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※本記事は、2020年9月3日時点で書かれた内容となっています。

『逆・タイムマシン経営論』は、杉浦泰(ゆたか)さんという人との共著です。彼との出会いが、この本を作るきっかけになりました。今回は、その背景についてお話したいと思います。

僕は30年ほど今の仕事をしていますが、過去記事のアーカイブから本質的な洞察が得られるということは、仕事を始めてわりとすぐに気づいていました。仕事上、日常的に昔の記事や資料を読み返しているので、過去の記事から知ることのできるその時代の言説、これに格別の味わいがあるということは日常の仕事の中で繰り返し経験していました。

例えばインターネットが出てきた頃のメディアの言説を今読み返すと、ものすごいとんちんかんなことが書いてあります。もう世の中が一変するという話で、いまごろ(2020年)は通勤なんていうものは当然なくなっているし、スーパーマーケットや銀行の支店なんて世の中から一軒もなくなっている。当時はインターネットが世の中の「すべてを変える」と大真面目に議論していたわけです。

仕事上、最新の新聞や記事は普通に読むのですが、過去記事を振り返る面白さに気づいてからは、「10年寝かして読む」ために、これは後々面白いことになりそうだ……という匂いのする記事をファイルするということを基本動作にしていました。「今忙しいから時間ができたときに……」という目的で、「後で読む」ファイルに入れる人は多いと思いますが、僕の場合は「10年後に読む」ためにファイルしているわけです。このように『逆・タイムマシン経営論』の構想は、20年以上前からありました。

ところが実際に書こうとすると大変で、自分でファイルしてある過去記事もたくさんあるのですが、それ以外にも改めて膨大なアーカイブを精査して、考察するに足る材料を見つけていく必要があります。これがなかなか手に負えなくて、『逆・タイムマシン経営論』の構想は長いこと棚上げ状態になっていました。

そんな時に僕の友達、みさき投資の社長の中神さんから、非常に面白い人を発見したというメールが来たのです。それが杉浦さんでした。みさき投資に入社してきた杉浦泰(ゆたか)という人は社史研究家で、誰にも頼まれていないのに300社にものぼる企業の社史を読みまくり、自分で『The社史』というウェブサイトまで立ち上げている。中神さんが社内ミーティングで杉浦さんに、「この会社のこと知ってる?」と聞くと、100年さかのぼって事業展開の歴史や経営者の系譜をとうとうと語る、そういう人だというんです。

「これはすごい武器になるかもしれない」という連絡が中神さんから来たのが2018年の2月でした。僕は、「これはもしや……」と思いまして、早速杉浦さんにメールで連絡を取りました。すぐ返事が来て、「なぜ私が社史に興味を持っているのかを説明すると、企業の歴史がビジネスパーソンに語り継がれない現状に危機感を持っているからだ」とあり、さらに「なぜかと言うと、ビジネスに長期的な視点は必須であり、企業の歴史を学ぶことは2040年以降の日本の発展に通じると確信している」。当時、杉浦さんはまだ20代の若者です。「2040年以降の……」というところに本物の長期的視点を感じ、僕はちょっと感動したんです。

彼とは2018年4月に直接お会いしました。会った途端に「この人は普通じゃないな」とピンときまして、すぐに「前々から『逆・タイムマシン経営論』という本を書きたいと思っていたのですが、一緒にやりませんか」という話をしました。2019年の11月から実際書き始めたので、構想20年、制作8カ月ということになります。

この成り立ちからも分かるように、『逆・タイムマシン経営論』というのは長期視点の価値と意味をお伝えすることが目的でありまして、情報のハックとかスキルとか、そのための技法とかフレームワークという話ではありません。日々発信される膨大な情報と付き合うときの“思考の型”を提供したい。もっと言えば、自分の価値基準となるような教養を錬成するための知的作法の提案です。

毎日忙しさに追われていると、必ず近視眼的な思考になっていきます。そんなビジネスパーソンに、長期視点を取り戻してもらいたい。それが『逆・タイムマシン経営論』の狙いです。

画像: 逆・タイムマシン経営論-その2
異才との出会い。

楠木 建

一橋ビジネススクール教授
1964年東京生まれ。幼少期を南アフリカで過ごす。一橋大学大学院商学研究科博士課程修了(1992)。一橋大学商学部専任講師、一橋大学商学部助教授、一橋大学イノベーション研究センター助教授、ボッコーニ大学経営大学院(イタリア・ミラノ)客員教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授、2010年より現職。
著書に『室内生活 スローで過剰な読書論』(2019、晶文社)、『すべては「好き嫌い」から始まる』(2019、文藝春秋)、『「好き嫌い」と才能』(2016、東洋経済新報社)、『好きなようにしてください:たった一つの「仕事」の原則』(2016、ダイヤモンド社)、『「好き嫌い」と経営』(2014、東洋経済新報社)、『戦略読書日記』(2013、プレジデント社)、『経営センスの論理』(2013、新潮新書)、『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』(2010、東洋経済新報社)などがある。

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思うところありまして、僕の考えや意見を読者の方々に直接お伝えするクローズドな場、「楠木建の頭の中」を開設いたしました。仕事や生活の中で経験したこと・見聞きしたことから考えたことごとを配信し、読者の方々ともやり取りするコミュニティです。
この10年ほどTwitterを使ってきて、以下の3点について不便を感じていました。

・140字しか書けない
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・考えごとや主張をツイートすると、不特定多数の人から筋違いの攻撃を受ける

「楠木建の頭の中」は僕のTwitterの拡張版というか裏バージョンです。もう少し長く書ける「拡張版」があれば1の問題は解決しますし、クローズドな場に限定すれば2と3の不都合を気にせずに話ができます。加えて、この場であればお読みいただく方々に質問やコメントをいただき、やりとりするのも容易になります。
不定期ですが、メンバーの方々と直接話をする機会も持ちたいと思います。
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※グレート・リセット:2021年夏に開催される予定の次回世界経済フォーラム年次総会、通称ダボス会議におけるテーマ

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八尋俊英の「創造者たち」~次世代ビジネスへの視点~

八尋俊英日立コンサルティング社長を導き手とし、新世代のイノベーターをゲストに社会課題の解決策や新たな社会価値のつくり方を探る。

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