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「大みかグリーンネットワーク」の起点となる大みか事業所では現在、脱炭素化関連を中心に数十ものGX実証が進行中だ。今回は、事業所全体のCO₂排出量可視化や次代の水素エネルギー活用へ向けた実証など、代表的なプロジェクトを取り上げ、それぞれのアウトラインや進捗状況、めざしている目標について探る。

「第1回:世界をリードする先進の“総合システム工場”をめざして」はこちら>
「第2回:事業成長と脱炭素を両立するために」はこちら>
「第3回:大みか事業所の多彩な実証プロジェクト」
「第4回:脱炭素へ向けたステークホルダーとの協創」はこちら>
「第5回:さらなる協創を広げて、共に脱炭素社会へ――」はこちら>

大みか事業所がステークホルダーと共に推進するGXプロジェクト「大みかグリーンネットワーク」には、「大みか事業所」「地域」「サプライチェーン」という3つの実証フィールドがあります。この起点となる大みか事業所では、脱炭素化だけでなく、高度循環や自然共生といった環境テーマに沿ったさまざまな実証を推進中です。

さらに大みかグリーンネットワークでは、事業所内での実証を通して得られた技術やノウハウを「大みかGXモデル」として体系化。地域での再生可能エネルギー利用拡大やサプライチェーンにおけるカーボンニュートラル達成を後押しするモデルケースとして広く適用していく計画です。

発展的に成長させていくパイロットケースとして

――「大みかグリーンネットワーク」では数多くの実証を展開していますが、大みか事業所内で推進する実証は、どのような取り組みなのでしょうか。

松本
大みか事業所内での実証は、主軸の脱炭素化のほか、高度循環や自然共生をテーマにしたものなど多岐にわたります。当事業所を視察されるお客さまにも実証内容や成果をご紹介していますが、地域の自治体や企業などのステークホルダーの皆さまには、今後自ら展開していく施策の1つのパイロットケースとして受け止めていただいているようです。

特に脱炭素化に関連した実証については、本事業所でのカーボンニュートラル達成を視野に、各実証の成果を具体策として取り込んでいきます。一方で、お客さまでもそれぞれカーボンニュートラルの目標を設定されていますので、大みか事業所で体系化する「大みかGXモデル」といった実証の成果をお客さまの目標達成に役立てていただくなど、今後も発展的に成長させていく活動と位置づけています。

画像: ――「大みかグリーンネットワーク」では数多くの実証を展開していますが、大みか事業所内で推進する実証は、どのような取り組みなのでしょうか。

CO₂排出量可視化からカーボンニュートラルへ

――大みか事業所の代表的な実証について教えてください。

沖林
まずはCO₂排出量の可視化で、これは東日本大震災以降に推進してきたエネルギーマネジメント施策の一環として継続してきた取り組みの延長線上にあるものです。例えば、スマートメーターなどへの設備更新が難しいガスのアナログメーターに、後付けのカメラ無線センサーを取り付けてガス消費量を効率的に自動収集したり、事業所の分電盤内に計900か所余りの電力センサーを設置や各種システムリソースと連携する統合データ基盤を構築するなどして精緻な現状把握に取り組みました。

センサー設置などの準備は生産活動を続ける事業所内での作業ですから、時間的な制約や各種の調整などに苦労しましたが、既存設備に後付けでセンサーを設置し、設備投資を抑制できること、また、稼働中の大みか事業所内で生産を止めることなくこうした実証ができたことで、導入の容易さやハードルの低さをお客さまにアピールできる効果も期待できます。

画像: 左:低圧受電盤内ブレーカーに設置された電力センサー。1時間ごとに計測をしている 右:都市ガスのアナログメーターも後付けの無線センサーで自動収集

左:低圧受電盤内ブレーカーに設置された電力センサー。1時間ごとに計測をしている
右:都市ガスのアナログメーターも後付けの無線センサーで自動収集

――可視化したCO₂をどのようにして削減していくか、というのが脱炭素化の本題かと思うのですが、そのあたりについてはいかがでしょうか。

沖林
CO₂排出量可視化の次のステップとして、大みか事業所ではカーボンニュートラル関連の実証をいくつか展開しています。具体的には、さまざまな手法でCO₂削減量を積み上げていくロードマップ策定・運用のほか、経営状況や電力価格などのコスト面を反映した計画策定シミュレーション、目標達成に向けたCO₂排出量計画・実績管理などです。これらの実証で得られた成果は、お客さまへのコンサルティングサービスとともに、これから本格展開していきたいと考えています。

