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左:南部良太氏(農業デザイナー)/ 右:奥田大介氏
国分寺の街を歩くと、駅ビルの飲食フロアや街の飲食店の入口に下げられた『こくベジ』のフラッグを目にすることができる。これが、国分寺の農家で採れる地場農畜産物を、国分寺の飲食店でオリジナル料理にして提供する地産地消の活動『こくベジ』のアイコンだ。およそ4年前、22店舗の飲食店からスタートした『こくベジ』は、現在約100店舗が参加し、地元に定着しつつある。生産する農家と提供する飲食店、それを食べる市民というサイクルを回していくためには、農家から野菜を集め、飲食店に届けるという集配作業が必要になる。それは、需要と供給を調整するという役割を担うことでもある。『こくベジ』のスタートから関わり、約4年間この集配を続けてきた『こくベジ』の要とも言うべき二人に、2回に渡り話を伺った。
画像: 農がある街の魅力づくり『こくベジ』
【第3回】二人の野菜集配人の誕生。

「第1回:スタートは、地産地消のご当地メニュー開発。」はこちら>
「第2回:『こくベジ』が作り出すシナジー効果」はこちら>

『こくベジ』を集配から支える二人のキーマン

『こくベジ』関係者に話を聞くと、かならず名前が挙がるのが奥田大介氏と南部良太氏だ。二人は『こくベジ』のスタート時から、野菜の集配を行い、農家と飲食店とのパイプ役となり、野菜を使ったイベントの企画立案・運営を行ってきたキーマンだ。しかし、二人は、国分寺で生まれ育ったわけではない。まずは、二人の国分寺との関わりについて話を聞いた。

画像1: 『こくベジ』を集配から支える二人のキーマン

奥田氏「私は生まれも育ちも国分寺ではないのですが、兄が住んでいたこともあり、高校時代に国分寺でアルバイトをしていたのが国分寺との最初の縁です。その後、大学を出てふらふらと自分で仕事をしていましたが、いろいろと立ち往かなくなりまして、25歳のときに国分寺の新聞販売店に就職したのを機に、ここに引っ越してきました。今年、そのアパートの10回目の契約更新をしました」

この時点で、奥田氏に聞きたいことはいくつもあったが、取材時間には限りがある。 奥田氏「3年間は必死に配達と営業をこなし、3年目に店長になってからはみんなが働きやすい環境を作ることを考えるようになりました。そのために、地元のお祭りでお神輿を担いだり、盆踊りの準備を手伝うようになったり。13年間新聞配達をしながら徐々に街との関わりが増えてきて、気が付くと国分寺どっぷりになっていました」

画像2: 『こくベジ』を集配から支える二人のキーマン

南部氏「僕は6年前、29歳の時に結婚をして子どもが生まれたときに、国分寺のアパートに引っ越してきたのが最初です。当時はグラフィックデザイナーとして制作会社に勤めていたのですが、畑に囲まれたそのアパートの周辺がどんどん宅地になっていくのを見ているうちに、何かデザインの力を農業に役立てられないかと考えるようになりました。実際に体験農園に参加した時に、その農園のロゴマークを作らせてくださいとお願いしたり。そんなとき地域通貨のイベントなどで奥田さんたちと知り合って、4年前に“農業デザイナー”という肩書でフリーランスになりました。そのタイミングで、『こくベジ』がスタートしたんです」

ご当地グルメからの軌道修正

そもそも『こくベジ』は、国からの地方創生先行交付金を使って、国分寺のご当地グルメを開発しようということから、国分寺市と(株)リクルート(当時)によってスタートした。しかし、ワークショップなどを開いても、農家や飲食店など参加者の反応は鈍く、ご当地グルメは暗礁に乗り上げた。そして、奥田氏南部氏に声がかかり、事態は軌道修正へと進み出す。

ワークショップに一人の市民として参加した南部氏は、この計画が迷走していることをすぐに感じた。 南部氏「ワークショップに知り合いの農家の方と時間の都合をつけて行ったんですが、正直このままじゃやばいと思いました。その帰り道で偶然奥田さんと会いまして、ワークショップの危機的な状況を話しました」

