IoTの活用はすでに始まっている
池田
IoT(Internet of Things)という言葉をよく耳にするようになりました。内閣府の「日本再興戦略2016」でも、第4次産業革命の実現に向けた重要なキーワードの一つにIoTが挙げられています。ただ、すでに取り組みを始めた企業もある一方で、自社にとってどのような価値があるのかわからないという方も多いようです。
IoTは、「モノのインターネット」とも訳され、ガートナーでは次のように定義しています。「モノのインターネットとは、物理的オブジェクト(モノ)のネットワークである。モノには内部状態や外部環境をセンシングし、通信し、何らかの作用を施すためのテクノロジーが埋め込まれている」。
単にモノをつないでいるのではなく、その内部や周辺で起こっているコト(データ)をつないでいるのです。そして、自動車から工場、ビル、倉庫、店舗、さまざまなデバイス、人や動物まで、すべてがつながる世界(Connected World)が実現されると、得られるデータの時間変化、空間分布、相関関係を分析することで、ビジネスに多様な可能性をもたらすことが期待されます。
IoTに関連する技術の多くはまだ発展途上で、これから数年かけて成熟していくと見られています。しかし、その間、何もせずに待つのではなく、今のうちから取り組みを始めておくことが重要です。本日はIoT先進企業の皆さまから、先駆的な取り組みの実例やIoTとの向き合い方について教えていただきます。
内田
SAPジャパンの内田です。SAPというと、皆様はERP(Enterprise Resource Planning)の会社だと思われているでしょう。それが今、大きく変わりつつあります。実際、2010年は売上高1.4兆円の約9割をERPが占めていましたが、2015年には売上高2.7兆円と約2倍に伸びるとともに、ERP以外がその約6割を占めるようになりました。SAPは、企業の基幹業務システムをパッケージソフトウェアの形で提供していた会社から、持てる技術を活かして皆さまの新しいビジネスモデルを一緒に作り上げていく会社へと変容しつつあります。
そのキーテクノロジーが「SAP HANA®」、インメモリ技術などによる超高速データ処理を特徴とする、データ処理プラットフォームです。
(映像)SAP HANAは予測解析やテキスト検索、データモニタリング、アプリケーション開発などの豊富な機能を提供できるプラットフォームで、例えば、人口800万の都市における交通の流れを1分足らずで調整することや、患者一人ひとりに合わせた治療を数分で特定することもできます。
内田
我々がめざすデジタルビジネスの変革には、ビジネスモデル再創造・ビジネスプロセス再創造・ワーク再創造という三つのシナリオがあります。オートバイメーカーのハーレーダビッドソン社とは、ビジネスプロセスの再創造に取り組みました。IoTによるスマートファクトリー化によって、フルカスタムオーダーに対するリードタイムが2~3週間かかっていたものを、6時間にまで短縮しました。ハンブルグ港湾局とのワークの再創造では、港湾にかかわるさまざまな企業をつなぐことで、設備を拡張せずに処理効率を約3倍に高めることができました。
そのほか、多くの世界的企業とIoTによる「コ・イノベーション」に取り組んでいますが、特にご紹介したいのはスポーツアパレルのアンダーアーマー社との事例です。同社は、ウェアラブル技術を取り入れた新しい健康管理サービスによって、2006年から10年間で売上高を10倍超に伸ばしました。そのサービスとは、ウェアラブル端末でユーザーの運動量や健康状態のデータを取得し、それらをSAP HANAプラットフォームに集約することで、パーソナライズされたアドバイスをユーザーに提供するというものです。この新しいビジネスモデルと顧客体験の創出を後押ししたのが、デザインシンキング(デザイン思考)を組み込んだコンサルティング手法です。それについては、のちほどお話しします。
小出
セールスフォースの小出です。私どもはクラウド事業を主体としており、経済誌『Forbes』による「最も革新的な企業」の第1位に2011年から4年連続で選ばれました。企業名が表すとおり、セールス、営業支援を原点に、お客さまに寄り添うという視点を大切にしながらポートフォリオを拡大してきました。現在では、サービス、マーケティング、ビジネス分析、IoTなどの七つのアプリケーションを一つのプラットフォームで提供しています。
本日のテーマであるIoTに関しては、現時点では、多くの企業でデータ収集が投資の中心になっていると感じます。そのデータを活用して、顧客体験や企業価値の向上、ビジネストランスフォーメーションにつなげていくことが、これからの課題です。
