自分にとっては大切な時間だという德永さん。ゴルフやドライブなどで気分転換をしながら、アメリカと日本、欧州を舞台に時差を越えて仕事をこなす。そんな中で、これまで出会ったお客さまをはじめ、上司、同僚、友人たちとの出会いが宝だと話す德永さんの思い描く未来とは。皆さまもちょっと日立のファンになるかもしれませんよ。

※2021年4月1日に德永の役職を変更しています。

「第1回:父親の導き」はこちら>
「第2回:日立のデジタルソリューションの可能性」はこちら>
「第3回:シリコンバレーで日立のDNAは受け入れられるのか」はこちら>
「第4回:“協調”が未来を拓く」はこちら>

早寝早起き病知らず

久保
そろそろお時間も残り少なくなってしまいました。ここからもう少し德永さんのパーソナリティに迫りたいと思います。普段はどんな毎日を送られているのですか。

德永
昔から早寝早起きで、5時すぎになぜだか目が覚めます。ただ、すぐにシャキシャキ動き回るのではなく、すごいなんかどよーんとして。

久保
ははは、せっかく朝早く起きているのにも関わらず。

德永
昨日は、「どんなことしちゃったかな」っていう振り返りをしたり、「今日はどんなことをしなきゃいけないかな」というのをぼんやり考えて、ああでもないこうでもないと考えを巡らせて、行きつ戻りつしながら、煮え切らない1時間を過ごして、時間切れになった頃に、「まあこんな感じでやろう今日は」、と思いながら準備を始める感じですね。

久保
でもぼんやりしながらも1日の設計を立てているわけですね。目標設定も。

德永
どうやったら自分の価値を出せるかなというのをいろいろ行きつ戻りつ考えて、腹を決めればあまり悩まないでやるんですけれども。朝起きてから家出るまで、20分とか30分で出られる人とかいるじゃないですか、私には絶対無理ですね。

久保
お仕事はどのような1日なんでしょうか。

德永
午前中から午後一くらいまでは米国のメンバーとの打合せに費やします。ちょうど昼頃に日本のニュースやオンラインの新聞が配信されますので、前日の日本の動きを大まかにチェックし、その後、日本側が始業しますので、夕方4時から夜8時ぐらいまでは日本の仕事をするという感じです。

久保
朝から夜までずっとお仕事ですね。今はオンラインの会議がいつでもできてしまうので、ヨーロッパと繋ぐとなると、なおさら大変ですね。

德永
おっしゃる通りです。今朝もロンドンからリモート会議を朝5時(カリフォルニア時間)から行いたいと言われて、さすがに「勘弁して」と言って6時にしてもらいました。

久保
早寝早起き病知らずと言いますけど、コロナ禍での気分転換はどうされていますか。何か運動などはされているのでしょうか。

愛読書や影響を受けた本

德永
周りの人がそれなりに動ける時は、ゴルフに行ったりはします。去年3月頃の新型コロナウイルスの流行初期は、しばらくはペースがつかめないじゃないですか。1日の歩数とか見ると、あれ、200歩しか歩いていないなとかあるわけですよ。200歩はさすがにまずいと思い、気分転換も兼ねて筋トレなどを始めました。

久保
そうなんですね、それは何よりです。でも確かに在宅勤務で家に籠っていると運動不足になりますよね。私も毎日歩くようにしています。

德永
そうですね、会社に通うというのは結構歩いていたんだなってあらためて思います。

久保
ご趣味はゴルフの他にお持ちですか。

德永
日本にいる時は意味もなく遠出してドライブをしながら大声で歌ったり、クルマを停めて風景をぼーっと眺めたりしています。

久保
そこは食いつきポイントですね。何を歌われるのですか。

德永
昭和の歌はやっぱりいいですよ。最近、なぜか昭和の日本で流行した「ジャパニーズ・シティ・ポップ」というジャンルがワールドワイドで認知され、ヒットしているそうです。

久保
知らなかったです。でも、声を出すのはストレス発散ができますし、大事なことですよね。本もよくお読みになるということですが、愛読書や影響を受けた本があれば教えてください。

