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日立グループの社内ネットワーク活動「Team Sunrise」の実践編。最終回に登場するのは、今年6月に渋谷で開催された『「変化を嫌う人」を動かす』の著者、デイヴィッド・ションタル氏の講演イベントで、プレゼンターとして“サポーターシップ”を発揮した日立製作所の草間隆人。Team Sunriseのみならず複数の社内コミュニティで、イノベーションを主なテーマに数々の勉強会を企画・運営している“プロデューサー”の代表格でもある。

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「第1回:15年目を迎えた、日立の社内ネットワーク活動」はこちら>
「第2回:『変われる組織』のロジック」はこちら>
「第3回:思考停止からの再起動」はこちら>
「第4回:コロナ禍で挑む『イノベーションのDX」」はこちら>
「第5回:Team Sunriseはなぜ続くのか」はこちら>
「第6回:イノベーションの原動力」はこちら>
「第7回:米国ベストセラー『The Human Element』を、日本に。」はこちら>
「第8回:グローバルマインドセットと英語力」はこちら>
「第9回:ボトムアップでイノベーションが起きる組織へ」

日立に企業変革の流れをつくり出す

1999年に日立製作所に入社した草間隆人は、20年以上にわたり、社会インフラに使用されるITシステムの運用管理ソフトウェアなどを開発してきた。その後、社内公募に応じ、現在は社会システム事業部で主に通信インフラ領域の新規事業創生をはじめとする事業企画を担っている。その一方で、ある問題意識からTeam Sunriseでの活動を継続してきた。

「かつて多くの日系企業には、優れた技術で良質のプロダクトを大量生産・大量販売するビジネスモデルが確立していました。ところが2000年代に入り、プロダクトを持たずともグローバルにサービスを展開するスタートアップが台頭してきました。世界的に成功しているスタートアップを見ると、起業したからイノベーションを起こせたというよりも、イノベーションが起きた結果、組織ができたというケースが多い。ならば日立でも、従業員がボトムアップで新しいことに取り組み続けるなかでイノベーションを起こせるのではないか――そんな思いから、Team Sunriseに参加しています」

画像: 日立製作所 草間隆人

日立製作所 草間隆人

草間が企画・運営する勉強会のテーマは一貫して「イノベーション」だ。2020年にコロナ禍で急遽リモートワークが全面導入されるといち早く勉強会を開き、オンラインでも対面以上にアイデアを生み出せる社内コミュニケーションのあり方をディスカッションした。ほかにも、「心理的安全性の高い組織のつくり方」「デザインシンキングのメソッドを学ぶ」といったワークショップを、Team Sunriseのみならず複数の社内コミュニティで開いている。

イノベーション創出に並々ならぬ思いを持つ草間。彼の名刺には「FORTHイノベーション・メソッド公認ファシリテーター」という耳慣れない肩書きが記されている。

「大企業などの保守的な組織において計画的にイノベーションを起こしていく。同時に、イノベーションを起こせる人財を育てていく――そのための方法論が『FORTHイノベーション・メソッド』です。わたし自身のキャリア観を変えようと、5年ほど前に養成講座を受講して資格を取りました。この講座での気づきが原体験となり、日立に変革の流れをつくるべく、さまざまな勉強会を仕掛けるようになりました」

画像: ションタル氏の講演会でプレゼンテーションする草間

ションタル氏の講演会でプレゼンテーションする草間

高校物理で解き明かす組織のイノベーション

今年4月、草間は偶然、一冊のビジネス書に出会う。日立の船木謙一が監訳した『「変化を嫌う人」を動かす』だ。

「まさか日立の従業員が監訳したとはまったく知らず、わたし自身の問題意識にも通じるテーマだったので、すぐに購入しました。この本を題材に、Team Sunriseで後日“読書会”を開催したのです。そこに郷家達也さんも参加していた縁で、ションタル先生の講演会にプレゼンターとして呼ばれることになりました」

