創業以来、飲食店を中心とする協力事業者も広がり、テーブルクロスの事業は順調に成長を遂げてきた。だが、2020年から続く新型コロナウイルス感染症の世界的なパンデミックにより、飲食業界は甚大な影響を受けている。ところが、そうした厳しい経済環境でも、自社の強みを生かした事業支援が奏功しているのだ。「日本をよくしたい」という思いで、城宝氏は挑戦を続けている。

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「第3回:“四方よし”のエコシステムを広げたい」

コロナ禍において過去最高収益をあげた意外な理由

長引くコロナ禍で疲弊している飲食店は多い。飲食店予約プラットフォームがメインの株式会社テーブルクロスも、同様に打撃を受けていると思われるだろうが、城宝氏からは意外なこたえが返ってきた。

「確かに国内の飲食店予約アプリである『テーブルクロス』は影響が大きく、現在はクローズしています(2021年12月27日現在)。一方で、『byfood.com』は順調に事業成長していて、2020年度は過去最高益を達成しました。その要因としては、農林水産省や地方自治体に海外マーケティングを強化する機運が高まって、弊社がそのお手伝いをすることが多くなっているからです」

国内需要が滞る中、輸出に活路を見出す事業者も増えている。日本食を海外に向けてPRする事業体である株式会社テーブルクロスには、その支援を担うだけのリソースが存在していたことも大きかった。

マーケティングデータの蓄積で信頼を得る

「弊社のCOOであるトルコ出身のセルカン・トソを中心に、これまでも食に特化したマーケティングを手がけ、集客を担ってきていました。そのおかげで、人がどうやって動くのか?どう表現すると、マーケティングとして成功するのか?というデータが蓄積されていたのです。その強みもあり、この状況下においても、新規事業などの支援が可能になりました。生産者と一緒に新商品を開発、あるいはキッチンカーを展開した事もあります。小売りと飲食を掛け合わせたような新しい飲食店の出店サポートなどの積み上げによって、結果が残せたのだと思います」

創業当時からコツコツと積み上げてきた成果が出たことを、素直に喜ぶ城宝氏だが、めざすゴールはまだまだ先だ。

「今後『byFood.com』は、日本国内から海外に商品を販売する越境ECも始める予定です。訪日する前後でも、日本の食を楽しめるような仕組みをつくっていきたい。例えば、ある地方のオーガニック農園からの映像をオンライン配信し、海外の視聴者にその畑の商品が届くというような、ITで世界との距離を縮める環境づくりに挑戦していきます」

画像: 持続可能な形で、みんなが幸せになれる仕組みを構築することが究極の目標

持続可能な形で、みんなが幸せになれる仕組みを構築することが究極の目標

原点である「CSV」をもとに、SDGsを大切にしていきたい

「これからはSDGsがますます重要だと思っています。サステナブルに、いかに社会課題を解決していくことができるか。そしてまた、利益の創造と社会貢献を同時に実現する“CSV”の考え方に基づいて経営を続けていきたいと思っています」

社会課題を解決して、なおかつ、課題解決した先にも喜ばれるようなアプローチを年々増やしていくことが目標なのだという。テーブルクロスの雇用を増やすことを通じて、ジェンダー平等や女性の社会進出にも貢献ができると考えてもいる。これまでも、SDGsの2番目の課題である「飢餓」、そして4番目の「教育」ジャンルで、テーブルクロスは課題解決に挑んできた。「Food for Happiness Program」を持続するためにも利益をきちんと出していくことが必要なのだ。

「売り上げの一部を寄付するモデルにとどまらないことは常に意識しています。弊社のような考え方のビジネスモデルは、日本でまだまだ先行事例・成功事例が少ないと感じています。1社目のフロントランナーとして目標にされ、影響を与える存在になりたいです。少子高齢化や、地域の過疎化など、我々だけでは解決できない社会課題もたくさんあります。そうした分野を担ってくれる2社目・3社目がどんどん生まれていってほしいのです」

画像: 支援額を増やし、世界中の子どもたちの笑顔を増やしたい

支援額を増やし、世界中の子どもたちの笑顔を増やしたい

利用者・事業者・子どもたちの四方よしを実現したい

飲食店のみならず、体験、グルメツアーなど予約が必要な業態は多い。“予約が社会貢献につながる”仕組みはまだまだ開拓途上なのだ。

城宝氏は、自分一人でできるキャパシティを超えた事業になっていることを実感している。2014年の創業当時から、支えてきてくれた仲間たち、飲食店などの事業者、全てのステークホルダーへの感謝の気持ちを口にしながら、みんなが笑顔で幸せになる世界を願っている。

「途上国の子どもたちに給食を届けるための寄付総額は、これまでに合計1000万円ほどです。どうすればこれを1億円、10億円まで高めていけるか。目の前の利用者を大切にしながら、私たちにしかできない顧客体験企画を考え、付加価値の仮説検証を繰り返しながら、プラットフォームを大きくしていきたいです。利用者よし、事業者よし、子どもたちよし、そして弊社の四方よしのwin-win-win-win利益を生みながら社会貢献できる新しいエコシステムをつくっていきたいと考えています」

「食を通じて幸せを!」をミッションに掲げるテーブルクロス城宝薫氏の、挑戦は続いていく……。

画像: 「食」で世界の笑顔をつなぎ、社会課題に“CSV”で挑む
【第3回】“四方よし”のエコシステムを広げたい

城宝 薫(じょうほう かおる)
立教大学経済学部卒。高校時代の米国フロリダ州オーランドでの親善大使、大学時代のアルバイトなどを通じて、ビジネスと社会貢献を両立させる「CSV」への関心が高まり、大学3年生の6月に株式会社テーブルクロスを起業。モバイルアプリ「テーブルクロス」、グルメプラットフォーム「byFood.com」の運営を行う。食体験と、途上国の子どもたちへの給食支援をつなぐ事業、さらに地域創生へもアプローチするなど、精力的に活動している。

シリーズ紹介

[特集]ポストコロナの社会とビジネス

破壊の先にある創造へ――。「グレート・リセット」後に求められる社会とビジネスのあり方を、各界の有識者の言葉から探ります。
※グレート・リセット:2021年夏に開催される予定の次回世界経済フォーラム年次総会、通称ダボス会議におけるテーマ

楠木建の「EFOビジネスレビュー」

一橋ビジネススクールの楠木教授の思考の一端を、切れ味鋭い論理を、毎週月曜日に配信。

山口周の「経営の足元を築くリベラルアーツ」

山口周氏をナビゲーターに迎え、経営者・リーダーが、自身の価値基準を持つための「リベラルアーツ」について考える。

八尋俊英の「創造者たち」~次世代ビジネスへの視点~

八尋俊英日立コンサルティング社長を導き手とし、新世代のイノベーターをゲストに社会課題の解決策や新たな社会価値のつくり方を探る。

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全生庵七世 平井正修住職に、こころを調え、自己と向き合う『禅のこころ』について話を聞く。

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明治期に始まる産業振興と文明開化、日本社会の近代化に多大な影響を及ぼした岩倉使節団。産業史的な観点から、いま一度この偉業を見つめ直す。

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