気象予報士・フリーアナウンサー 酒井千佳 / 株式会社 日立製作所 執行役常務 金融ビジネスユニットCEO 山本二雄
気象予報士としてテレビでもおなじみの酒井千佳さんをお迎えして、近年の異常気象や地球温暖化防止などについてお話をお聞きしました。毎日の気象予報やさまざまな趣味に関する情報発信を通じて、多くの人々に新たな行動を起こすきっかけを提供したいという酒井さん。そのお話からは、情報をかみ砕き、わかりやすく伝える要諦もうかがえます。

「表現して、人々に伝えたい」という思いが原点に

画像: 「表現して、人々に伝えたい」という思いが原点に

山本
いつも酒井さんのご活躍の様子をテレビで拝見しています。昨今のように異常気象といわれる状況が増え、気象災害も頻発するようになってくると、一般の人々の毎日のお天気への関心も高まっていると思います。そうした中で酒井さんは、常に視聴者にわかりやすく天候のポイントを伝えるよう工夫されていらっしゃいますね。

酒井
ありがとうございます。おっしゃる通り、最近では日本を取り巻く気象も20年前、30年前とは大きく変わってきていて、過去の経験が通用しなくなっています。その一方で、スーパーコンピューターを使ったシミュレーションをはじめ、予測データの精度や的中率は、以前とは比べ物にならないくらい向上しています。ただ、データは「なぜそういう雲の動きになるのか」「なぜそういう気温の変化になるのか」というような背景までは語ってくれません。その背景を分析して、皆さんにわかりやすくかみ砕いてお伝えするのが、気象予報士の重要な役割だと考えています。

山本
実は、気象予報にデータを提供するスーパーコンピューターのシステムも、日立が手掛けているんです。

酒井
それは存じませんでした。普段私たちの目に触れないところで、日立さんの技術は活躍されているんですね。

山本
日立はいま、「社会イノベーション事業」といって、これまでモノづくりを通じて培ってきた制御・運用技術(OT = Operational Technology)や情報技術(IT)とモノを結び付けて社会課題を解決していく事業に力を注いでいます。金融、公共事業など社会を支えるさまざまな分野にITシステムなどを提供していて、気象予測分野もその一つなんです。私たちの技術が酒井さんのお仕事に役立っているのが嬉しい限りです。

ところで、酒井さんのご経歴を拝見すると、京都大学の工学部建築学科を卒業されて、アナウンサーのお仕事に就かれ、そこから気象予報士の資格を取られていますね。

酒井
はい、建築学科からアナウンサーというのは、ずいぶんと方向が違うねとよく言われます。私は子どもの頃からずっと表現者として、人々に何かを伝える仕事がしたいと考えていたんです。好きなこと、興味のあることも多くて、その中から大学では建築学を学びました。アナウンサーという仕事を選んだのは、幅広い分野の話題をとらえ、表現して伝えるという点に魅力を感じたからです。

山本
なるほど、建築もアナウンサーも、何かを表現して、人々に伝えるという点では共通しているわけですね。気象に興味を持たれたきっかけは、何だったのですか。

酒井
確か私が小学校5年生の頃に、気象予報士の制度がスタートしました。当時、ニュースでも大きく取り上げられたりしていたので、私も関心を持ったのだと思いますが、小学校の卒業文集には、将来の夢として「最年少で気象予報士の資格を取る」と書きました。その夢のことはしばらく忘れていたのですが、アナウンサーになってから気象予報士の資格を取ろうと改めて思いました。いろいろなニュースを伝えたり、現場リポートをしたりするうちに、気候や気象がたいへん重要な役割を果たしていると感じるようになりました。それで自分自身でもっと専門的な気象の知識を持てば、視聴者の皆さんにさらにわかりやすくお伝えできるのではないかと考えました。