読書会の内容は次のようなものだった。――参加者全員で『「変化を嫌う人」を動かす』を斜め読みしたうえで、普段の業務で直面している“変革に対するステークホルダーからの抵抗”への具体的な対策を考え、気づいたこと、感じたことを一人ひとりが発表し合う――。

「一番の狙いは『アウトプットすることは、実は怖くない』と参加者に感じてもらうことでした。考えを自由にアウトプットしあう作業を通じて本のエッセンスを学びつつ、イノベーションを起こせる人財になるためのマインド変革のきっかけにしてもらいたい、と」

画像: ションタル氏の講演会で草間は、『「変化を嫌う人」を動かす』の活用事例として、自身がTeam Sunriseで行った“読書会”を紹介した

ションタル氏の講演会で草間は、『「変化を嫌う人」を動かす』の活用事例として、自身がTeam Sunriseで行った“読書会”を紹介した

さらに草間は、ションタル氏の考えを自分なりに解釈した考察「高校物理で解き明かす組織のイノベーション」を、Team Sunriseとは別の社内コミュニティでプレゼン。以下は、草間が構築したロジックの一端だ。

画像: 高校物理で解き明かす組織のイノベーション

「質量mの物体を動かす力Fは、物体にかかる摩擦力fよりも大きい必要があります。これを組織に当てはめると、大きな組織(m)を動かすには大きな摩擦力(f)がかかるため、組織を動かす力(F)も大きくなければなりません。この摩擦力の正体こそションタル先生のおっしゃる『抵抗』であり、言い換えればコミュニケーションコストなのではないか――これがわたしの解釈です」(草間)

「論理」以前に、「感覚」を

ションタル氏の講演会でのプレゼンを終えた草間は、その手応えを次のように振り返った。

「発信し続けることで、志を同じくするだれかとの新たなつながりが生まれる――Team Sunriseがもたらす出会いの面白さを改めて実感しました。わたしが積極的に発信し続ける姿を見て、『こんなに自由にやっていいんだ』『自分にも何かできるんじゃないか』と思う従業員が増えてくれたらうれしいです」

最後に、今後Team Sunriseをどう活用していきたいか聞いた。

「イノベーションは、方法論に縛られるとかえって生まれにくい――これがわたしの持論です。初めて自転車が漕げるようになった瞬間って、まさに感覚じゃないですか。漕ぎ出して後ろを振り返ったら、支えてくれていたはずのお父さんがいない、みたいな。転ばない理由を事前に物理のロジックで学んでいたら、むしろ怖くて漕ぎ出せないかもしれない。イノベーションの創出も、同じだと思うのです。直感を大事にして、自分が考えたことをアウトプットする。その訓練の場を、Team Sunriseを通じて提供していきたいです」

画像: 「論理」以前に、「感覚」を

ときに“プロデューサー”して、ときに“サポーター”として積極的に活動する4人のTeam Sunriseメンバーを紹介してきた。彼らに憧れ、自らもイベントを企画・運営しようとする従業員が日立に増えつつある。もちろん、イノベーションは一朝一夕に起こせるものではない。従業員一人ひとりのアイデアを起点としたボトムアップの取り組みが、やがて変革のうねりを生み、社会課題の解決に資する大きなイノベーションを起こすのではないだろうか。

画像: イノベーションを育てる社内ネットワーク「Team Sunrise」
【第9回】ボトムアップでイノベーションが起きる組織へ

草間隆人(くさま たかと)

株式会社日立製作所 社会システム事業部 テレコム・ユーティリティソリューション本部 テレコム・ユーティリティ企画部 主任技師
1999年、日立製作所入社。社会インフラ領域におけるITシステムの運用管理ソフトウェア開発などを経て、2023年より現職。主に通信インフラ領域の新規事業創成をはじめとする事業企画を担当している。FORTHイノベーション・メソッド公認ファシリテーター、BMIA認定コンサルタント。

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