「第1回:暮らしを自分仕様にデザインする」はこちら>
「第2回:賞味期限を守らないと、毎日が忙しくて楽しい」
失敗を失敗で終わらせない
山口
失敗といえば、『新解釈 スーパートコロ辞典』に書かれていましたけれど、完成したばかりのラジコンを多摩川まで持って行って河川敷で走らせる映像を撮っていたら、ラジコンが川に落ちて動かなくなってしまったそうですね。その日はスタッフさんも小さな失敗をしたけれど、結局その日のうちにラジコンが直り、おかげで楽しく遊べたというお話でした。
所
そうそうそう、壊れたのはラジコン受信機だったの。受信機は水に弱いから、水の周りで走らせるときは受信機を防水しないとダメだってことが勉強になった上に、直ったもんだから嬉しくて。その日は夕方までラジコンいじり。
山口
攻めた映像を撮ろうとして川に落ちたのは失敗だったけれど、「チャレンジして楽しかった」とおっしゃっていたのが所さんらしさです。スタッフさんも所さんに学んでいて失敗をうまくリカバリーしたから、ますます楽しい一日になったということですよね。
所
そういうことですよ。ただ失敗にも種類があって、次の日に2倍頑張るって言ったけれども、それが難しい場合もあるじゃないですか。例えば、競馬をやって当たらなかったとき、次の日に2倍賭けるわけにいかないでしょう。そういうときはどうするかというと、どうでもいいものを買い込むんですよ。
山口
どうでもいいもの。
所
例えば紙粘土を大量に買ってみる。「紙粘土で何か一つできあがると、きっと俺は興奮するだろう」って、何をつくるか決めてないけれど注文するわけ。で、紙粘土が来ちゃうじゃん。来ちゃうと「やんなきゃ」っていう気になるじゃん。
山口
何のプランもないけど、始めてみたら思いがけず楽しいことが起きる、というのがポイントだと思います。最近は皆さん不確実なことを避けがちといいますか、「あらかじめわかっていること」ばかり選ぶ傾向が強いですよね。
所
ああ、そうだよね。今はSNSなんかの情報で、みんなが「いいね」していることや、誰かが成功したことを真似しておけば間違いないとか思いがちなんでしょう。情報がいっぱいありすぎるから、逆に確実なことしかやらないんだと思う。

20年前のお菓子を食べてみる
山口
所さんのように何が起きるかわからないことに自分を投げ込んでいかないと、人生って何も起こらないんですよね。
所
そうだね。情報がない頃は、自分で探るしかなかったのね。「ここは釘を打ったほうがいいかな」と思って釘を打つ。そのときは満足していたのに、あとになって「やっぱり組んだほうがよかった。穴も開かないし」ということに気づくわけじゃないですか。そうやって自分で気づくから嬉しいし、学べるし、次は上手くできたりする。
山口
多くの人は、失敗したくないために最初から正解を知りたいという考え方になっちゃっています。
所
うん。だから答えだと思っていることが小さいんだよ。「目の前のことがうまくいけばいい」という。でもね、生まれてきたからには最後は「死ぬ」というのが答えで、その間のことは途中経過だから、失敗しようが、うまくいこうが、まだ途中なんですよ。で、死ぬ前に全部振り返るわけじゃないですか。そのときにいいことばかり振り返りたいわけ、僕はね。
山口
トラブルも失敗も自分の中でリカバリーできていれば、笑い話や誇りにさえなりますからね。人生はロールプレイングゲームのようなものだと考えると、何もなくて簡単にクリアできたらつまんないですよね。いろんなトラブルが起きるからゲームとして楽しいわけですから。でも人生はそうじゃないと考える人が増えている気がします。
所
ゴルフでもダブルボギーだと残念がるけど、「トリプルでなくてダブルでよかった」と思えよと。そうすればトラブルも「楽しいこと」になるんですよ。
山口
僕も若い頃、仕事で失敗してよく怒られたんですが、「この人の怒り方はすごく怖いなぁ」とか考えているとおもしろくてニヤけてきちゃって余計に怒られたりしていました。それがまた飲み会の話のネタになるんですよ。
所
そうなるよね、うん。失敗して痛い思いをすることも、「待ってました!」という感じがちょっとある。「やっぱりケガするよね」みたいなね。前にロケで20年前のジャンバーを着たときに、あんこのお菓子が出てきたわけ、ポケットから。賞味期限を見たら20年くらい経っていて、もう石のようにカチンカチンになっているわけ、あんこが。で、「ここまで乾燥しているのは大丈夫だろう」と思って食べてみたら、なんかチョークを食べているみたいで、ちょっと甘かったけど埃の臭いのほうが強くて。
山口
それはきつかったですね。
所
そうやって経験してみるから、あんこは20年も経つと埃っぽくなるんだな、とわかるじゃない。だからそういうのが出てくると嬉しくなっちゃうの。見た目が可愛くて買った20年以上前のアメリカのお菓子の缶に当時のお菓子がそのまま入っていたときも、食べてみたけどミルク味は臭いがダメだった。でもチョコレート味は意外と大丈夫で、チョコレートの素晴らしさに気づいたね。
山口
なんともなかったですか。
所
なんともない。「食えるね、これ」って。だからいろんな痛い目にも遭いますよ、そんなことやっていると。お腹こわしたり。でも賞味期限を守って捨てるよりも、食べてみる。口のなかに入れてダメだったら捨てるというほうがおもしろいよね、家族も。だいたい、まず「お父さん、食べてみてよ」ってなるでしょ。「俺?俺が?」って、食べてお腹をこわしたら「親父アテになんねえな。次はお母さんね」ってなるよね。そういうことをしていると毎日の暮らしが忙しくて、楽しくなるじゃないですか。だから僕は忙しいんです、毎日。賞味期限、関係ないから。
第3回は、1月13日公開予定です。

