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KDDI株式会社 事業創造本部Web3推進部長の舘林俊平氏と、日立製作所 研究開発グループの沖田英樹による対談、最終回。リアルとデジタルが融合することで、生活者視点のまちづくりはどのように変化していくのか。

「第1回:メタバースがもたらす、コミュニケーションの変化」はこちら>
「第2回:メタバースで加速する、社会課題解決」はこちら>
「第3回:流動化・分散化する、まちへの関わり方」

デジタル技術を前提としたまちづくりへ

福丸(ナビゲーター)
リアルとデジタルの融合によって社会インフラのあり方が変わっていくと、生活者視点のまちづくりにはどのような変化が生まれてくると思われますか。

舘林
デジタルの側でできることを想定したまちづくりに変容していくのではないでしょうか。

近年、コンビニエンスストアのアルバイトで大変だと言われている業務が、冷蔵庫の品出しだそうです。やはり、庫内は寒いので身体への負担が大きい。この課題を解決するために、ロボットアームを運用して品出しをさせる仕組みを開発しているスタートアップがあります。この仕組みが実用化し、「ドリンクの品出しはロボットアームにさせる」という前提でコンビニエンスストアをつくれば、品出しに割いていた人件費を削減することができます。

ただ、ロボットには失敗が付き物です。導入の初期段階ではやはり人間が現地に張り付いてロボットのミスをカバーし、将来的には遠隔運用によりロボットだけでミスなく品出しができるようになる――というように段階的に自動化していくと思います。

画像: KDDI株式会社 舘林俊平氏

KDDI株式会社 舘林俊平氏

例えばビルを建てるにしても、人間ではなくドローンで監視することを前提にした空間が出来上がる。あるいは、まちの中の何も置かれていないスポットにスマートフォンをかざすと、ARでポップアップストアが出せるなんてこともできるようになる。デジタル技術を活用することで、人やモノを省ける部分を明確化したまちづくりを進めることができ、まち全体にかかるコストを削減できると同時に、まちづくりの自由度が上がると思います。狭い日本の国土に、いかにレイヤーを重ねて有効活用しやすくするか――そんな発想のまちづくりが今後増えていくのではないでしょうか。

沖田
ロボットアームのお話にあったように、どのような段階を経て自動化すると、リアルとデジタルがよりつながりやすくなるかという視点は重要です。例えばビル空間における配送の自動化でしたら、まずは清掃の自動化からロボット活用を始める。初めから、最後の1%まですべてロボットで自動化しようとするとコストがかさむので、まずはユーザーの方々が価値を感じられるレベル――例えば作業の60%を自動化するところからスタートするというように、人が機械に関わる余白を残しつつ、段階的な自動化が求められるのではないでしょうか。

画像: 日立製作所 沖田英樹

日立製作所 沖田英樹

「所属」の流動化・分散化

福丸
リアルとデジタルが融合することで、コミュニケーションのあり方はもちろん、働き方に関しても、住んでいる土地や持っているスキルに関係なくさまざまな社会貢献ができる。そして、まちづくりのあり方も変化していく――そんな社会の姿が、お二人の対談から見えてきました。

画像: ナビゲーターの日立製作所 福丸諒

ナビゲーターの日立製作所 福丸諒

これまで関心はあったけれども関わることができなかったまちのあり方に、例えばメタバース空間を介して意見を表明できることで、まちづくりをはじめとするリアルをも変えていける――そんな流れができつつあると感じます。舘林さんは今後、「リアル×デジタル」が新たにどんなものをつなぐと想像しますか。

舘林
「所属」という概念がもっと流動化すると思います。例えば今、札幌に暮らしている人がいるとします。住民税は札幌市に払っている。一方で、バーチャル空間では福岡市にも名古屋市にも貢献している――となると、その人は札幌市、福岡市、名古屋市すべての関係人口にカウントされる。1人が複数の都市に関与できるようになるわけです。

画像1: 「所属」の流動化・分散化

働き方にしても、夜は「バーチャル渋谷」でまちの案内をするアルバイトをしている。日中はリアル空間で企業に勤めている――というように、もっと流動化していくのではないでしょうか。

セットアップされた個人のプロファイル(設定情報)がどんどん分散化されていくことが、リアルとデジタルの融合が生み出す価値と言えます。

福丸
個人としてのプロファイルを背負いながらも、それを柔軟に楽しんでいく生き方が可能になるということですね。

沖田
同感です。もっと言えば、多様な生き方の1つのジャンルとして、ぜひ社会インフラへの関与も加わると、よりよいなと思います。今回ご紹介したビル空間の運用であったり、街区を飛ぶドローンの制御であったり、あるいはEVを蓄電所として共助の形で提供するという日立の取り組みも含めて、生活者の方々が個人としてさまざまな地域の支援に参画していく。そのための手段として、リアルとデジタルの融合が価値を発揮すると思います。

画像2: 「所属」の流動化・分散化

福丸
社会インフラへの住民の関わり方を、いかに義務や責任という形で押しつけずに構築していくか。そのためにはデジタルにおけるコンテンツ設計が核になりそうですね。

本日は「リアル×デジタルが私達の暮らしの何を繋ぐのか」と題し、対談をお送りしました。お二人とも、ありがとうございました。

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「第3回:流動化・分散化する、まちへの関わり方」

画像1: リアル×デジタルが私達の暮らしの何を繋ぐのか
【その3】流動化・分散化する、まちへの関わり方

舘林俊平(たてばやし しゅんぺい)
KDDI株式会社 事業創造本部 Web3推進部長
2006年、KDDI株式会社に⼊社。移動体通信のネットワーク設計を担当したのち、2012年よりKDDI∞Labo、KDDI Open Innovation Fundに関わり、スポーツ、エンタメ、XR事業、バーチャル渋谷などを担当。2021年、ビジネス開発部 副部長としてモビリティ領域のJV設立を推進。2022年4月、BI推進部長としてKDDI∞Labo、KDDI Open Innovation Fund、KDDI Digital Gateを統括。2023年4月より現職。オープンイノベーション活動に加え、αU metaverse、αU Wallet、αU Marketなどの事業を管掌している。

画像2: リアル×デジタルが私達の暮らしの何を繋ぐのか
【その3】流動化・分散化する、まちへの関わり方

沖田英樹(おきた ひでき)
株式会社日立製作所 研究開発グループ デザインセンタ 社会課題協創研究部 部長
日立製作所入社後、通信・ネットワーク分野のシステムアーキテクチャおよびシステム運用管理技術の研究開発を担当。日立アメリカ出向中はITシステムの統合運用管理、クラウドサービスを研究。2017年から未来投資本部においてセキュリティ分野の新事業企画に従事。2019年から社会イノベーション協創センタにおいてデジタルスマートシティソリューションの研究に従事。同センタ 価値創出プロジェクト プロジェクトリーダを経て、現職。

画像3: リアル×デジタルが私達の暮らしの何を繋ぐのか
【その3】流動化・分散化する、まちへの関わり方

福丸諒(ふくまる りょう)
株式会社日立製作所 研究開発グループ デザインセンタ デザイナー
日立製作所入社後、鉄道情報サービスUI/UX設計を担当。2017年から未来洞察手法の研究と実践により中長期的な事業機会探索を行うビジョンデザインを推進。英国日立ヨーロッパ駐在を経て、現職。

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