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女優、歌手 ナタリー・エモンズ氏/株式会社日立製作所 理事 システム&サービスビジネス統括 本部CSO 松原康範
人間にとって大切なことは、コネクションとコミュニケーションだと語るナタリー・エモンズさん。
人がお互いに認め合い、それを言葉にして挨拶を交わすことや、人の「心」を結ぶテクノロジーの重要性について伺いました。

「第1回:日本文化への思い」はこちら>
「第2回:異文化コミュニケーションの肝」はこちら>
「第3回:アーティストのまなざしで日米の架け橋に」はこちら>

「お疲れさま」はお互いを認め合う挨拶

松原
日本でいろいろと仕事をされてきて、ここがアメリカとは違うなと感じたところはありますか。

ナタリー
日本では、お互いを認め合いますね。お客さんの前で自分の歌を歌ったり、演技をしたりする時に、それぞれのアーティストは自分のパフォーマンスに自信を持つことが大切です。同じステージに立つ人たちが、お互いを認め合うというのは、それぞれ自信が持てますから、とても良いことだと思いました。最初に日本で働いたUSJでも、海外から大勢の出演者が来ていました。その人たちも日本の人たちから「上手ですね」とか「きれいね」と褒めてもらうことで、自信を持つことができました。アメリカでは、どちらかというと、出演者同士は競争相手という雰囲気があります。ですから、自分より上手な人がいたら、ちょっと敬遠したりします。日本では、みんなが一緒になって一つのステージを成功させることが大事と考えます。そこが、とても良いと感じました。

松原
なるほど。ただ、日本では、褒められても、すぐに「そうですか、嬉しいです」という反応はしないんですね。「いや、それほどでも」と、一応謙遜してみせます。その辺りも、海外の人からみると分かりにくいのではありませんか。

ナタリー
おっしゃる通り、日本の人はよく謙遜されますね。私も、褒められた時にどういう反応をしていいか考えることがあります。褒められてすぐに「そうそう、すごいでしょ」というのもおかしいですし。いろいろ考えてみて「ありがとうございます」と素直に受け留めるのが良いかなと思いました。

松原
「ありがとう」というのは良いですね。

ナタリー
私が日本で仕事をして最初に印象的だったのは、仕事が終わると「お疲れさま」と声を掛け合うことでした。それは素晴らしい習慣で、とても尊敬しています。最初に、撮影の現場などで、出演者だけでなくそこにいるスタッフ全員が「お疲れさま」と声を掛け合うのを見た時、その意味がよく分かりませんでした。でも、よく考えてみると、声を掛け合うのは、そこにいた人全員が、その仕事に参加して、それで一日の仕事がうまくいったということを認め合う行為なんですね。お互いに認め合うこと、それは先ほどの全員で一つのステージを成功させることを大切にする、日本の素晴らしい考え方が背景にあるように思います。ですから、いまでは私もスタッフ全員に「お疲れさま」と声をかけるようにしています。

松原
それは良いことですね。みんなに喜ばれるでしょう。私たち日立でも、いま挨拶運動をしています。これは、「おはよう」「ありがとう」「失礼します」「すみません」といった基本的な挨拶を、全員でしっかりしようという取り組みです。口に出して挨拶をすることは、ナタリーさんがおっしゃったように、そこにいる人たちがお互いを認め合う行為なんですね。お互いに認め合うことは、仕事を一緒に成し遂げていく上でたいへん重要です。

最後になりましたが、日立に対して、こういうことを実現してほしいというようなご注文はありますか。

画像: 「お疲れさま」はお互いを認め合う挨拶

これから大切になるのは人の心を結ぶテクノロジー

ナタリー
私は、人間にとって大切なことは、コネクションとコミュニケーションだと考えています。いまは、SNSやいろいろなアプリを使って、遠くにいる人とも気軽に会話ができて、絆を結ぶことができるようになりました。もっとITなどのテクノロジーが発展して、言葉だけではなくて、心そのものが伝えられるようになると、さらに深い結びつきが生まれると思います。アメリカでは、テクノロジーがこれ以上発展していくと、人間にとって良くないのではと心配している人もたくさんいます。ですから、人の心を結ぶようなテクノロジーが、これからとても大切になると思います。

松原
日本では、まだそれほど深刻に受け止めていませんが、AIが人の能力を超える「シンギュラリティ」みたいなことも、世界では真剣に議論されていますね。ナタリーさんがおっしゃるように、テクノロジーの発展には、「心」の問題が重要になってくるかもしれません。

ナタリー
それから、環境問題にも関心があります。温室効果ガスやプラスチック廃棄物などの課題は、いま世界中でみんなが関心を持って取り組んでいるでしょう。

松原
おっしゃる通りです。日本でもSDGsをはじめとしたサステナビリティに対する取り組みがたいへん重視されるようになってきました。日立では、ITやシステム構築などの技術を生かして、再生エネルギー利用や省エネルギーを実現するマネジメントシステムをつくるなど、環境分野でもいろいろな取り組みを進めています。まだ、解決するまで難しい課題もありますが、ナタリーさんの期待に応えられるよう、私たちも努力します。

ナタリー
それから、私は飛行機をよく利用するのですが、電気自動車みたいに飛行機も電気の力で飛べるようになると良いですね。私は機械のことはよく分からないのですが…。

松原
なるほど、電気自動車や電車など、陸上の乗り物は電動化が進んでいますが、飛行機はまだそこまで進んでいません。日立では、電車の車両や鉄道のシステムを、日本国内だけでなく、英国などでも手掛けています。そういう技術の蓄積がありますが、飛行機を電気で飛ばそうという発想は、まだ誰も考えたことがないかもしれません。誰もやっていないことにも、チャレンジしていくことが大切ですね。本日は、いろいろと新鮮な視点のお話を伺うことができて、参考になりました。お忙しい中、ありがとうございました。

画像: これから大切になるのは人の心を結ぶテクノロジー
画像1: 心から認め合えば文化の違いを超えた絆が生まれる 
【第4回】大切なのはコネクションとコミュニケーション

ナタリー・エモンズ

アメリカ・カリフォルニア州サンディエゴ出身。2010~2013年 ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでシンガー、ダンサー、MCとして活動、1日4,000人以上が鑑賞に訪れるショー『ユニバーサル・レインボー・サーカス』ではリングマスター役(主役)を演じ、数々の賞を受賞。その後、ジブリ映画のテーマ曲をカバーした動画がYahoo! JAPANに掲載されるなど話題となる。NHKワールドの歌番組"We Love Japanese Songs"では司会も務めた。現在、毎週日曜放映の「じょんのび日本遺産」(TBS)ほか、多数のテレビCM、TV番組に出演。シンガーソングライターとしても活動中。

画像2: 心から認め合えば文化の違いを超えた絆が生まれる 
【第4回】大切なのはコネクションとコミュニケーション

松原康範(まつばら・やすのり)

1984年 株式会社 日立製作所入社、2005年 営業企画本部 企画部 担当部長、2009年 情報・通信グループ 金融システム営業統括本部 ビジネス企画本部長、2012年 営業統括本部 営業企画本部長、2016年 ICT事業統括本部 経営戦略統括本部長、2017年 システム&サービスビジネス統括本部 経営戦略統括本部長、2018年 理事/システム&サービスビジネス統括本部CSO

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