画像: 左:大みか事業所の屋上に設置してある太陽光パネル 右:工場内の照明をLED照明に

左:大みか事業所の屋上に設置してある太陽光パネル
右:工場内の照明をLED照明に

中長期的なエネルギー転換を見据えた水素プロジェクト

――現在、大みか事業所で特に力を入れているのはどのような実証ですか。

松本
現在進行形で取り組んでおり、今後本格化させていく「系統安定化型水素エネルギーマネジメントシステム」です。中長期的なエネルギー転換を見据えて、水素エネルギー関連装置の導入・運用に関する実証に取り組んでいます。

大みか事業所で利用する再生可能エネルギーは、太陽光発電がメインですが、電力系統の新たな選択肢として水素に着目し、目下事業所内に水素利活用社会のミニケースを構築中です。この実証は4つのステップで進めています。すでに水素・蓄電池容量の最適化検討などで経済性を評価する第1ステップ、水素エネルギー関連装置の導入による系統への影響や回避策を事前に検証する系統解析の第2ステップまで完了しており、これから実際に水電解装置や燃料電池を導入しシステム運用を検証する第3ステップ、さらに最終ステップのお客さまへのシステム導入をめざしています。

画像: 再エネ普及に向け、今後ますます重要度が高まる蓄電池装置

再エネ普及に向け、今後ますます重要度が高まる蓄電池装置

沖林
このミニケース構築では、水素システム導入時のシステム構成を各系統への影響やそのリスク回避策、さらに運用コストの最小化や総収益の最大化といった経済性も加味しながら事前に検討・評価するシミュレーション実証に着手しました。今後もこうした実証を通じて、実効性と経済合理性を兼ね備えた系統安定化型水素エネルギーマネジメントシステムを追求していく方針です。

画像: ――現在、大みか事業所で特に力を入れているのはどのような実証ですか。

松本
そもそも大みか事業所は、発電の監視制御にいち早く取り組んできた生産拠点です。その歴史の中で培ってきた技術やノウハウの蓄積は、今回の実証でも存分にその力を発揮しました。そういう意味でも、この水素エネルギー利活用は大みか事業所の今後のGX事業の大きな柱として育てていきたいと考えています。(第4回へつづく

大みかグリーンネットワーク

第4回:脱炭素へ向けたステークホルダーとの協創」はこちら>

画像1: サプライチェーン全体のカーボンニュートラルをどう実現するか
【第3回】大みか事業所の多彩な実証プロジェクト

松本一人(まつもと かずひと)
株式会社 日立製作所 制御プラットフォーム統括本部 事業主管 兼 大みか事業所長
1996年、日立製作所 大みか事業所に入社。産業用コンピュータ・プラント制御用コントローラなどの設計開発に従事。2017年からは社会インフラ向け保守サービス事業の立ち上げに注力。2019年からは発電制御システム本部長に就任し、電力分野へのDX/GX導入を推進。2023年より現職。

画像2: サプライチェーン全体のカーボンニュートラルをどう実現するか
【第3回】大みか事業所の多彩な実証プロジェクト

沖林久徳(おきばやし ひさのり)
株式会社 日立製作所 制御プラットフォーム統括本部 サービス・制御プラットフォームシステム本部 GX事業推進部 部長
2005年、日立製作所 大みか事業所に入社。鉄道運行管理システムのほか、社会インフラシステム向け共通基盤・情報制御LANの設計開発に従事。2017年からは大みか事業所内で20年来実践してきた高効率生産モデルをベースとする生産改革ソリューションの対外発信・外販化に注力。2019年からは中国市場における製造業向けデジタルソリューション事業の立ち上げに参画し、グローバルな製造DX・IoTビジネスを経験。2023年より現職。

シリーズ紹介

楠木建の「EFOビジネスレビュー」

一橋ビジネススクール一橋ビジネススクールPDS寄付講座特任教授の楠木建氏の思考の一端を、切れ味鋭い論理を、毎週月曜日に配信。

山口周の「経営の足元を築くリベラルアーツ」

山口周氏をナビゲーターに迎え、経営者・リーダーが、自身の価値基準を持つための「リベラルアーツ」について考える。

協創の森から

社会課題の解決に向けたビジョンの共有を図る研究開発拠点『協創の森』。ここから発信される対話に耳を傾けてください。

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パーパス、CSV、ESG、カスタマーサクセス、M&A、ブロックチェーン、アジャイルなど、経営戦略のキーワードをテーマに取り上げ、第一人者に話を聞く。

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経営戦略としての「働き方改革」

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