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「環境リテラシーの高いZ世代と大人世代の架け橋となり、共にアクションを起こすプラットフォームになる」が、一般社団法人SWiTCHのコミットメントの1つだ。代表理事である佐座槙苗氏は、ロンドン大学大学院でサステナブル開発を専攻、2020年に開催予定だったCOP26がコロナによって延期されたことを良しとしなかった140カ国の環境専門の若者たちと連携し、オンラインでMock COP26を開催。「本格的な18の政策提言」をまとめた人物。COP26にも日本のユース代表として参加、各国首相やリーダーとも対話し、精力的に活動した。さらにいま、日本全体の環境リテラシーの向上をめざして奮闘している。

「第1回:Z世代のサステナリテラシーを更に上げたい」
「第2回:少子化で若者の奪い合いになる日本」はこちら>
「第3回:日本をサステナ先進国にする道を探る」はこちら>

“地球のことを自分ごとに”する活動

「一般社団法人SWiTCHの運営目的はプラットフォームとして若者と企業・自治体、そして大学をつなげていく架け橋となることです。ただ、日本人は国内で緩やかにSDGsを意識した生活をしているだけの人が多い。もっと視野を広げて地球の流れを知り、日本人として何をすればいいのか。世界はひと続きにつながっていることをもっと考えていただきたいのです。そこで、ミッションとして掲げているのが“地球のことを自分ごとに”なんです」

気負いも、構えも感じさせることなく、柔らかな口調で佐座槙苗さんは自身の活動について笑顔で語りだした。

彼女は、2021年11月に英国グラスゴーで開かれたCOP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)に日本のユース代表として参加した。現地の日本パビリオンでペルーやガーナの若者代表や東京大学の研究者と気候変動ついてディスカッションを行った。

彼女が注目されたきっかけは、さかのぼること1年、2020年10月にコロナ禍においてCOP26が延期されたことに異議を唱え、若者世代を結集してMock COP26がオンラインで開催されたこと。140カ国から330人の環境を専門とする若者が参加したが、佐座さんはアジア51カ国をまとめて、国連のCOP運営事務局とも折衝するグローバルコーディネーターを務め、条約締結国に向けて気候変動の教育などに関する18の政策提言を行った。そして、「日本でやれることがあるはずだ」と、2021年1月に非営利団体の「SWiTCH」を設立する。

画像: 渋谷COP2022など、SHIBUYA QWSから世界へ発信していく

渋谷COP2022など、SHIBUYA QWSから世界へ発信していく

環境リテラシーが高いZ世代の意見を企業活動に反映させたい

佐座さんが出迎えてくれたのは、JR渋谷駅の直上にできた渋谷スクランブルスクエア15階にある「SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)」。さまざまな企業、大学、自治体などが集い、若者の街というイメージを持たれている渋谷を、世界的に先端な街として発信することをめざした、シェアオフィスやイベントホールなどからなる会員制の共創施設だ。ここをSWiTCHも活動の拠点としている。

「弊社は2つコミットメントを掲げています。1つは環境リテラシーの高いZ世代と大人世代の架け橋となるアクションを促すこと。Z世代を含めて若者の多くは、ESD(Education for Sustainable Development)教育を受けてきています。SDGsを基盤とした考え方を身に着けていますが、なかなかそれが企業活動に反映されていません。多くの企業が脱炭素の計画には強い推進力で取り組んでいますが、サステナブルに関してはまだまだのところが多いのが現実です。そこを変えなければ循環性のある社会作りができません。ですから、私たちは若者たちの意見を、もっと社会に反映できるような発信をしていきたい」

2つ目のコミットメントが、気候変動の影響を受けている国について、もっと認知と理解を深めて行動を促すことだ。

「日本は世界におけるCO2排出量が5位にもかかわらず、その影響について考えている人がほとんどいません。MAPA(Most Affected People and Areas最も影響を受ける人々と場所で、南半球に偏在している発展途上国)に気候変動を始め、ものすごい負荷を与えてしまっています。その46カ国を合わせても、全世界のたった1.1%しかCO2を排出していないのにです。日本はその3倍も排出しているので、責任はとても重いはず。ただ、考え方をスイッチすれば、日本は自分の国や世界を変える大きなチャンスになる。日本はその鍵を握っているわけで、それを有効活用しないと、後々まで日本はなぜ変われなかったのかと指弾されるのは目に見えています」