德永
印象に残っているのは、多感な大学時代に読んだ宮本輝さんの『青が散る』とか、恩田陸さんの『夜のピクニック』などの小説です。恩田さんは高校の先輩ですが、作品は高校時代の伝統行事がモデルになっていて、いい青春時代だったなあと昔を懐かしむ感じです。

久保
一方で会社経営に役立った本はありますか。

德永
それはありますね。やっぱり事業を立て直さなきゃいけないっていう局面は今まで何度かあったので、その時に読んで参考にしたのは、三枝匡(さえぐさ・ただし)さんの『V字回復の経営』でした。非常に役に立ちました。あと、仕事人としての基本的なマインドセットという意味では、稲盛和夫さんの『生き方』という本が参考になりました。稲盛さんは、そんなに難しいことは言っていなくて、家族だと思って従業員をみろとか、全ての判断に私心が入ったりしてないかどうかを自問自答するっていうことが結構大事だよっていうふうに書いてあって、それに対しては、やっぱり判断するときに自分の都合が良いからこの判断してないよなっていうことを自分の中に反芻したりしますね。自分に都合の良いほうを選ぼうとした時に思い返して、決してラクではない面倒なほうを選び直したということが何度かありました。

久保
自分の中で大切にしているモットーなどはありますか。

德永
モットーとまで言えるかどうか、あまり自信がないところもあるんですけども、幸いなことにものすごく肯定感が強い人間なので、辛いことがあっても一晩寝ればなんとかなるというタイプですし、どんなに苦しい局面でも絶対上手くいくと思っています。

久保
それは小さい頃からのご両親の影響だったりするのでしょうか。

德永
これは高校に入った頃の話で、周りの友達たちを見た時に、なんかものすごい自信に溢れていて、世の中にこんなに自信を持って生きている人がいるんだというのがわかってとても衝撃を受けました。で、なぜこの人たちは自信を持って上手くいくと思ってんのかなって、仲がいい友人に聞いたことがあったんです。その友人は、「上手くいくと思ってやらなくちゃしょうがないじゃん」って言ってくれて、ああそんなもんなんだと思って、そこでパッと開けた気がしました。振り返ってみると、親からもくよくよしたって仕方ないし、最後はなんとかなるよって、言われていた気もするなって思いますので、両方な気がしますね。友人と親のおかげで楽天的に生きて来られました。

画像: 愛読書や影響を受けた本

これまでの歩み、これからの社会

久保
この30年を振り返り、この会社で仕事をしてきて良かったと思えるのはどんなことですか。

德永
素晴らしいお客さまに巡り合うことができたのが、まず1つ目です。ビジネスパーソンとしても、人間としても尊敬できるようなお客さまが何人もいらっしゃって、その方々を見て、自分も社会人としていっぱい勉強させてもらったところがあります。それから、上司や同僚に大変恵まれました。今までこういうふうな上司になりたいと思うような方が何人かいて、そういう素晴らしい方に直接指導してもらいました。こうした方々は私の宝です。手前味噌になりますが、人財の宝庫というのも日立の特徴だと思っています。

久保
これから日立はどこに向かっていくのでしょうか。德永さん自身は、どんな社会、どんな未来を作っていきたいですか。

德永
非常に単純な話になってしまうと思いますし、その人その人によって捉え方が違うんだと思うんですけど、幸せを感じることができるような、そういう世の中になればいいなと思います。

そして、日立を今まで以上に世界の人々が幸せに暮らしていくために必要とされる会社にしていかなければなりません。そのためには、社会や人々が抱える課題をきちんと解決できるだけの能力を持つ会社になりたいですし、そうした取り組みを通じて、日立にいる人たちが幸せを実感できる会社にできたら、自分はこの会社にいて本当に良かったと思えるでしょうね。日立で自分が仕事をすることによって、少しでも世の中に協調の輪が広がり、さまざまな格差が減り、困っている人も減り、みんなが幸せに一歩近づくことができる世の中を実現できたら、すごく幸せなことだろうと思います。

久保
お話を伺っていて、こんな言い方をしては、失礼かもしれませんが、日立が大好きになりました。今日、德永さんのお考えやお人柄に触れることできて、この先、楽しいことやみんなの幸せが待ってくれていそうな明るい気持ちになれました。ありがとうございます。

