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プラットフォームというのは、それ自体で価値を生むというよりは、みんなが乗ってくることで価値をつくるものです。だからある意味、セブン-イレブンやJR東海もプラットフォームなんです、ある種の。一言で「プラットフォーム」といっても、いろいろなタイプがあるわけです。
プラットフォームを「幅の広さ」で考えてみると、Amazon、Google、この2社はプラットフォームに乗ってくる人たちの範囲がものすごく広いですよね。一方、AppleとFacebookのスコープは相対的に狭いです。
次に、プラットフォームを形成する「側面」を考えてみると、GoogleとFacebookは、企業からお金をとる「マネーサイド」と無料でサービスを提供する「サービスサイド」の2面プラットフォームの形をとっている。だからこそ、GoogleとFacebookのアニュアルレポートには「マネタイズ」という言葉が頻繁に出てきます。モノやサービスを売って対価を得るという意味で普通の商売をしているAppleやAmazonのレポートにはほとんど出てきません。
このようにして、俗に言うプラットフォーム性っていうのを考えると、GAFAの中ではAppleが一番プラットフォーム性が低く、Googleがもっとも高い。FacebookとAmazonはその中間です。
続いて、売上高営業利益率を見てみましょう。
Amazonは、とにかくあったらあった分を全部使ってしまうので意図的に儲けが少ない。それに比べて現在のFacebookは、ものすごく利幅の大きな商売になっています。Googleも、高収益です。Appleは、物を作って売っているだけなのにこれだけの利益が出せるという、その商品力に改めて驚かされます。
これを見てわかるように、リアルなオペレーションを動かす必要がなく、バーチャルな領域でがつんといくプロダクトというのは、短期的な収益性とか成長性はもっとも高い。まさにFacebookは、それが理由でここまで急成長してきたわけです。それと比べると、世界中でリアルに投資をして商売をしていくAmazonは、それは儲からないよねということです。
ところが当然、爆発的成長力・収益力と、競争力の持続性にはトレードオフがあるわけです。Amazonは、僕は長期的に見るとこの4社のうちでもっとも底堅いと思うんです。そう簡単に、この牙城は崩れない。問題は、どこまで先行投資を続けるかで、この辺だなと投資を止めた瞬間にがっつり儲かる可能性があります。
一方のFacebookは、非常にバーチャルで、リアルなモノやオペレーションがない。しかもFacebookとInstagramという強力な2つのプロダクトに依存しているという意味で、この2つがこけたら急速に悪くなる可能性があります。例えば、Instagramはいまだに伸びていても、Facebookはだんだん人が離れてきた。そこにいろいろな制度上の問題とかが今追い打ちをかけてるんですけれども、別にそういう問題がなかったとしても、僕はFacebookには脆弱な面があると思います。というのは、コミュニティなんで、伸びるときは指数関数的に伸びるんですが、離れたときは指数関数的に落ちていきますよね。だからFacebookは、もともとの商売の成り立ちからして、脆弱性を抱えているのです。
楠木 建
一橋ビジネススクール教授
1964年東京生まれ。幼少期を南アフリカで過ごす。一橋大学大学院商学研究科博士課程修了(1992)。一橋大学商学部専任講師、一橋大学商学部助教授、一橋大学イノベーション研究センター助教授、ボッコーニ大学経営大学院(イタリア・ミラノ)客員教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授、2010年より現職。
著書に『「好き嫌い」と才能』(2016、東洋経済新報社)、『好きなようにしてください:たった一つの「仕事」の原則』(2016、ダイヤモンド社)、『「好き嫌い」と経営』(2014、東洋経済新報社)、『戦略読書日記』(2013、プレジデント社)、『経営センスの論理』(2013、新潮新書)、『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』(2010、東洋経済新報社)などがある。
シリーズ紹介
楠木建の「EFOビジネスレビュー」
一橋ビジネススクール一橋ビジネススクールPDS寄付講座特任教授の楠木建氏の思考の一端を、切れ味鋭い論理を、毎週月曜日に配信。
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山口周氏をナビゲーターに迎え、経営者・リーダーが、自身の価値基準を持つための「リベラルアーツ」について考える。
協創の森から
社会課題の解決に向けたビジョンの共有を図る研究開発拠点『協創の森』。ここから発信される対話に耳を傾けてください。
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