※本記事は、2020年7月8日時点で書かれた内容となっています。

友達の定義というのは人それぞれですが、ここでは「仕事のような必然性や理由がないにもかかわらず、私的に会いたくなり、実際にときどき会う人」としておきます。連絡を取り合うだけではなく、実際に会ってゆっくりと話をするというリアルな関係に限定すると、僕の場合その数は相当少ないと思います。理由は、自分の性格や生活が極めて非活動的だからです。あまり社交的な人間ではない。昨日今日のことではなく、小学生の頃からずっと非社交的な人間であることは、ここでも何度かお話しました。

僕のような性格の人間から見ると、今の世の中はちょっとつながり過ぎに見えます。昔と比べるとSNSなどで友達の意味がだいぶ変わってきている。「友達申請」とかやるのですが、僕の考える友達は「申請」してなるものではありません。つながっている人の数が広がった分、関係が薄まってきている。しょせん体は一つ。時間は一日24時間しかありません。僕はあまりそういうつながりを必要としていません。

Facebookも一応登録はしているのですが、ほとんどまったく使っていない。ただしFacebookで「友達申請」をいただくと、よほどのことがない限り承認しています。よほどのこととは何かというと、もう見た瞬間に邪悪な空気を満載している、特に若い女性の写真の未知の人物、さすがにこれは受け入れない。それでも大体承認をしている。明らかに矛盾しているんですが、これは僕に煩悩があるからです。

それは何かと言えば、ここでも隙を見ては話題に出してきた僕の所属しているロックバンド“Bluedogs”であります。ライブの集客手段として、Facebookで幅広くつながっておきたい。告知をしたい。あわよくばライブにお越しいただけるのではないか、という極めて利己的な理由(だけ)でFacebookを使っています。バンドのライブさえなければ、一刻も早くFacebookを退会したい。でも、どうしても欲を捨てきれず退会できない。もっとも、しきりに告知をしても実際にライブにお越しいただける方は毎回5人ぐらい。それでもFacebookを捨てきれない。まさに「煩悩のFacebook」。

Twitterも長年やっていますが、誰もフォローしていません。自分のためのメモとして使っています。紙の媒体に書いたものは、ファイルしています。ところが最近はデジタルメディアでも書くことが多い(このEFOの連載がそうです)。そのうちどこに何を書いたのか分からなくなってしまいます。で、書いたものがデジタルメディアに出ると、Twitterで共有しておく。こうしておくとより多くの方々にお読みいただけるという色気もあります。もちろん“Bluedogs”のライブの告知もします。

誰もフォローしていなくても、親切なことにTwitterは「話題のツイート」を流してくださいます。そこに「ネットで集客しようとする人は、基本的に実力不足で仕事がない人。実力がある人は、何もしなくてもさばき切れない量の仕事が舞い込んでくるから、ネットを活用するメリットがない」というツイートがありました。その通りです。“Bluedogs”の実力不足を正確に言い当てています。

何を言いたいかというと、最近のデジタル友達というのはその程度のつながりで、僕の友達の定義には当てはまらないということです。

非社交的な僕はパーティーが苦手です。そこで展開される「パーティートーク」が苦手なんです。すなわち、意味のないことだけを延々と誰とでも話す。これが実に上手な人がいるのですが、僕は人と話をするのであれば、いきなり議論をしたい。その人の考えを知りたい。自分の意見や自分の考えを聞いていただいてその人がどう反応するのか、それを知りたいんです。でもこれをパーティーでやると、相手にも周りにも非常に迷惑な話。ですから極力行かないようにしています。

ただ、たまにパーティーに出かけてみると、それはそれでイイところがある。会場を出て一人に戻った時の孤独感、これはわりとスキ。パーティーの喧騒と、一人になった時のコントラストがイイ。ターボがかかった孤独感に浸っていると、ときどき多幸感にシビれます。天地真理は「一人じゃないってー、素敵なことねー」と言うのですが、「一人でいるってー、素敵なことねー」と唄いたくなるほどです。ほとんど変態じゃないかと自分でも思うのですが、パーティーの良いところは、僕がどれだけ一人が好きなのかを再発見させてくれるというところです。

実際にアンディ・ウォーホルの評伝で、『パーティーのあとの孤独』という本があるんです。アンディ・ウォーホルというのは、極度のパーティーマニアで、もうしょっちゅう自分でパーティーを主催して、当時のニューヨークのセレブリティーを集めて盛り上がる。ただ、その評伝のタイトルにあるように、実はアンディ・ウォーホルが一番好きなのはパーティーが終わったあとの孤独だったのではないか。僕は、そこに親近感を覚えます。