画像: 駐日スウェーデン大使とイケア・ジャパンCEOを招いたワークショップも

駐日スウェーデン大使とイケア・ジャパンCEOを招いたワークショップも

100万人のサステナブルアンバサダー育成の先を見据える

そのためにSWiTCHが始めたのが、サステナブルの専門家を招いて、Z世代にレクチャーをしてもらう「教えてサステナブル先生!」というオンライン授業。既に12回を数えており、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のメインレポートの執筆者や、NHKで地球温暖化に関する番組を制作するプロデューサーなどを招いてきた。

また、他国の文化も知ってもらおうと環境先進国スウェーデンから駐日大使とイケア・ジャパンCEOを招くなどして「教えてサステナブルWORLD」という対話型のワークショップも行っている。

さらに、2025年の大阪・関西万博(※)に向けて「100万人サステナブルアンバサダー育成」のプロジェクトも立ち上がっている。

「大学生、大学院生、新入社員などZ世代の若者を中心に、温室効果ガスの削減、資源の循環、生物多様性の3つを中心テーマに、多様性のある持続可能な社会を実現させるためのアンバサダーを育成することで、それぞれが所属する組織・地域に循環型のシステムを構築してもらうことを目的にしています。ハーバード大学の研究に、人口の3.5%を動かしたら、その社会は変わるというものがあるそうです。日本の人口の3.5%は約440万人。私たちは、100万人は通過点と捉えていて、ゆくゆくは440万人のアンバサダーを育成したい」

そうしたメッセージを、よりマスに向けた発信をすることも意識している。直近ではツイッターが取り組んでいる「#POWEREDBYTWEETS」という、ツイッターを通して社会貢献を行うプロジェクトのパートナーにも選ばれた。「サステナビリティ」をテーマにして、選ばれたアイデアが同社のキャンペーンとして実施される予定だ。(第2回へつづく)

※ 2025年日本国際博覧会

「第2回:少子化で若者の奪い合いになる日本」はこちら>

画像: すべての世代とサステナブルな世界をつくりたい
【第1回】Z世代のサステナリテラシーをさらに上げたい

佐座槙苗(さざ・まな)
幼少期を福岡県で過ごし、インターナショナルスクールを経て、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学にて人文地理学を学ぶ。2019年ロンドン大学大学院 サステナブルディベロプメントコースに進学。コロナ禍でいったん日本に帰国。140カ国の若者が気候変動について議論する「Mock COP26」の立ち上げに参加した後、2021年1月一般社団法人SWiTCHを設立し代表理事に就任。

シリーズ紹介

楠木建の「EFOビジネスレビュー」

一橋ビジネススクール一橋ビジネススクールPDS寄付講座特任教授の楠木建氏の思考の一端を、切れ味鋭い論理を、毎週月曜日に配信。

山口周の「経営の足元を築くリベラルアーツ」

山口周氏をナビゲーターに迎え、経営者・リーダーが、自身の価値基準を持つための「リベラルアーツ」について考える。

協創の森から

社会課題の解決に向けたビジョンの共有を図る研究開発拠点『協創の森』。ここから発信される対話に耳を傾けてください。

新たな企業経営のかたち

パーパス、CSV、ESG、カスタマーサクセス、M&A、ブロックチェーン、アジャイルなど、経営戦略のキーワードをテーマに取り上げ、第一人者に話を聞く。

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各界のビジネスリーダーに未来を創造する戦略を聞く。

経営戦略としての「働き方改革」

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日本を元気にするイノベーターの、ビジョンと取り組みに迫る。

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マーケティングにおける「デジタルシフト」を、いかに進めるべきか、第一人者の声や企業事例を紹介する。

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私たちの仕事や働き方の発想を変える、膨らませるヒントに満ちた偉才たちの仕事術を学ぶ。

EFO Salon

さまざまな分野で活躍する方からビジネスや生活における新しい気づきや価値を見出すための話を聞く。

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新世代のイノベーターをゲストに社会課題の解決策や新たな社会価値のつくり方を探る。

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