山本
気象予報士の試験というのは、たいへん難しいと聞いています。制度がスタートした当初は、ベテランの気象解説者の方も1度ではパスできなかったとか。気象学はもとより、数学や物理などさまざまな知識が必要なのでしょう。合格率はどれくらいなのですか。

酒井
4%台で推移していると聞いています。試験では、数学や物理など理系の知識をはじめ、気象業務法など幅広い分野にわたる知識が問われます。

暮らしに最も影響する点を見つけて、わかりやすく伝える

画像: 暮らしに最も影響する点を見つけて、わかりやすく伝える

山本
実は私も子どもの頃から気象に興味がありました。小学生の頃はラジオの気象通報を聞いて、天気図をつくったりしていました。

酒井
それはすごいですね。何か興味を持つきっかけがあったのですか。

山本
私は九州の出身でして、九州は毎年のように台風が上陸したり、大雨が降ったりして被害を受けています。そういうこともあって、自然と気象への関心が生まれたのではないかと思います。

酒井
なるほど。気象への関心は、大人になってからも?

山本
そうですね。今でも毎日、いろいろな気象データを見たり、気象予報士さんのブログを拝見したりして、自分なりに天気の予測をしています。北半球全体では寒気の動きはこうなっているから、日本でもそろそろ寒気が下りてくるなとか、明日はこのあたりで雲が湧いてくるとか…

酒井
それはプロ顔負けですね。

山本
会社の同僚が明日はゴルフに行くという時などは、「ゴルフ場の天気はどうなる?」と聞かれることも多いんです。それで「広い範囲の天気予報では雨になっているけれど、雨雲はそのゴルフ場の手前で雨を降らせて消えるから、雨の心配はないよ」など、アドバイスしています。

酒井
しっかりと予報されているわけですね。

山本
酒井さんはテレビで天気予報を伝える際に、どんな点を注意されているのでしょうか。

酒井
その日の暮らしに最も影響を与えそうな点を、しっかりとお伝えするようにしています。たとえば、暖冬と言われた今年の冬でも、急に強い寒気が日本付近に南下してきて、厳しい寒さになるようなことがありました。そういう時は、どれくらい寒くなるか、具体的にイメージできるようにお伝えするようにしています。また、受験シーズンなら、特に受験生の皆さんに注意していただきたい点を強調するとか、その時々で伝える対象も具体的にイメージして、メッセージを発信するようにしています。

画像1: 「次の行動」に結びつくメッセージを毎日の暮らしに伝える気象予報【第1回】アナウンサーから気象予報士へと駆り立てたもの

酒井千佳(さかい・ちか)

兵庫県出身。京都大学工学部卒業後、北陸放送にアナウンサーとして入社。2009年、第31回気象予報士試験に合格。その後、テレビ大阪契約アナウンサーを経て、2012年よりフリーアナウンサー、気象予報士として活動。テレビ朝日、日本テレビ、NHK等のニュース・情報番組にて気象コーナーに出演。現在はフジテレビ「Live News it!」お天気コーナーを担当。2018年、株式会社トウキトを設立し、陶芸情報ポータルサイト運営など陶芸に関する情報発信等にも取り組む。

画像2: 「次の行動」に結びつくメッセージを毎日の暮らしに伝える気象予報【第1回】アナウンサーから気象予報士へと駆り立てたもの

山本二雄(やまもと・つぎお)

1978年 株式会社 日立製作所入社、2001年 システムソリューショングループ 金融システム事業部 金融第一システム本部システム技術統括部 チーフプロジェクトマネージャ、2004年 情報・通信グループ 金融ソリューション事業部 NEXTCAPソリューション本部 担当本部長、2015年 理事 情報・通信システムグループ 情報・通信システム社 システム&サービス部門COO 、2016年 理事 金融ビジネスユニットCEO 兼 公共ビジネスユニットCEO、2017年より 執行役常務 金融ビジネスユニットCEO。

「第2回:過去に経験したことがない異常気象が頻発する時代に」はこちら>

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