パーティートークは苦手でも、人間に対する興味はすごくあります。たまに出席するパーティーでは、常に人の行動を観察しています。お互いに深々とお辞儀をしている人達を見て、「どういう利害があるのかな」とか、そこで繰り広げられる人間模様を勝手に想像しては楽しんでいます。以前出席した大きなパーティーでは、非常に偉い経営者の方が集まっていまして、それぞれ取り巻きに囲まれているわけです。取り巻いている人たちと取り巻かれている人との関係性や、その取り巻きの中に見え隠れする上下関係を見ていろいろと想像する。そのうちに実写版の『仁義なき戦い』のように見えてきます。ま、僕の手前勝手な妄想なのですが、こういう貴重な情景に出会えるのはパーティーのイイところです。パーティーには出席しないで、パーティー会場の出口で人の行動を観察していたいぐらい。今度やってみようかな。

僕の場合、人間に関心があるということと、実際に人と会って付き合いを深めるということは、別のことなのだと思います。その点で僕の好きな読書は、その人と深く会えるのに実際に会わなくてもいい。面白くなければ、すぐに読むのをやめればいい。これは最高ですよね。人との交際は、そうはいきません。ちょっと話しをして、面白くないので帰りますというのはあまりに失礼な話です。

画像: 友達-その1
非社交家の友達。

楠木 建

一橋ビジネススクール教授
1964年東京生まれ。幼少期を南アフリカで過ごす。一橋大学大学院商学研究科博士課程修了(1992)。一橋大学商学部専任講師、一橋大学商学部助教授、一橋大学イノベーション研究センター助教授、ボッコーニ大学経営大学院(イタリア・ミラノ)客員教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授、2010年より現職。
著書に『室内生活 スローで過剰な読書論』(2019、晶文社)、『すべては「好き嫌い」から始まる』(2019、文藝春秋)、『「好き嫌い」と才能』(2016、東洋経済新報社)、『好きなようにしてください:たった一つの「仕事」の原則』(2016、ダイヤモンド社)、『「好き嫌い」と経営』(2014、東洋経済新報社)、『戦略読書日記』(2013、プレジデント社)、『経営センスの論理』(2013、新潮新書)、『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』(2010、東洋経済新報社)などがある。

「第2回:友達の反利害性。」はこちら>

楠木教授からのお知らせ

思うところありまして、僕の考えや意見を読者の方々に直接お伝えするクローズドな場、「楠木建の頭の中」を開設いたしました。仕事や生活の中で経験したこと・見聞きしたことから考えたことごとを配信し、読者の方々ともやり取りするコミュニティです。
この10年ほどTwitterを使ってきて、以下の3点について不便を感じていました。

・140字しか書けない
・オープンな場なので、仕事や生活経験の具体的な中身については書きにくい
・考えごとや主張をツイートすると、不特定多数の人から筋違いの攻撃を受ける

「楠木建の頭の中」は僕のTwitterの拡張版というか裏バージョンです。もう少し長く書ける「拡張版」があれば1の問題は解決しますし、クローズドな場に限定すれば2と3の不都合を気にせずに話ができます。加えて、この場であればお読みいただく方々に質問やコメントをいただき、やりとりするのも容易になります。
不定期ですが、メンバーの方々と直接話をする機会も持ちたいと思います。
ビジネスや経営に限らず、人間の世の中について考えることに興味関心をお持ちの方々のご参加をお待ちしております。DMM社のプラットフォーム(月額500円)を使っています。

お申し込みはこちらまで
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ご参加をお待ちしております。

楠木健の頭の中

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[特集]ポストコロナの社会とビジネス

破壊の先にある創造へ――。「グレート・リセット」後に求められる社会とビジネスのあり方を、各界の有識者の言葉から探ります。
※グレート・リセット:2021年夏に開催される予定の次回世界経済フォーラム年次総会、通称ダボス会議におけるテーマ

楠木建の「EFOビジネスレビュー」

一橋ビジネススクールの楠木教授の思考の一端を、切れ味鋭い論理を、毎週月曜日に配信。

山口周の「経営の足元を築くリベラルアーツ」

山口周氏をナビゲーターに迎え、経営者・リーダーが、自身の価値基準を持つための「リベラルアーツ」について考える。

八尋俊英の「創造者たち」~次世代ビジネスへの視点~

八尋俊英日立コンサルティング社長を導き手とし、新世代のイノベーターをゲストに社会課題の解決策や新たな社会価値のつくり方を探る。

新たな企業経営のかたち

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経営戦略としての「働き方改革」

今後企業が持続的に成長していくために経営戦略として取り組むべき「働き方改革」。その本質に迫る。

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