私どもは、企業としてのスタート段階から顧客接点を重視してきたことから、IoTにおいてもフロントエンドの部分、例えば顧客支援やコンタクトセンター支援などのソリューションに注力しています。その事例として挙げられるのが、顧客との接点でIoTを活用し、効果を上げているサトーホールディングス株式会社の取り組みです。
(映像)バーコードやRFIDなどの自動認識機器のトップメーカーであるサトーホールディングスがIoT時代の新しいサービスとして提供し始めたのが「SOS(SATO Online Services)」です。クラウドを使ってラベルプリンタの稼働状況を常に分析し、リモート保守、予防保全で安定稼働を実現するサービスで、24時間365日、あたかもバーチャルカスタマーエンジニアがお客さまの現場に常駐するような環境を提供します。このサービスの出発点は、ラベルプリンタを止めないという顧客体験をいかにして実現するかということにあります。IoTという技術が先ではなく、目的を達成するための手段としてIoTを用いた点が重要です。
小出
熊本地震の際、ある顧客のプリンタが棚から落下してしまいました。何とか棚に戻してネットワークにつなげたとき、最初に聞こえたのは、「お客さま、このプリンタは正常稼働いたします。安心してお使いください」というオペレータの言葉でした。IoTでリモート収集したデータを解析して、サトーホールディングスのほうから顧客にコンタクトしたのです。これが、私どもの考える、「顧客とつながるIoT」の形です。
鈴木
シスコシステムズの鈴木です。シスコはインターネットの歴史とともに発展してきた、ネットワーク機器の会社ですが、将来を見据えてIP電話やビデオ会議システム、サーバ、セキュリティ製品や、クラウド、ソフトウェアなどにもポートフォリオ製品を広げています。
それらを活かして、現在、京都府と一緒に、人と情報とインターネットと機械を接続してつくるスマートシティソリューションを推進しています。
(映像)京都府では、京都市だけでなく府全体を活性化するため、利便性の高い観光サービスや住民サービス、効率的なオペレーションなどの提供をめざしています。今後、精華町でのスマートライティングの展開をはじめ、ヘルスケア、教育、水資源・橋梁・港湾管理、交通などのさまざまな課題に対してIoTを活用したソリューションを共同で開発し、新しい街づくりに取り組んでいく計画です。スマートライティングは、センサーとネットワークで街灯の省エネルギー制御を行うだけでなく、IPカメラによる防犯、治安の向上にも貢献します。
鈴木
そのほか、株式会社日立システムズとは、マンホールの蓋にセンサーを埋め込み、クラウド型の遠隔監視によって保全や盗難対策につなげるソリューションを開発しました。このようなソリューションは私たち単独ではできません。日立のような実業の豊富な経験を持つ企業、マンホールの蓋を製造する企業、システムインテグレーター企業と組むことで初めて実現できます。私たちの強みは、いろいろなモノやコトをつなぐことにあります。それによって新しい可能性や価値、顧客体験が生み出されると確信しています。
IoTとデジタル化による変革が期待される製造業では、ファナック株式会社との協業で、産業用ロボットをネットワークに接続して、搭載したセンサーからのデータを分析、故障を予知することでゼロダウンタイム化をめざすソリューションを提供し始めました。発表に先立つ大手自動車メーカーとのパイロットプロジェクトでは、1年間、ゼロダウンタイムを実現しています。ファナックとは、IoTとビッグデータ処理、人工知能などの技術を組み合わせ、製造業の生産性向上と効率化を実現するFIELD(FANUC Intelligent Edge Link and Drive)システムの開発も共同で行っています。
イノベーションとは、「コ・クリエーション」でもあります。皆さまとのエコシステムの中でさまざまな強みを組み合わせてこそ、本当に感動するようなイノベーションが生まれます。第4次産業革命の基盤となる、モノとモノをつなぐ仕掛けにデータ処理能力を加えたプラットフォームを包括的に提供することによって、日本経済の活性化に貢献できれば幸いです。
エコシステムを生み出すオープンなプラットフォーム
池田
皆さまの実例からは、技術の発展によってビジネスの根本的な変革が加速している中で、いったい自分たちは何がやりたいのか、何を実現するべきなのかをまず考えて取り組むことが重要であることがわかります。単にモノをつなげるだけでなく、データとそのアナリティクスを中心に、パートナー、従業員、顧客を含めたエコシステムをつくっていくことが必要ですね。
