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気象予報士・フリーアナウンサー 酒井千佳 / 株式会社 日立製作所 執行役常務 金融ビジネスユニットCEO 山本二雄
毎日の中で一人ひとりが省エネやムダの削減などに取り組むには、まずエネルギーの消費やムダに対する意識を持つことが必要。酒井さんは、そうした「気づき」に寄与する小学校の出前授業にも取り組んでいます。

「第1回:アナウンサーから気象予報士へと駆り立てたもの」はこちら>
「第2回:過去に経験したことがない異常気象が頻発する時代に」はこちら>

地球温暖化の抑止は一人ひとりが実行する段階に

画像: 地球温暖化の抑止は一人ひとりが実行する段階に

山本
気象への温暖化の影響は、もうすでにはっきりと出ていて、それが農業や水産業をはじめ、さまざまな産業にも影響を及ぼしています。

酒井
そうですね。たとえば、今年の冬は、本来の積雪地帯に雪がまったく降らず、スキー場でも雪がないという事態になりました。しかし、問題はそれだけにとどまりません。冬の間、降水がないと夏場になって水不足が発生する可能性もあります。雪が降らないという問題は、冬だけにとどまらず、年間を通じて地域の生活に影響を及ぼします。

山本
今年のダボス会議も、話題は地球温暖化一色といっていいほどでした。異常気象の影響がさまざまな方面に出始めていて、世界中の人々が危機感を深めています。

酒井
地球温暖化というと、これまでは「まだ先のこと」と感じる人や、自分の身の回りとは縁がない、ニュースの中の話と感じていた人が多かったのではないでしょうか。しかし、すでに暖冬とか勢力を増す台風のような形で、私たちの日々の生活にも影響を及ぼし始めています。温暖化は、もはや私たち自身の身の回りの切迫した問題で、それを押しとどめるために、いまできることを一人ひとりが実行していく段階になっています。個人ではあまり大きなことができないかも知れませんが、一人ひとりが日常生活の中で毎日積み重ねていけば、大きな効果が生まれると思います。私自身も、自分ができる範囲でムダを減らし、省エネを心がけるようにしています。そうすることで変わっていくと思います。

毎日の暮らしの中での「気づき」が、行動を生む

画像: 毎日の暮らしの中での「気づき」が、行動を生む

山本
まったく同感です。いま、個人レベルでも真剣に取り組んでいかないと、持続可能な社会を将来の世代に残していけません。私は、スマホのアプリをダウンロードする時に、必ずこのアプリは環境負荷の軽減に、どう役立つのだろうかと考えるようにしています。たとえば、家の中にあるエアコン、テレビ、照明など、さまざまな家電のスイッチを、スマホでオンオフできるアプリがあります。エアコンのスイッチを切り忘れて外出してしまった時でも、このアプリを利用すれば外出先からエアコンのスイッチを切れるわけです。そうすると、誰もいない部屋で一日中エアコンをつけたままにして、エネルギーをムダ使いすることが避けられます。スマホのアプリ一つとっても、環境への影響を考えてみるようにすれば、環境負荷に対する意識が生まれてくるのではないかと考えています。

酒井
確かに、そういうふうに意識することは、たいへん重要ですね。

山本
そういう意識を持つことで、単に便利だというだけでなく、環境について考えるきっかけが生まれますからね。便利に使っているアプリでも、トータルに考えるとひょっとしたら環境に負荷をかけている可能性だってあります。ある面では環境負荷を減らしても、別の面では電力を消費していて、トータルに考えるとCO2の排出を増やしているということもあり得ます。そこは、そのアプリの機能を働かせるトータルの仕組みを考えて、全体でどのようにエネルギーを消費しているのか、というところまで考える必要があります。それをさらに進めていけば、アプリそれぞれがどれだけ環境負荷の軽減に貢献しているかというデータに基づいて、「環境貢献マーク」みたいなものを付けて、使う人にわかりやすく伝えるというようなことも考えられます。そういうことを通じて、利用する人の意識を喚起するのに大いに役立つのではないかと思います。

