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「Smart Eye Camera(SEC)」によって、全世界の失明人口を半分にするというミッションを掲げるOUI Inc.の清水映輔CEO。彼はなぜ、医師になったのか?その理由は内科医として93歳まで地域医療に貢献した母方の祖父の影響が大きいという。医師を志し、起業して壮大な夢を抱くまでの道のりについて伺った。

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「第2回:医師だった祖父の診察風景が原体験」
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生涯現役医師だった祖父の背中を見て育つ

全世界で年間4,400万人に上るという「失明」を半分に減らすというミッションを掲げる医療機器ベンチャーのOUI Inc.の清水映輔CEO。経営者であり、現役の眼科医であり、大学の講師として眼科学教室で学生を導く役目も負っている。さらには、高校時代から続けているというアイスホッケーのゴールキーパーとしても現役なのだという。そのバイタリティの源泉はどこにあるのだろうか?

「医師だった祖父の影響は大きいです。母方なのですが、内科医として1950年に横浜市保土ヶ谷区で開業して、2012年に93歳で亡くなるまで現役でした。60年以上も毎日白衣を着て地域医療に貢献したのです。『おじいちゃんに学べ』ではありませんが、祖父が診療している場に幾度となく母が連れて行ってくれました。その姿を見て『医者というのはすごい職業だな』と思いました。その後の自分の人生にとても役に立っています。いま、母は私の2人の息子の祖母として、私が診療所で診察する姿を強制的に見せるようなことをしています(笑)」

清水さんの母方の家系をたどると、祖父の2代前まではもともと肥前・鍋島藩の藩士で、脱藩して医師を志したのだという。そんな血を受け継いだ祖父からはさらに、医師としての覚悟も学んだそうだ。

「言葉にするのは難しいのですが、私が幼い頃から大学生になるまで、不調な時は必ず助けてくれる頼もしい存在でした。地域の患者さんに対しても同様だったのだと思います。医師はその地で開業したからには、休まず、旅行にも出かけずに患者さんを見続けなくてはなりません。医療を通じた地域貢献については、私自身が大切にしていますし、ライフワークとしての医師を誇りに思っています」

起業して上場まで導いた父から受けた影響

両親から受けた影響についてはどのように考えているのだろうか?

「母は主婦でしたが、説明したように祖父の背中をいつも見せてくれました。父は大手ITベンダーで長く営業をやっていました。その後、独立してITコンサルの会社を上場まで導いて、いまも現役で、精力的に働いています。私がスタートアップを始めるまではビジネスマンの父と、医師である自分の接点はほとんどありませんでしたが、いまのビジネスでは、父の人脈をフルに活用させてもらっています。経営者視点や、外国との交渉という部分も学ぶところは大きかったです。

そんな父から口を酸っぱくして言われたのは『英語を使えるようになれ』ということでした。本人はまったく喋れないままアメリカに赴任して、相当苦労をしたようです。私も一緒にアメリカに行きましたが、帰国後も週3回英語の塾に通っていました。小学生だったにも関わらず、同級生に英語を教えていましたね。当時は小学校で英語教育は始まっていませんでしたから、その意味では異色だったかもしれません」

英語力を幼い頃から身につけていた清水さんだが、そのブラッシュアップも怠ることはない。

「高校生の頃からアイスホッケーをしていて、現在は東京カナディアンズというアイスホッケーチームに所属しています。国際大会にも参加しますし、アメリカ人やアジア人も多くメンバーになっていますが、チームのマネジメントにも関わらせていただいています。毎日英語を使う環境にいるので、英語力が衰えることはありません」

画像: アイスホッケーチームのGKとしても現役でプレーする清水さん<写真左端>。

アイスホッケーチームのGKとしても現役でプレーする清水さん<写真左端>。

体育会系飲食店のアルバイトで教わったもの

体力には自信のある清水さんにさらなる影響を与えたのは、大学時代に経験した飲食業でのアルバイトだった。

「店名を出せば、誰でも知っているような体育会系の飲食店で働いていました。そこはアルバイトの人間が泣きながら『働かせてください』と頭を下げる姿が見られるようなユニークな環境でした。その時に先輩から教えてもらい、今でも活きている教訓があります。『お客様は楽しみにお店にやって来るのだから、ウェイターやバーテンダーはそれをアシストしなければいけないよ』というものでした。お客様のニーズを汲み取って、滞在する時間を楽しんでもらうために知恵を絞ることを学びました。

飲食業においてはお客様と店員という関係ですが、じっさいに医師として働き始めたら、患者さんと医師の関係も同じだなと腑に落ちたのです。患者さんは病院に『治りに来ている』わけで、それをアシストするのが医師です。飲食と病院を同じ客商売のように捉えることに議論の余地があると思いますが、大学病院の外来では1日に100人もの患者さんと向き合います。短い時間で『なぜ受診しに来たのか?』という患者さんの切実な思いを即座に把握して、短い時間で的確な返答することは医師として重要な能力だと思うのです。

さらに、海外で診療したり、SECの普及活動をしたりする機会も多いので、短期間で患者さんや現地の医師たちのニーズを探し当てることにも役立っていると思います」

と、清水さんは笑顔で教えてくれた。(第3回へつづく

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画像: スマホを使った眼科診療デバイスで全世界の失明者を半分に
【第2回】医師だった祖父の診察風景が原体験

清水映輔(しみず えいすけ)
1987年神奈川県生まれ。慶應義塾大学医学部卒。眼科専門医・医学博士。ドライアイや眼科AIが専門。医療法人慶眼会 理事長。慶應義塾大学医学部眼科学教室特任講師。自己免疫疾患関連の重症ドライアイに関して多数の臨床研究や基礎研究の実績を持つ。2016年にOUI Inc.を起業。2024年12月「Forttuna Global Excellence Awards 2024」において、「Healthcare Leader of the Year - Japan」を受賞。2023年日本弱視斜視学会国内学会若手支援プログラム賞、令和5年度全国発明表彰 未来創造発明賞、2022年第76回日本臨床眼科学会学術展示優秀賞・第5回ジャパンSDGsアワードSDGs推進副本部長(外務大臣)賞、2020年 国際失明予防協会 The Eye Health Heroes award、2020年 日本眼科アレルギー学会優秀賞・第十四回日本シェーグレン症候群学会奨励賞など、数々の実績を持つ。

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