小島
日立は、これまでたくさんのお客さま、パートナー企業と、電力・エネルギー、産業・流通・水、金融・公共・ヘルスケア、アーバンといったさまざまな分野で協業、協創を行ってきました。その経験や実績を基に、IoTというデジタル技術によって、お客さまにとっての新しい価値を創り出すこと、そのために、自分たちも大きく変わることをめざしています。
そうした協創事例の一つとして、ダイセル式生産革新で知られる株式会社ダイセルとの、次世代スマートファクトリーの構築に向けた取り組みをご紹介します。
(映像)ダイセルの課題は、工場の生産システムを改善し、製品の品質と生産性を向上させ、経営の安定化を図ることでした。その解決に向けて課題を共有し、製造実績データを解析、検討を重ねた結果、作業者の動作や設備、材料の状態の定量的な把握が有効であるとわかりました。そこで日立がご提案したのが、作業者のミスや設備の不具合の予兆を検出する画像解析システムの開発です。作業者の正しい動きから標準動作モデルを作成し、実際の作業員の動きを比較することで正しく作業が行なわれているかを判定するというものです。設備や材料についても、通常画像との比較によって異常を検知します。この画像解析システムと製造実行管理システムを連動させることで、人、設備、材料の状態を連続的に把握することができ、実際の効果につながり始めています。
小島
こうした顧客協創は、高品質な製品をつくってお届けするというビジネスとは、まったく違う流れが必要で、日立もそれに向けて大きく組織を変えてきました。
特に異なるのは、最初にお客さまの課題を見つけ出し、解決へ向けた仮説を立てるというプロセスです。これまでになかったそのプロセスを実行するために、R&D(Research and Development)組織の中に顧客協創拠点を立ち上げました。デザイン手法や心理学など人文科学系のスキルを持つ人材を配して、独自に構築した「NEXPERIENCE(ネクスペリエンス)」という顧客協創の方法論やITツールなどを駆使しながら、お客さまの課題をともに検討しています。こうした組織を世界各地に展開しており、今後も拡大していく考えです。
課題を発見し、仮説を立てたら、それを検証するプロセスに入ります。新しい取り組みを成功させるには、素早く、さまざまな可能性を試すことが重要で、そのために私どもはデジタルソリューションのクラウド型協創環境「Lumada(ルマーダ)コンピテンシーセンター」を立ち上げました。アナリティクスと人工知能を手軽に活用できる環境をクラウドで提供することによって、お客さまの現場での実証と結果の検証をスピードアップします。
日立のIoTプラットフォーム「Lumada」には、アナリティクスや人工知能をはじめ、さまざまなテクノロジーが埋め込まれています。それに加えて、最も大きな特徴は、日立のこれまでの経験、磨いてきたOT(Operational Technology)、さらに皆さまのような協創パートナーと築いてきた技術や経験も埋め込んでいくことで、新たな価値を生み出すプラットフォームをめざしていることです。
このLumadaを軸に、さまざまな要素をつなげていくことで、政府の第5次科学技術基本計画で掲げられた、超スマート社会の実現に向けた取り組み、Society 5.0に貢献していきます。
イノベーションのカギを握るのは多様性、顧客体験、デザインシンキング
池田
今年2月に、日本国内の企業を対象にガートナーが調査した結果では、すでに社内でIoTの推進体制を整えたという企業は約1割で、3年後ぐらいを目処に準備中という企業が大半を占めていました。IoTの必要性は感じていても、具体的にどんなアクションを起こせばいいのかわからないのが実情だと思います。鈴木さん、小出さん、内田さんは、日本企業はデジタルイノベーションをどう進めればよいと思われますか。
鈴木
小島さんがおっしゃったように、革新的なIoTソリューションをつくり上げるためにはスピードが非常に重要です。今のビジネスが、今後10年、20年先までそのまま続く保証はないので、マインドセットも感性も変えていかなければなりません。米国ではすでに、Uberのような新しいビジネスモデルが既存のビジネスを破壊し始めています。技術を導入するにあたっては、単に性能の向上やコスト削減だけではなく、あるべきビジネスの姿という根本的な部分から考えることが必要です。スマートフォンがあれば事足りるというデジタルネイティブ世代がどんどん増えていく中で、感性の変化に企業としてどう対応していくかは大きな課題です。若い人たちの発想を経営者も知り、学ぶべきだと思います。
