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加治慶光 株式会社日立製作所 Lumada Innovation Hub Senior Principal / IGPIグループ会長 兼 日本共創プラットフォーム(JPiX) 代表取締役会長 冨山和彦氏 / 貫井清一郎 株式会社日立製作所 執行役常務 CIO兼ITデジタル統括本部長
2025年2月21日、「デジタルと協創で導く 企業変革と新たな価値創造」をテーマに日立製作所主催のイベントを開催した。ゲストはIGPIグループ会長 兼 日本共創プラットフォーム(JPiX) 代表取締役会長 冨山和彦氏。冨山氏による特別講演、およびLumada Innovation Hub Senior Principalの加治慶光、日立製作所執行役常務 CIO兼ITデジタル統括本部長 貫井清一郎、冨山氏の3名で行われたトークセッションのイベント採録を5回に渡ってお届けする。第3回は、加治と貫井による日立の企業変革のプレゼンテーション。

「第1回:日本企業の飛躍に向けた価値創造のためのDXとCX (前編)」はこちら>
「第2回:日本企業の飛躍に向けた価値創造のためのDXとCX (後編)」はこちら>
「第3回:日立の企業変革」

最近15年の日立

加治
それでは私の方から、ここ15年ほどの日立に関するお話をさせていただきます。日立は2009年、当時の製造業における最大の赤字7,873億円を計上しました。リーマンショックによって生じたこのダメージが、結果として日立に変革を起こす要因になるわけですが、当時の会長兼社長であった川村隆さんが書かれた『ザ・ラストマン』という本を読みますと、その詳細を理解することができます。

画像1: 最近15年の日立

2009年3月期の決算で赤字を計上した年の7月、これからの日立は社会イノベーション事業をめざすというプレスリリースを出しています。つまり企業変革のスタートを宣言しているわけです。ここから日立は当時5社あった上場連結子会社の完全子会社化から売却へと動きだし、ポートフォリオの入れ替えによってデジタルへと大きく舵を切りました。スマート・トランスフォーメーションという旗印の元でコスト構造改革と業務プロセス改革を進めます。これは、冨山さんの話されていたCX(コーポレート・トランスフォーメーション)の日立バージョンだと思います。

2016年ぐらいから、工場や経営のDXへの取り組みがはじまりました。元々は社会イノベーションをめざしていたわけではなかった日立が、2009年をきっかけにポートフォリオを5年ほどかけて変えていき、2016年からはLumadaという新しいデジタルの旗印の元で、IT・OT・プロダクトという日立の強みを生かした事業を進めてきました。時間はかかりましたが、よく見ると非常にオーソドックスな施策を地道にやってきたのが日立という企業だと思います。

画像2: 最近15年の日立

そしてLumadaの概略がこのスライドになります。お客さまの課題を解決するために、DXのめざす方向をお客さまとともに考えるデジタルエンジニアリング、実際に稼働させるためのシステムインテグレーション、それらをつなぐコネクテッドプロダクト、安定した運用のための保守管理を行うマネージドサービス。このサイクルをベースにして、どの工程からでもお客さまのDXをOne Hitachiで支援できるようその力を結集し、強化してきました。

画像3: 最近15年の日立

例えば2021年に買収したGlobalLogicによって、32,000人のデザイナーやエンジニアといった人財とシリコンバレーの創造性が、お客さまのDXやCXに生かせるようになりました。できるだけ早い段階からお客さまのビジネスの課題解決に取り組ませていただくことで、より効果的な提案が可能になり、またどの工程の課題であっても、このサイクルならその先の提案までを視野に取り組むことができます。

これがここ15年の日立のCXからDXへの流れになります。では、実際にこの変化と取り組まれてきた貫井さんにバトンを渡して、より詳しく日立のDXについて解説していただこうと思います。貫井さん、よろしくお願いします。

日立の3つのDX

画像1: 日立の3つのDX

貫井
簡単に自己紹介をさせていただきます。私は、1988年に今のアクセンチュアに入社し、27年に渡ってITコンサルティングに従事してきました。そして2015年に日立に転職しまして、5年前よりCIOの職に就いております。

画像2: 日立の3つのDX

それでは今加治さんから説明のあった日立のDXについて、私からお話しさせていただきます。日立の中でDXは、DX of Hitachi、DX by Hitachi、DX with Hitachiの3つに大きく分類できるかと思います。1つ目のDX of Hitachiというのは、日立の中の業務や仕事の正確性、緻密性、効率性をどうやってグローバルで上げていくかといった、主に社内のDXのことです。

2つ目のDX by Hitachiは、日立が世の中に提供する製品やサービスにデジタルの力を活用して、付加価値を高めていくDXです。例えば冷蔵庫の中にあるカメラによって、冷蔵庫の中身が外から確認できるといった新しい機能や、エレベーターやエスカレーターのセンサー情報による高度な監視・保守などを実現していく。それがDX by Hitachiです。