德永
こちらこそ楽しくお話をさせていただき、ありがとうございました。

画像1: 〈インタビュー〉デジタルソリューションで社会に貢献したい
【第5回】人々の幸せを支える会社に

久保純子(くぼ・じゅんこ)

1972年、東京都生まれ。小学校時代をイギリス、高校時代をアメリカで過ごす。大学卒業後、アナウンサーとしてNHKに入局し、ニュース番組やスポーツ番組のキャスター、ナレーション、インタビューなど幅広く活躍。2004年からフリーアナウンサーとして、テレビやラジオに出演する傍ら、執筆活動や絵本の翻訳も手がける。日本ユネスコ協会連盟の世界寺子屋運動広報特使「まなびゲーター」を務め、2014年にはモンテッソーリ教育の資格を取得するなど、「子ども」と「言葉」、そして「教育」をキーワードに活動の場を広げている。現在は、家族とともにニューヨーク在住。

画像2: 〈インタビュー〉デジタルソリューションで社会に貢献したい
【第5回】人々の幸せを支える会社に

德永俊昭(とくなが・としあき)

1990年、株式会社 日立製作所入社、 2021年4月より、日立製作所 代表執行役 執行役副社長 社長補佐(システム&サービス事業、ディフェンス事業担当)、システム&サービスビジネス統括責任者兼システム&サービスビジネス統括本部長兼社会イノベーション事業統括責任者/日立グローバルデジタルホールディングス社取締役会長兼CEO。
2021年4月からは米国駐在から帰国し、国内拠点からグローバルビジネスを指揮している。

シリーズ紹介

[特集]ポストコロナの社会とビジネス

破壊の先にある創造へ――。「グレート・リセット」後に求められる社会とビジネスのあり方を、各界の有識者の言葉から探ります。
※グレート・リセット:2021年夏に開催される予定の次回世界経済フォーラム年次総会、通称ダボス会議におけるテーマ

楠木建の「EFOビジネスレビュー」

一橋ビジネススクールの楠木教授の思考の一端を、切れ味鋭い論理を、毎週月曜日に配信。

山口周の「経営の足元を築くリベラルアーツ」

山口周氏をナビゲーターに迎え、経営者・リーダーが、自身の価値基準を持つための「リベラルアーツ」について考える。

八尋俊英の「創造者たち」~次世代ビジネスへの視点~

八尋俊英日立コンサルティング社長を導き手とし、新世代のイノベーターをゲストに社会課題の解決策や新たな社会価値のつくり方を探る。

新たな企業経営のかたち

SDGs、人工知能(AI)、デザイン思考、ブロックチェーンなど、経営戦略に関わるホットイシューについて、斯界の第一人者に聞く。

Key Leader's Voice

各界のビジネスリーダーに未来を創造する戦略を聞く。

経営戦略としての「働き方改革」

今後企業が持続的に成長していくために経営戦略として取り組むべき「働き方改革」。その本質に迫る。

ニューリーダーが開拓する新しい未来

新たな価値創造に挑む気鋭のニューリーダーに、その原動力と開拓する新しい未来を聞く。

日本発の経営戦略「J-CSV」の可能性

日本的経営の良さを活かしながら利益を生み出す「J-CSV」。その先進的な取り組みに迫る。

ベンチマーク・ニッポン

日本を元気にするイノベーターの、ビジョンと取り組みに迫る。

デジタル時代のマーケティング戦略

マーケティングにおける「デジタルシフト」を、いかに進めるべきか、第一人者の声や企業事例を紹介する。

私の仕事術

私たちの仕事や働き方の発想を変える、膨らませるヒントに満ちた偉才たちの仕事術を学ぶ。

EFO Salon

さまざまな分野で活躍する方からビジネスや生活における新しい気づきや価値を見出すための話を聞く。

禅のこころ

全生庵七世 平井正修住職に、こころを調え、自己と向き合う『禅のこころ』について話を聞く。

岩倉使節団が遺したもの—日本近代化への懸け橋

明治期に始まる産業振興と文明開化、日本社会の近代化に多大な影響を及ぼした岩倉使節団。産業史的な観点から、いま一度この偉業を見つめ直す。

This article is a sponsored article by
''.