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株式会社 日立製作所 執行役常務 谷口潤/帝京大学スポーツ局局長 岩出雅之氏
2021年度全国大学ラグビーフットボール選手権大会で10度目の優勝を果たし、26年間の帝京大学での監督生活に区切りをつけた、現・帝京大学スポーツ局局長 岩出雅之氏。そしてラグビーを愛し、岩出氏を敬愛し続けてきた日立製作所 執行役常務 谷口潤との対談。最終回は、優勝インタビューで男泣きしたアウトローの成長の物語。

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「第5回:アウトローの自己改革」

やんちゃな主将の誕生秘話

谷口
個人的に、どうしても先生に伺いたかったことがあります。V10のときの細木主将についてです。試合を見ていても、ご著書『逆境を楽しむ力』を読ませていただいても、かなりとんがったユニークな人のようで……

岩出
やんちゃですね。

谷口
彼はもともと主将の候補ではなくて、学年リーダーでもなかった。帝京大学は4年生の話し合いで主将を決めていて、ほぼ決まりかかっていたときに先生のひとことがそれまでノーマークだった人を新主将にし、4年ぶりの優勝に導かれた。このときの先生の思いをぜひ伺わせてください。

岩出
帝京大学では、新4年生が部員同士の話し合いで新主将を決めています。その年の話し合いでは、新主将は別の人間に決まりかかっていましたし、本人もチームもそういう空気になっていました。しかし学年の中で細木君は、良くも悪くも影響力のある子で、その潜在的な能力に僕は期待していたのです。顕在化している氷山の一角だけを見るとやっかいなやつかもしれないけれど、やっかいなやつを放りっぱなしにしてしまうのはもったいないし組織としても良くない。主将候補も含めた学年リーダーたちに「細木はどうする?」と、それだけを言いました。

学年リーダーたちが納得のいくまで話し合った結果、細木君を主将に選び、自分たちは副将になって主将を支えるという決断をしてくれました。実際に副将になった上山君と押川君は、1年間細木主将の脇をしっかりと固めてくれましたし、この三人の体制は10回の優勝の中でも最高だったと思います。この二人がいなければ、細木君は力を発揮できなかったでしょう。

谷口
先生は直接指示を出されたのではなく、考えるきっかけをつくられたということですか。

画像: やんちゃな主将の誕生秘話

岩出
はい。おそらく主将候補に名前があがったときには、細木君本人がいちばん驚いたでしょう。アウトローの自分にそんな権利があるとはまったく思っていなかったはずですから。しかし新主将に決まってからの彼は、本能が目覚めたかのように反応してくれました。彼が素晴らしいのは、わかったふりをしないこと。最初の頃は練習のラストメニューのときに毎日2分くらいリフレクション(振り返り)をしました。みんなのところに戻る前に、一度僕のところでその日の練習を振り返るということを毎日やりました。

驚かされたのは、そのリフレクションの中身がどんどん濃くなっていったことです。最初は「今日見ていてどうだった?」と聞いてもとんちんかんだったり、大事なところを見ていなかったりしました。「見ていないことは、しゃべれないよな」という話をすると、観察の幅をぐんぐんと自分で広げていきました。そして鋭い観察力を身に付けると、的を射た言葉を返してくるようになったのです。

中学、高校、大学と本当に素直な自分を出し切れずにもやもやしていたやんちゃなアウトローが、4年生で主将になることによって最後に成長したのだと思います。

谷口
決勝のときのスクラムで何度も相手から反則を取って、彼が情熱的に雄たけびを上げている姿を見て、これは絶対に帝京が勝つと思ったことを覚えていますが、そこにはそんなストーリーがあったのですね。

岩出
決勝のインタビューで彼は泣きながら答えているのですが、過去に優勝した10人のキャプテンの中で泣いたのは彼だけなんです。僕もすぐ近くで聞いていて、やられそうになりました。実はそのあとのパーティーでもスピーチをしたのですが、それはもう本当に素晴らしいスピーチでした。水面下の潜在能力として、彼は強い言葉力も持っていたのです。主将になった1年間で「あいつで大丈夫なのか」というみんなの不信感を自分で消していった、理想的な主将です。

ウェルビーイングがあって、挑戦がある

谷口
本日は貴重なお話をありがとうございました。最後に、岩出先生から私たち日立に何かメッセージがあればお願いします。

岩出
いや、メッセージなんて僕から言える立場ではないのですが、僕の中のイメージでは日立は公的な事業で強みを発揮している企業なのに、日立イズムというか個性を大事にされているという印象があります。グローバル化するこれからの社会で、日立の個性と高度な技術で世の中の期待にこたえていけば、働いている人も誇りを持てるし、組織としてもさらに強くなる。そう思います。

画像: ウェルビーイングがあって、挑戦がある

谷口
ありがとうございます。日立は創業から110年以上の時間が経っていますが、「和」「誠」「開拓者精神」という創業時の精神は今もそのまま日立のアイデンティティとして継承されています。これは世界中どこへ行っても変わりませんし、新しくM&Aで仲間になった企業の人たちにも、かならずこのアイデンティティは共有してもらっています。それが、今先生が言われた日立の個性なのかもしれません。

「和」というのは、今日も議論になりましたが、人と人とのつながりの中で相手のことを受け入れ、認めることでチームとしてのパフォーマンスを高めることにつながります。「誠」は、個が誠実で正直であることがベースにないと、チームは強くなりません。「開拓者精神」に関しては、今日先生から「ウェルビーイング」の大切さ、人は「心理的安全性」があってはじめて挑戦できるということを改めて教わりました。挑戦できるチームづくり、失敗することによる学びや成長を受け入れる組織であれば、みんなで成果と幸せを同時に追求することができる。岩出先生からいただいた貴重な言葉を、これからの私の指針にしていきたいと思います。本日は、本当にありがとうございました。

岩出
こちらこそ、ありがとうございました。

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「第5回:アウトローの自己改革」

画像1: 人を育てるウェルビーイングの力
【第5回】アウトローの自己改革

岩出 雅之(Masayuki Iwade)
1958年、和歌山県新宮市生まれ。和歌山県立新宮高等学校卒業後、日本体育大学在学中に1978年全国大学ラグビーフットボール選手権大会優勝に貢献。4年時には主将を務める。卒業後、滋賀県教育委員会、滋賀県公立中学校、滋賀県立高等学校教員を務める。県立八幡工業高等学校教員時にラグビー部監督として、同校を7年連続花園出場に導く。ラグビー高校日本代表監督。1996年帝京大学ラグビー部監督就任。2009年度~2017年度全国大学ラグビーフットボール選手権大会において史上初の9連覇を達成。2015年第52回日本ラグビーフットボール選手権大会では、トップリーグチームに勝利を収めた。2022年1月全国大学ラグビーフットボール選手権大会において10度目の優勝を果たし、監督を退任。現在帝京大学スポーツ局局長、スポーツ医科学センター教授。

画像2: 人を育てるウェルビーイングの力
【第5回】アウトローの自己改革

谷口 潤(Jun Taniguchi)
1995年、株式会社 日立製作所入社。2019年4月、日立グローバルライフソリューションズ社長。2022年4月、日立製作所 執行役常務 サービス&プラットフォーム ビジネスユニット COO /日立デジタル社CEO。

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