日本企業がやらなければいけないのは、失敗を恐れずに、とりあえず試してみることです。そして、お客さまからのフィードバックを取り入れて、試行錯誤しながら完成度の高いものに仕上げていくのです。
シスコでは、企業内の多様性を重視しています。いろいろな経験、考え方、バックグラウンドを持った人たちを集め、自由に情報共有や意見交換できる、風通しのいい環境をつくると、イノベーションは自然に生まれてくると考えています。そのために、ビデオカンファレンスなど、いつでも、どんなデバイスからもコミュニケーションできるようなツールを用意しています。
私たちとスイスのビジネススクール、IMDとの共同調査では、今後10年で4割の企業が淘汰されると試算されました。25年前に存在していたFortune 500のうち、現在残っている企業は24%という状況です。デジタルイノベーションの時代を勝ち抜くには、危機感を持って、俊敏に対応しなければなりません。
小出
イノベーションは、突然生まれた一つの素晴らしいテクノロジーによって起きるというよりも、いくつかのテクノロジーが融合して何らかのサービスに転換され、顧客体験の価値を向上させることの連続によって生み出されるものではないかと思います。
IoTというテクノロジーも、それだけでイノベーションが起きるわけではありません。まず必要なのは、お客さまの視点で、お客さまが望んでいることを理解した上で、一緒にさまざまなビジョンを検討し、明確化することです。そしてすぐにプロトタイプをつくってお客さまにテストしていただき、フィードバックを分析して反映するという、顧客体験を中心としたアジャイル型の開発を行います。そのサイクルが速ければ速いほど、イノベーションがどこかで起きる可能性が高まるはずです。
先ほどのサトーホールディングスの例で言うと、全世界のお客さまにアンケートをとった結果、止まらないプリンタという顧客体験をお客さまは望んでいました。そこで、私どもと一緒に1カ月でプロトタイプをつくり、展示会場などで紹介し、お客さまにテストしていただきました。その中で得られたフィードバックをリモートサービスに組み込んでいくというサイクルを繰り返していくと、お客さまは、バーチャルなカスタマーエンジニアの存在を体感し、顧客体験が劇的に変わる段階に入ります。それによって、止まらないビジネスというイノベーションが起こせたのです。このように、顧客体験の価値をいかに高めるかという視点が、イノベーションにつながるのではないでしょうか。
内田
SAP自身の話をすると、実は2004年頃から、このままERP一本でいいのかという危機感が社内でも出始めていました。ただ、どちらかというとプロダクトアウトの会社ですから、なかなか変革が進みませんでした。そこで、創業者のハッソ・プラットナーは、デザインシンキングに目をつけて、私財を投じてスタンフォード大学にハッソ・プラットナー・デザインスクール(通称d.スクール)を設立しました。その結果、デザインシンキングはSAPの社内にも浸透してビジネスモデルを変えただけでなく、ユーザー目線で問題解決を図るイノベーションの方法論として、今やさまざまな分野で注目されています。
小出さんもおっしゃっていたように、テクノロジーから何か生まれるのではなく、やはり「人」ですね。アンダーアーマーの事例でも、ユーザーの生活にどんなことが役立つのかを起点に考え、それを支えるテクノロジーを探して、サービスを組み上げました。今まで我々が持っていた、技術を起点とした発想とは逆なのです。そのように顧客起点でイノベーションを実現する技術を手に入れるために、我々は2010年以降、約120社を買収しました。
また、パートナーとの共同イノベーションにも取り組んでいます。例えば、NTTグループとは、バスやトラックの事故を未然に防ぐためのソリューションを提供します。
(映像)「hitoe(ヒトエ)」はNTTグループと東レ株式会社が共同開発した、着るだけで生体情報を取得できる機能素材です。これを運転者に身につけてもらい、心拍数などをリアルタイムで取得してスマートフォンで送り、疲労度を分析します。運転挙動のデータと併せて、SAP HANA Cloud Platform上にある自動車の挙動収集分析アプリケーションCTS(Connected Transportation Safety)で総合的に分析することで、事故を未然に防ぐための対応や、効率的な運行をサポートします。
内田
このサービスモデルは、既存の技術をつなぐことによって3カ月ほどで立ち上げ、現在、実証実験を行っています。このように、「まずやってみること」が大切です。
