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株式会社 日立製作所 執行役副社長 德永俊昭/インタビュアー:久保純子氏(フリーアナウンサー)
国や地域・人種を超えた繋がり、女性の登用など、ダイバーシティへの取り組みは今日の社会において重要課題の一つです。とくにコロナ禍は社会に大きな分断を生んだとも言われます。コロナ後の社会において、この課題にどのように向き合えば光明が見えるのか。日立が「分断から協調へ」という社会に貢献できるかどうかは、社員一人ひとりの考え方と実行力にかかってくると德永さんは語ってくれました。

※2021年4月1日に德永の役職を変更しています。

「第1回:父親の導き」はこちら>
「第2回:日立のデジタルソリューションの可能性」はこちら>
「第3回:シリコンバレーで日立のDNAは受け入れられるのか」はこちら>

「女性が生きづらい! 德ちゃん、何とかして」

久保
御社は、人財の宝庫で、ダイバーシティのお話も出ました。アメリカでは昨年、ブラック・ライブズ・マターの運動が起きました。また女性の活躍に関しては、アメリカの女性管理職の比率が一昨年のデータで39%に対して、日本はまだ12%です。そうした人種の違いに起因する問題や、女性活躍の機会など、ダイバーシティに関わる社会課題についてはどのように捉えていらっしゃいますか。

德永
いろんな人種や国の人たちがいるということは、イノベーションを創出するうえでとても重要です。日立ヴァンタラ社の現CEOはスリランカ出身ですが、アジア系の社員も多く、出身地で見るとかなり多様化してきています。しかし、女性の登用はまだまだですね。日本側でも、指標を定めて、女性のリーダーを増やす取り組みをしていますが、まだ途上にあります。日立ヴァンタラ社も、確かにシニアディレクターやディレクターには女性がたくさんいますが、さらに上の経営会議メンバーには、ほとんどいないのが現状で、今後は意識して女性のメンバーを増やしていかないといけないと思っています。

これに関連した話ですが、コロナ禍になって、たまたま高校時代の友人からFacebookで連絡があり、アメリカに高校の同級生が6人いることがわかってオンラインで懇親会をやろうということになりました。その中の女性3人から「日本は特にそうだけど、この世の中は女性にとっては生きづらい」ということを切々と言われたんですね。「日立みたいな古そうに見える会社が変わらないと、この状況は変わらないから、德ちゃん、なんとかしてよ」と、飲むたびにガーッと言われています。

久保
その方達のお気持ちはよくわかります。それで、どうなされたのでしょうか?

德永
真剣に捉えるべきだと。これはやはり日本から変えるしかないと考え、私が日本側で管掌している組織で、女性だけ集まってもらって、タウンホールミーティングを実施しました。300人くらいが集まり、事前に自分のキャリアについてどう思うかを尋ねたところ、「今の男性の働き方を見ていると到底自分にはできないと思う」とか、あるいは「男性の管理職を見ていても魅力的に思えない」と答える女性社員が山ほどいて、挑戦する前に諦めてしまう人が多いことがわかりました。それで参加者に「現在の働き方がすべてではなく、皆さんにはキャリアを追い求めるチャンスがありますし、追い求めてくれたら私たちがサポートします」と伝えたところ、かなりの反響をいただきました。今後も女性が働きやすい会社へと改善を続けていきます。「德ちゃん、なんとかしろ」と言ってくれた彼女たちには本当に感謝しています。

久保
皆さん、やる気はありますものね。ただ、目標とする人、「ロールモデル」がいないというのが今の日本の現状、課題かもしれません。しなやかな働き方ができる世の中になることを願います。ちょっと衝撃でしたが、「德ちゃん」というのはなかなか面白いですね。高校の同級生ならではの親しみが込められています。

德永
この歳になって「德ちゃんなんとかして」、と言われることはなかなかないので、結構な衝撃でしたけれども。

ポストコロナは分断から協調へ

久保
少し視点を変えて、いまの世の中は、新型コロナウイルスの出現によって一気に様変わりしてしまった感じがしますが、今回の特集の「ポストコロナの社会とビジネス」について、これからどのように取り組んでいけば光明が見えてくるのでしょうか。

德永
そうですね。久保さんもアメリカに暮らしていらっしゃるのでよくわかると思いますが、世界が分断されつつあるということをひしひしと感じます。今、世界があるいは社会が抱えている課題というのは、国や企業の単位を越えて協調していかない限り、解決が難しくなっています。企業が自分達の事業を持続可能なものにしていくためには、それらの世界が抱えている、あるいは社会が直面する課題とどれだけ正面から向き合って解決しようと努力を続けることができるかというところに尽きると思います。