所 ジョージ
1955年埼玉県生まれ。O型。ダウン・タウン・ブギウギ・バンドの前座を務め、1977年にシンガーソングライターとしてデビュー。演奏としゃべりを組み合わせた独自のスタイルで、タレント、コメディアンとして人気を博す。日本テレビ系バラエティ『世界まる見え!テレビ特捜部』、『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』などの司会をはじめ、日本を代表するタレントとして多数のバラエティ番組で活躍。また俳優、声優、ラジオパーソナリティ、作家、コピーライター、発明家、ゲームクリエイター、YouTuber、漫画家などの顔を持ち、多才ぶりでも知られる。
現在、『所さんの目がテン!』(日本テレビ系列)、『所さん!事件ですよ』(NHK総合)、『所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!』(テレビ東京系列)、『ポツンと一軒家』(朝日放送テレビ・テレビ朝日系列)、『所さんの世田谷ベース』(BSフジ)にレギュラー出演中。

山口 周
1970年東京都生まれ。電通、ボストンコンサルティンググループなどで戦略策定、文化政策立案、組織開発等に従事した後、独立。
著書に『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社)、『武器になる哲学』(KADOKAWA)、『ニュータイプの時代』(ダイヤモンド社)、『ビジネスの未来』(プレジデント社)、『クリティカル・ビジネス・パラダイム』(プレジデント社)他多数。最新著は『人生の経営戦略 自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』(ダイヤモンド社)。慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院美学美術史学専攻修了。
シリーズ紹介
楠木建の「EFOビジネスレビュー」
一橋ビジネススクール一橋ビジネススクールPDS寄付講座特任教授の楠木建氏の思考の一端を、切れ味鋭い論理を、毎週月曜日に配信。
山口周の「経営の足元を築くリベラルアーツ」
山口周氏をナビゲーターに迎え、経営者・リーダーが、自身の価値基準を持つための「リベラルアーツ」について考える。
協創の森から
社会課題の解決に向けたビジョンの共有を図る研究開発拠点『協創の森』。ここから発信される対話に耳を傾けてください。
新たな企業経営のかたち
パーパス、CSV、ESG、カスタマーサクセス、M&A、ブロックチェーン、アジャイルなど、経営戦略のキーワードをテーマに取り上げ、第一人者に話を聞く。
Key Leader's Voice
各界のビジネスリーダーに未来を創造する戦略を聞く。
経営戦略としての「働き方改革」
今後企業が持続的に成長していくために経営戦略として取り組むべき「働き方改革」。その本質に迫る。
ニューリーダーが開拓する新しい未来
新たな価値創造に挑む気鋭のニューリーダーに、その原動力と開拓する新しい未来を聞く。
日本発の経営戦略「J-CSV」の可能性
日本的経営の良さを活かしながら利益を生み出す「J-CSV」。その先進的な取り組みに迫る。
ベンチマーク・ニッポン
日本を元気にするイノベーターの、ビジョンと取り組みに迫る。
デジタル時代のマーケティング戦略
マーケティングにおける「デジタルシフト」を、いかに進めるべきか、第一人者の声や企業事例を紹介する。
私の仕事術
私たちの仕事や働き方の発想を変える、膨らませるヒントに満ちた偉才たちの仕事術を学ぶ。
EFO Salon
さまざまな分野で活躍する方からビジネスや生活における新しい気づきや価値を見出すための話を聞く。
禅のこころ
全生庵七世 平井正修住職に、こころを調え、自己と向き合う『禅のこころ』について話を聞く。
寄稿
八尋俊英の「創造者たち」~次世代ビジネスへの視点~
新世代のイノベーターをゲストに社会課題の解決策や新たな社会価値のつくり方を探る。