3つ目のDX with Hitachiは、お客さまとの協創によってユーザーや社会に対して貢献していくDXです。例えば日立レールには、車両のライブデータ収集機能とAI技術を組み合わせることで、鉄道事業者向けに列車、信号、インフラの管理を最適化するHMAX(Hyper Mobility Asset Expert)というAIソリューションがあります。コペンハーゲンメトロとの協創では、車両情報や稼働情報、乗降などのユーザー情報などをHMAXでリアルタイムに分析することによって、エネルギーの削減と利用者の快適性を同時に実現する運行制御を可能にしました。このようなお客さまと一体になった取り組みが、DX with Hitachiです。

byとwithは、社会に対する付加価値を上げていくという点では同じところをめざすものですが、DXの肝はデータの鮮度とカバレッジになります。DX by Hitachiの方は、日立のエレベーターの稼働情報のようにどちらかというと日立側にデータがある。一方でDX with Hitachiは、お客さまの方が情報を持っているということで区分けしています。お客さまのデータを預かっているシリアスな領域では、もちろん徹底して堅牢でセキュアなIT環境でやっております。

of は社内ユースですから、なるべく軽快に、そしていろいろな選択肢を用意するという方針で進めています。日立の中には、総務、人事、経理、法務などさまざまな業務がありますが、日立の法務の効率化のためにLLM(※)を作るということではなく、基本的に世の中にある技術やクラウドインフラなどを活用して、できるだけ新しいものを早く取り入れながら、軽快に進められることを優先して取り組んでいます。まだまだ道半ばではありますが、現在も日立はこのようなアプローチでDXへの取り組みを進めています。
※ Large Language Models:生成AIなどに活用される、自然言語をより正確に理解するための大規模モデル。

第4回は、6月11日公開予定です。

画像1: デジタルと協創で導く 企業変革と新たな価値創造
【第3回】日立の企業変革

冨山和彦(とやまかずひこ)
IGPIグループ会長 兼 日本共創プラットフォーム(JPiX) 代表取締役会長
ボストンコンサルティンググループ、コーポレートディレクション代表取締役を経て、産業再生機構COOに就任。その後経営共創基盤(IGPI)を設立し、代表取締役CEOとして活動。現在はIGPIグループ会長であり、日本共創プラットフォーム(JPiX) 代表取締役会長を務めるほか、パナソニックホールディングスやメルカリの社外取締役、日本取締役協会の会長も務める。さらに、内閣官房や内閣府、金融庁、国土交通省などの政府関係委員も多数務める。主著に『ホワイトカラー消滅 私たちは働き方をどう変えるべきか』『コーポレート・トランスフォーメーション 日本の会社をつくり変える』など。東京大学法学部卒、スタンフォード大学経営学修士(MBA)、司法試験合格。

画像2: デジタルと協創で導く 企業変革と新たな価値創造
【第3回】日立の企業変革

貫井 清一郎(ぬくいせいいちろう)
株式会社日立製作所 執行役常務Chief Information Officer 兼 ITデジタル統括本部長
1988年にアーサーアンダーセンアンドカンパニー(現アクセンチュア)入社。主にハイテク製造業における経営戦略、IT、業務改革などのコンサルティング業務に従事し、2010年に執行役員 通信・メディア・ハイテク産業本部 統括本部長に就任。2015年に日立製作所に入社し、エグゼクティブITストラテジストとして活動。2016年には理事となり、社会イノベーション事業推進本部副本部長に就任。未来投資本部アーバンモビリティプロジェクトリーダーを経て、2019年には執行役常務に就任。2021年から現職。

画像3: デジタルと協創で導く 企業変革と新たな価値創造
【第3回】日立の企業変革

加治 慶光(かじよしみつ)
株式会社日立製作所 Lumada Innovation Hub Senior Principal。シナモンAI 会長兼チーフ・サステナビリティ・デベロプメント・オフィサー(CSDO)、鎌倉市スマートシティ推進参与。青山学院大学経済学部を卒業後、富士銀行、広告会社を経てケロッグ経営大学院MBAを修了。日本コカ・コーラ、タイム・ワーナー、ソニー・ピクチャーズ、日産自動車、オリンピック・パラリンピック招致委員会などを経て首相官邸国際広報室へ。その後アクセンチュアにてブランディング、イノベーション、働き方改革、SDGs、地方拡張などを担当後、現職。2016年Slush Asia Co-CMOも務め日本のスタートアップムーブメントを盛り上げた。

シリーズ紹介

楠木建の「EFOビジネスレビュー」

一橋ビジネススクール一橋ビジネススクールPDS寄付講座特任教授の楠木建氏の思考の一端を、切れ味鋭い論理を、毎週月曜日に配信。

山口周の「経営の足元を築くリベラルアーツ」

山口周氏をナビゲーターに迎え、経営者・リーダーが、自身の価値基準を持つための「リベラルアーツ」について考える。

協創の森から

社会課題の解決に向けたビジョンの共有を図る研究開発拠点『協創の森』。ここから発信される対話に耳を傾けてください。

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パーパス、CSV、ESG、カスタマーサクセス、M&A、ブロックチェーン、アジャイルなど、経営戦略のキーワードをテーマに取り上げ、第一人者に話を聞く。

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今後企業が持続的に成長していくために経営戦略として取り組むべき「働き方改革」。その本質に迫る。

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日本を元気にするイノベーターの、ビジョンと取り組みに迫る。

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マーケティングにおける「デジタルシフト」を、いかに進めるべきか、第一人者の声や企業事例を紹介する。

私の仕事術

私たちの仕事や働き方の発想を変える、膨らませるヒントに満ちた偉才たちの仕事術を学ぶ。

EFO Salon

さまざまな分野で活躍する方からビジネスや生活における新しい気づきや価値を見出すための話を聞く。

禅のこころ

全生庵七世 平井正修住職に、こころを調え、自己と向き合う『禅のこころ』について話を聞く。

寄稿

八尋俊英の「創造者たち」~次世代ビジネスへの視点~

新世代のイノベーターをゲストに社会課題の解決策や新たな社会価値のつくり方を探る。

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