奥田氏「市と(株)リクルートは、ワークショップでご当地グルメが難しいと気が付いた時に、地域の人の声を聞こうということになったんだと思います。私たちは9年続いている“ぶんぶんウォーク”※というイベントを主催しているのですが、このイベントを通じて農家や飲食店とのつながりがありました。そこでやっていたのは、こちらが決めたことをお店にやってもらうというご当地グルメとは真逆で、それぞれのお店が出している国分寺野菜を使ったオリジナル料理を、こちらが企画として取り上げるというものでした。現在の『こくベジ』の仕組みですね。この方向性なら、私たちの経験やネットワークが使えるし、協力もできる。私たちと、市、(株)リクルートで国分寺の農家の課題などを話しているうちに、仕組みだけではなく、300年続いている野菜という歴史背景をしっかりブランディングする必要があるとか、具体的な画が見えてきました」

※「ぶんぶんウォーク」:国分寺の街全体で音楽やマルシェ、アートやヨガなど大小60もの企画が行われ、それをはしごしながら街をめぐるスタンプラリー。2019年で9回目の開催となる、2日間で3万人もの人が参加する国分寺最大級のイベントのひとつ。

市と(株)リクルートでの取り組みに、奥田氏南部氏といった地元の有志が本格参戦することで、『こくベジ』の向かうべき道が明確になり、全員が共有できるようになった。しかし軌道修正が決まったのが1月下旬で、予算が使えるリミットは、3月。そこからは全員で『こくベジ』のプロモーションのためのツール制作に取り掛かる。

南部氏「当時市役所は木村さん、(株)リクルートは西村さんという方が担当でしたが、この二人が熱かった。国分寺三百年野菜というコンセプトを決め、『こくベジ』のロゴを作り、それをポスターやお店のフラッグなどに展開する。プロモーション映像も、(株)リクルートが制作しました。僕と奥田さんは、ディレクターというかコーディネーターというか、出演していただく農家を紹介したり、撮影に立ち会ったりデザインを決めたりと、一緒になって動きました。その結果、『こくベジ』の世界観を伝えるすごくいいツールができました」

奥田氏「木村さんは、上司に“おまえは働きすぎだ”って怒られていたらしいです」

出口の見えなくなったご当地グルメ開発。そんな状況からわずか3か月で、国分寺の野菜を使ってお店オリジナルのメニューを提供するという仕組みに軌道修正し、それを世に送り出す準備を整えた。立ち位置の異なる者同士の熱き連携プレーは、立ち消えになりそうなプロジェクトを生き返らせた。そして『こくベジ』はデビューした。次回は、そんな走り出した『こくベジ』を支えるメンバーの奮闘ぶり、二人の独特な価値観をお届けする。

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画像: ご当地グルメからの軌道修正

SWITCH KOKUBUNJI 店長 榎本 彩氏

このお店は2018年4月25日にオープンしました。“おなかいっぱい、野菜を。”というキャッチフレーズのカフェです。うちの店は、料理に使うすべての野菜が『こくベジ』です。なので、季節に合わせてメニューも変えています。夏はモロヘイヤ、冬はキャベツや根菜類とか、国分寺では地元の野菜がおいしくて、常連さんはそれを楽しみにしてくれています。奥田さんも、「サラダに使うならこれがいいと思う」とか、「もうすぐこれが採れるから」とか野菜の情報を先に言ってくださるので、すごく助かります。このお店を作るとき、国分寺という場所は決まっていました。どんなお店にするかをみんなで考えているときに、『こくベジ』のフラッグを下げている店が多いことが気になっていて、調べてみると地元の野菜を発注しやすい環境も整っている。SWITCHのブランドコンセプトも“地元に寄り添う”なので、野菜中心のカフェにすることになりました。私が農家さんを訪ねたり、農家さんも食べに来てくださったり、そんな関係ができるのも国分寺ならではですね。

SWITCH KOKUBUNJI 東京都国分寺市南町3-22-31 島崎ビル201
https://cafe-switch.jp/

「第4回:人とのつながりを貯金する。」はこちら>

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