米国のパロアルトにあるSAP Palo Alto Labsでは、システム検証やデモンストレーションを行っていますが、いつ行ってもいろいろな企業の方がいて、誰がSAPの人間かわからないような状態です。多様性の中での化学反応も、イノベーションには有効だと思います。
新しい価値創造へ、まずはシュートを打とう
池田
ガートナーでは、IoTは「バイモーダル」で取り組むものであると考えています。ITで現状をよりよくするというモード1と、ITで新しい世界を構築するというモード2、つまり、日々のビジネスを成長させることと、新しくビジネスを創造する、その両輪が大切です。
皆さまの事例でも示されていたとおり、新しいビジネスとは、単純に今ある製品にIoTや人工知能を付加価値として加えるという話ではなく、顧客体験そのものを新しくする、ゲームチェンジをめざすものです。そのためには、他社の成功事例だけを追い求めるのではなく、顧客の未来を真剣に考え抜くことが必要です。
IoTの取り組みは、まず、IoTの推進体制を社内で確立することから始まります。部門横断的な組織とし、経営チームと直接コミュニケーションをとること、製品やサービスの責任者も加わること、自社ではなく顧客の未来に関心を持つこと、外部とも意見交換できる環境とすることなどが大切です。IoTはまだ先が見えないジャングルではありますが、今後はサバイバルの時代に入っていきます。その中で日立はどのようにありたいとお考えでしょうか。
小島
我々がめざしているのは、お客さまのシュート数を増やすこと、つまり新しい価値創造へチャレンジする機会を増やすことです。そのためのアシストを行うのが、Lumadaのプラットフォームです。
IoTプラットフォームは、すでに全世界で450を超えていると言われています。それだけたくさんあるということは、逆に考えれば、それらをつなぐとお客さまにとっての大きな価値となるのです。ですから、Lumadaは完全にオープンで、いろいろなユースケースがどんどん入ってくるような場にしていきたいと考えています。
企業のデジタルトランスフォーメーションには、少なくとも4、5年はかかるでしょう。その過程で、ベンダー、パートナー、顧客、ユーザーといった方々がつながり合い、その関係性の中でプラットフォームもつながっていき、ワクワクするようなチャレンジができるような環境をつくり上げていきたい。その中で、お客さまのイノベーションパートナーとなることを、日立はめざしてまいります。
内田
失敗には2種類あります。ミステイクを犯すことと、オポチュニティを逃すことです。ミステイクは繰り返したその先に成功がありますが、リスクを回避して何もしなければ、成功につながるオポチュニティはありません。ですから、「ミスがあっても次にまた挑戦すればいい」という感覚が大切です。
成功体験のある企業では、それがイノベーションの邪魔をする場合があります。イノベーションには、デザインシンキングのような方法論と、新しいことを試してみるという精神、それを磨いていく取り組みが必要です。そうした意味でLumadaには期待していますし、日立と一緒にLumadaを活用して、皆さま方とイノベーションを起こしていくお手伝いをしたいと思います。
小出
Lumadaのプラットフォームが、私どもの得意な領域と顧客とをつなぐ接点となることを期待しています。そして、顧客を中心とした協創を引き続きご一緒したいですね。
鈴木
実はシスコではすでに、海外でLumadaをプラットフォームとしたビジネスの実験も始めています。日立の豊富なグローバル経験とブランド力を活かして、Lumadaを、多くの企業とパートナーエコシステムを構築し、新しいソリューションを創造できる場にしていただくよう願っています。
池田
皆さまのお話からはっきり見えてきたことは、まず、IoTはやはり見逃すわけにはいかないぐらい大きな変化だということです。そして、単にテクノロジーを導入すればいいのではなく、今までの常識、慣習、ルールを疑って、新しい自分たちを創造することを考えなくてはいけません。テクノロジーの価値は、仕組みではなく、それがもたらす体験という可能性にあります。
本日のメンバーからの提言をまとめると、「新しいルール、制度、慣習へのチャレンジで、よりよいデジタル時代を構築し始めましょう」ということになります。そのために必要なのは、まず経営陣と直結したIoTの推進体制を確立すること、顧客の未来にフォーカスすること、そして、シュートを打つことです。検討だけでなく行動に移し、新しいビジネスにチャレンジしましょう。本日はありがとうございました。
(モデレータ:ガートナー ジャパン株式会社 リサーチディレクター 池田武史氏)
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