酒井
それは面白いアイデアですね。山本さんがおっしゃったように、トータルにエネルギーの出入りを考えていくことは、たいへん大事なことだと思います。私は小学校で出前授業という取り組みをしているのですが、その時に必ず温暖化の問題について考えてもらうようにしています。その場合は、生活のどういうところで、どんなエネルギーを使っているかということを考えてもらいます。たとえば、家族がコーヒーを飲みますね。その場合、エネルギーを使うのは、お湯を沸かしてコーヒーを淹れるところだけではなく、コーヒー豆を栽培したり、収穫したりする際にも、エネルギーを消費します。また、コーヒー豆を加工する時や日本まで運んでくる時にもエネルギーは必要です。さらに、コーヒーを飲んだ後は、使ったカップを洗うため水を使います。その水はどうやって家まで届いているのか、その過程でどんなエネルギーが使われるのか。そうやって全体像を思い描いて一つひとつ考えていくと、どこでどうエネルギーを減らせるかということも見えてきます。また、自分たちの生活の中ですぐに行動に移せることがあるという気づきも生まれると思います。

山本
そういう気づきから、行動が変わっていくわけですね。温暖化防止や環境貢献ということは、まさに人々がこれからどう行動していくかが問われているわけです。いままでの発想では、暮らしを豊かにするというと、どうしても物がふんだんにあるとか、高価な物があるというように、「物」をベースにして考えてきました。しかし、これからは、どう行動するか、何をするかという「事」をベースにして、豊かさを考えていく時代になりました。酒井さんの出前授業は、そういう「事」ベースの発想を育てるうえでも役立ちますね。

酒井
はい。まさに自分たちのこととして環境問題を考えていくことに役立てば、と思って取り組んでいます。

画像1: 「次の行動」に結びつくメッセージを毎日の暮らしに伝える気象予報【第3回】一人ひとりの毎日の行動が温暖化を抑止する力になる

酒井千佳(さかい・ちか)

兵庫県出身。京都大学工学部卒業後、北陸放送にアナウンサーとして入社。2009年、第31回気象予報士試験に合格。その後、テレビ大阪契約アナウンサーを経て、2012年よりフリーアナウンサー、気象予報士として活動。テレビ朝日、日本テレビ、NHK等のニュース・情報番組にて気象コーナーに出演。現在はフジテレビ「Live News it!」お天気コーナーを担当。2018年、株式会社トウキトを設立し、陶芸情報ポータルサイト運営など陶芸に関する情報発信等にも取り組む。

画像2: 「次の行動」に結びつくメッセージを毎日の暮らしに伝える気象予報【第3回】一人ひとりの毎日の行動が温暖化を抑止する力になる

山本二雄(やまもと・つぎお)

1978年 株式会社 日立製作所入社、2001年 システムソリューショングループ 金融システム事業部 金融第一システム本部システム技術統括部 チーフプロジェクトマネージャ、2004年 情報・通信グループ 金融ソリューション事業部 NEXTCAPソリューション本部 担当本部長、2015年 理事 情報・通信システムグループ 情報・通信システム社 システム&サービス部門COO 、2016年 理事 金融ビジネスユニットCEO 兼 公共ビジネスユニットCEO、2017年より 執行役常務 金融ビジネスユニットCEO。

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シリーズ紹介

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一橋ビジネススクール一橋ビジネススクールPDS寄付講座特任教授の楠木建氏の思考の一端を、切れ味鋭い論理を、毎週月曜日に配信。

山口周の「経営の足元を築くリベラルアーツ」

山口周氏をナビゲーターに迎え、経営者・リーダーが、自身の価値基準を持つための「リベラルアーツ」について考える。

協創の森から

社会課題の解決に向けたビジョンの共有を図る研究開発拠点『協創の森』。ここから発信される対話に耳を傾けてください。

新たな企業経営のかたち

パーパス、CSV、ESG、カスタマーサクセス、M&A、ブロックチェーン、アジャイルなど、経営戦略のキーワードをテーマに取り上げ、第一人者に話を聞く。

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各界のビジネスリーダーに未来を創造する戦略を聞く。

経営戦略としての「働き方改革」

今後企業が持続的に成長していくために経営戦略として取り組むべき「働き方改革」。その本質に迫る。

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私たちの仕事や働き方の発想を変える、膨らませるヒントに満ちた偉才たちの仕事術を学ぶ。

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