日立は「社会に貢献する」という理念のもとに、世の中の課題を解決するために、足並みを揃えて進めるチャンスなんだと思っています。日本は元々「三方よし」とか「利他」などがベースにある社会だと思うので、協調を加速するっていう、素地はあると思っています。これまでは世界の様子を伺って、上手いことついていけばいいやって思っていたところがあろうかと思うんですけれども、ここに至っては協調するっていうことに対して、自然体で入れる国民性を持った国だからこそ、その活動をリードできる部分があるんじゃないかなって思います。

画像: ポストコロナは分断から協調へ

久保
そのために初めの一歩として德永さんは何をされますか。

德永
はい、これも繰り返しになりますが、日立ヴァンタラ社のアメリカ人たちが強く認識している日立の DNA 、すなわち「社会に貢献する」という企業理念を日本にいる日立の社員も含めて、再度きっちり認識を共有したいですね。社会に貢献するというDNAを持った会社だからこそ、Lumadaや最新のテクノロジー・製品を駆使し、社会課題を解決することが我々のミッションだというふうに腹落ちできるかどうかが非常に重要なポイントだと思います。

画像1: 〈インタビュー〉デジタルソリューションで社会に貢献したい
【第4回】“協調”が未来を拓く

久保純子(くぼ・じゅんこ)

1972年、東京都生まれ。小学校時代をイギリス、高校時代をアメリカで過ごす。大学卒業後、アナウンサーとしてNHKに入局し、ニュース番組やスポーツ番組のキャスター、ナレーション、インタビューなど幅広く活躍。2004年からフリーアナウンサーとして、テレビやラジオに出演する傍ら、執筆活動や絵本の翻訳も手がける。日本ユネスコ協会連盟の世界寺子屋運動広報特使「まなびゲーター」を務め、2014年にはモンテッソーリ教育の資格を取得するなど、「子ども」と「言葉」、そして「教育」をキーワードに活動の場を広げている。現在は、家族とともにニューヨーク在住。

画像2: 〈インタビュー〉デジタルソリューションで社会に貢献したい
【第4回】“協調”が未来を拓く

德永俊昭(とくなが・としあき)

1990年、株式会社 日立製作所入社、 2021年4月より、日立製作所 代表執行役 執行役副社長 社長補佐(システム&サービス事業、ディフェンス事業担当)、システム&サービスビジネス統括責任者兼システム&サービスビジネス統括本部長兼社会イノベーション事業統括責任者/日立グローバルデジタルホールディングス社取締役会長兼CEO。
2021年4月からは米国駐在から帰国し、国内拠点からグローバルビジネスを指揮している。

「第5回:人々の幸せを支える会社に」はこちら>

シリーズ紹介

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一橋ビジネススクール一橋ビジネススクールPDS寄付講座特任教授の楠木建氏の思考の一端を、切れ味鋭い論理を、毎週月曜日に配信。

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山口周氏をナビゲーターに迎え、経営者・リーダーが、自身の価値基準を持つための「リベラルアーツ」について考える。

協創の森から

社会課題の解決に向けたビジョンの共有を図る研究開発拠点『協創の森』。ここから発信される対話に耳を傾けてください。

新たな企業経営のかたち

パーパス、CSV、ESG、カスタマーサクセス、M&A、ブロックチェーン、アジャイルなど、経営戦略のキーワードをテーマに取り上げ、第一人者に話を聞く。

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各界のビジネスリーダーに未来を創造する戦略を聞く。

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今後企業が持続的に成長していくために経営戦略として取り組むべき「働き方改革」。その本質に迫る。

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日本的経営の良さを活かしながら利益を生み出す「J-CSV」。その先進的な取り組みに迫る。

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日本を元気にするイノベーターの、ビジョンと取り組みに迫る。

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マーケティングにおける「デジタルシフト」を、いかに進めるべきか、第一人者の声や企業事例を紹介する。

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私たちの仕事や働き方の発想を変える、膨らませるヒントに満ちた偉才たちの仕事術を学ぶ。

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明治期に始まる産業振興と文明開化、日本社会の近代化に多大な影響を及ぼした岩倉使節団。産業史的な観点から、いま一度この偉業を見つめ直す。

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新世代のイノベーターをゲストに社会課題の解決策や新たな社会価値のつくり方を探る。

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