「第1回:アナウンサーから気象予報士へと駆り立てたもの」はこちら>
「第2回:過去に経験したことがない異常気象が頻発する時代に」はこちら>
「第3回:一人ひとりの毎日の行動が温暖化を抑止する力になる」はこちら>
持続可能な世界の実現が今後の成長を支える基盤
山本
日立は、いま「社会価値」「環境価値」「経済価値」を同時に高めることで、世の中の人々の生活の質(Quality of Life)の向上や、お客さま企業の価値向上に貢献するという取り組みを進めています。これも、持続可能な世界の実現なくして、企業の成長はあり得ないという考え方に基づいています。もちろん、企業は収益を上げて、次の投資を可能にしていくことで成長し続けるわけですが、もはや自分たちだけが儲かればよいということではなく、企業を取り巻くお客さま、取引先、そしてその先の社会といったすべてに貢献できなければ、持続的な成長は望めません。利己的な利益追求ではなくて、利他的な行動、行為を通じて自分たちの利益を生み出していくということがこれからは大切だと、考えています。
酒井
日立という日本を代表する企業が、そういう取り組みを大事にされているのは、たいへん嬉しいことですね。
山本
環境価値の向上という点では、めざすべき将来の方向を「環境ビジョン」としてまとめ、2030年、2050年の具体的な目標値を掲げて「低炭素社会」「高度循環社会」「自然共生社会」の実現に取り組んでいます。
酒井
それは地球温暖化の抑止に対する影響度も大きいですし、実質的な効果ばかりでなくマインドの面でも社会に及ぼす影響は大きいと思います。
山本
日立グループで働く人たちに誇りや、やりがいを持ってもらうためにも、「社会価値」「環境価値」「経済価値」を同時に高めるということは、大切なことだと考えています。自分たちの仕事は世の中にこれだけ貢献しているというバックボーンを持つことで、働くモチベーションが高まり、やりがいも生まれてきます。
酒井
そのような企業を持っているということで、日本の社会にも誇りが生まれますね。
山本
日立は創業当時、「優れた自主技術・製品の開発を通じて、社会に貢献する」という企業理念を掲げ、「和、誠、開拓者精神」を創業の精神としてきました。ですから、社会価値という視点が、創業以来ずっとあります。「社会価値」「環境価値」「経済価値」というのは、その創業以来の理念を時代に合わせて再定義したものだともいえます。日本の多くの企業には、社会とともに成長していくという考え方があるように思います。ですから、持続可能な世界の実現を通して、自分たちの事業も成長させていくという考え方は、日本企業には違和感なく受け止められるのではないでしょうか。もちろん、私たちの取り組みはまだ緒についたばかりですから、これから頑張らないといけません。
新しい行動を生み出すメッセージを発信し続けたい
山本
最後に、酒井さんのこれからの抱負をうかがえればと思います。酒井さんは、陶芸や園芸、調理など、幅広い分野に関心を持って、活動の領域を広げてこられましたね。ピアノを演奏されているのもテレビで拝見しました。
酒井
好きなことがいろいろあって、好きなことができるとそれを突き詰めていきたくなるんですね。最近では陶芸に熱心に取り組んでいますが、自転車も好きで一時期は自転車に関するお仕事もさせていただいていました。好きなことに一生懸命に取り組んでいると、そこからいろいろなことが学べます。そこで得た素晴らしいことを、多くの皆さんに伝えたいという思いが常にあります。
山本
いろいろな趣味の広がりがありますが、そこから何かを発信していきたいという思いは一貫しているわけですね。
酒井
気象予報士としてもそうなのですが、自分の言葉や伝えたい内容が、多くの人に届いて、そこから新しい行動が生まれるといいなと思っています。防災などでは私の言葉が多くの皆さんに届いて、そこから皆さんが身を守る行動につながっていけばと思いますし、趣味の世界では、私がお勧めしたことに、多くの方々に興味を持っていただけたら素晴らしいなと思います。
山本
たくさんのことに興味を持って、そこで得た知識や情報を表現者として発信していくことで、多くの人々に新たな喜びや興味を呼び起こさせるわけですね。それも立派な社会貢献と言えそうです。
本日は、気象の話から社会貢献まで、いろいろな話をお聞きすることができて、新しい視点もいただくことができました。お忙しい中、本当にありがとうございました。
酒井
こちらこそ、お話をうかがって私もたいへん勇気づけられました。これからの日立さんの取り組みにも大いに期待しています。ありがとうございました。
酒井千佳(さかい・ちか)
兵庫県出身。京都大学工学部卒業後、北陸放送にアナウンサーとして入社。2009年、第31回気象予報士試験に合格。その後、テレビ大阪契約アナウンサーを経て、2012年よりフリーアナウンサー、気象予報士として活動。テレビ朝日、日本テレビ、NHK等のニュース・情報番組にて気象コーナーに出演。現在はフジテレビ「Live News it!」お天気コーナーを担当。2018年、株式会社トウキトを設立し、陶芸情報ポータルサイト運営など陶芸に関する情報発信等にも取り組む。
山本二雄(やまもと・つぎお)
1978年 株式会社 日立製作所入社、2001年 システムソリューショングループ 金融システム事業部 金融第一システム本部システム技術統括部 チーフプロジェクトマネージャ、2004年 情報・通信グループ 金融ソリューション事業部 NEXTCAPソリューション本部 担当本部長、2015年 理事 情報・通信システムグループ 情報・通信システム社 システム&サービス部門COO 、2016年 理事 金融ビジネスユニットCEO 兼 公共ビジネスユニットCEO、2017年より 執行役常務 金融ビジネスユニットCEO。
シリーズ紹介
楠木建の「EFOビジネスレビュー」
一橋ビジネススクール一橋ビジネススクールPDS寄付講座特任教授の楠木建氏の思考の一端を、切れ味鋭い論理を、毎週月曜日に配信。
山口周の「経営の足元を築くリベラルアーツ」
山口周氏をナビゲーターに迎え、経営者・リーダーが、自身の価値基準を持つための「リベラルアーツ」について考える。
協創の森から
社会課題の解決に向けたビジョンの共有を図る研究開発拠点『協創の森』。ここから発信される対話に耳を傾けてください。
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パーパス、CSV、ESG、カスタマーサクセス、M&A、ブロックチェーン、アジャイルなど、経営戦略のキーワードをテーマに取り上げ、第一人者に話を聞く。
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明治期に始まる産業振興と文明開化、日本社会の近代化に多大な影響を及ぼした岩倉使節団。産業史的な観点から、いま一度この偉業を見つめ直す。
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新世代のイノベーターをゲストに社会課題の解決策や新たな社会価値のつくり方を探る。