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加治 慶光 株式会社 日立製作所 Lumada Innovation Hub Senior Principal / 入山 章栄氏 早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール教授 / 森正勝 株式会社 日立製作所 イノベーション成長戦略本部 本部長
2024年10月28日、「両利きの経営から考えるDX デジタルとデザインで導くイノベーション」をテーマに日立製作所主催のイベントを開催した。ゲストは早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール教授 入山 章栄氏。Lumada Innovation Hub Senior Principalの加治慶光、日立製作所 イノベーション成長戦略本部 本部長 森正勝、入山氏の3名で行われたトークセッションを採録した第3回は、社会イノベーションを生み出すための日立の取り組みについて森が解説する。

「第1回:世界の経営学から見るDXへの視座(前編)」はこちら>
「第2回:世界の経営学から見るDXへの視座(後編)」はこちら>
「第3回:社会イノベーションへの日立の取り組み」
「第4回:日立の変革」はこちら>
「第5回:第2次デジタル競争というチャンス」はこちら>

顧客協創を体系化した「NEXPERIENCE」


日立のイノベーション成長戦略本部の森正勝でございます。最初に少しだけ、自己紹介をさせていただきます。

画像1: 顧客協創を体系化した「NEXPERIENCE」

私はインターネットがビジネスで使われ始めた頃に、日立製作所に入社をし、デジタルを使ったサービスやソリューションの研究・開発を行ってきました。2018年からは、ヨーロッパやグローバルにおける顧客協創を研究開発部門として推進してきました。2022年からは日本に戻りまして、現在のノベーション成長戦略本部においてイノベーション成長投資という形でスタートアップとの協創を取りまとめています。それに加えて、2050年という未来からのバックキャストというアプローチでの研究・開発というものも行っています。

画像2: 顧客協創を体系化した「NEXPERIENCE」

最初に、日立が取り組む社会イノベーション事業を支えている研究・開発体制について説明いたします。従来の研究開発部門の目的といえば技術革新でしたが、テーマをイノベーションにした時に果たしてそれだけでいいのか。お客さまと一緒にイノベーションを追求する顧客協創や、世の中をこうしようというビジョンの追求もこれからは研究・開発の対象なのではないか。ということで、2015年に日立の研究開発部門は組織を再編しました。現在は「顧客協創」「技術革新」「基礎探索」の3つを基軸とした体制で研究開発を行っています。

顧客協創をテーマにした研究・開発では何ができるのかを考えた時、私たちはデザインに注目しました。デザインはモノを設計するだけではなく、社会やビジネスの仕組みを設計することでもあり、それはイノベーションを起こす大きな力になります。デザイナーと研究者が一緒になって顧客協創と取り組む組織を作りました。

画像3: 顧客協創を体系化した「NEXPERIENCE」

そしてデザイナーと研究者がお客さまと協創するための方法を体系化したものが「NEXPERIENCE」です。質の高い議論や独創的なアイデアを創り出すためのプロセスや手法・ツールが整理されたこのやり方で、私たちはお客さまと共に課題解決やアイデアの創出に取り組んでいます。

入山
これはデザイナーや研究者が、お客さまと顔を突き合わせて議論するわけですか。


はい、その通りです。そこには担当の営業も一緒に入ります。

入山
デザイナーや研究者というのは、僕のイメージではお客さまと対面でやりとりするのが得意ではない。むしろ苦手な人だと思っていましたが、そこに混乱はなかったのですか。


確かに最初の頃はそういう心配もありまして、営業部門ともかなりディスカッションした上で、理解のあるお客さまと取り組ませていただきました。現場でわれわれも鍛えられましたし、方法がきちんと体系化されていますので、今では研究所のデザイナーと研究者だけでなく、事業部にもNEXPERIENCEで顧客協創を行える人が増えていて、それは日本だけでなくグローバルでも広がっています。

成長のフレームワーク「Lumada」


2016年には、Lumadaをローンチさせていただきました。これはデジタルとテクノロジーによるイノベーションを実現し、お客さまと共に成長していくためのフレームワークです。

画像1: 成長のフレームワーク「Lumada」

このPLAN、BUILD、OPERATE、MAINTAINという、お客さまが日頃回されている業務サイクルに寄り添う形で答えを探しながら、一緒に成長させていただく。それがLumadaになります。

画像2: 成長のフレームワーク「Lumada」

こちらが、Lumadaのフレームワークを日立のアセットにブレークダウンしたものです。計画を立てる段階から運用まで、さまざまなツールやソリューションを取り揃えており、グループ会社がそれぞれの分野で培ってきたユースケースもご活用いただくことができます。さらに、3万2千人ものデザイナーやエンジニアによるデジタルエンジニアリングを世界21か国で展開しているGlobalLogicの経験やノウハウも、日立のアセットとしてご活用いただける。事業や国を超えたOne HITACHIでの取り組み、それがLumadaです。

スタートアップへの投資

少し違う話になりますが、日立は2019年頃よりコーポレート・ベンチャリングを行っています。現在は600万ドルほどの規模で、30社以上のスタートアップに投資し、コラボレーションしています。日立はさまざまな分野で事業を行っていますが、お客さまの成長をご支援するためにはまだまだわからないことが多くあります。そこでスタートアップと共に議論したり、コミュニティーに参加することで新しい技術動向やトレンド、ビジネスモデルといったものを積極的に学ばせていただいています。

画像: スタートアップへの投資

特に生成AIに関しては、特別なグループを作ってスタートアップから学ぶだけでなく、事業活動にフィードバックしながら日立全体でも共有し、AIの顧客提案に生かすといったことを行っています。

2050年からのバックキャスト

画像: 2050年からのバックキャスト

最後になりますが、私たちはイノベーション創出のために、未来の世界からのバックキャストによる研究を行っています。これは現在の課題を起点にイノベーションを考えるのではなく、2050年の未来社会を想定し、そこを起点に逆算することでより本質的なイノベーションが見つかるのではないか。そういう研究になります。

例えば環境という分野では、私たちは2050年を「環境中立社会」というビジョンでとらえました。これをアカデミアの方や専門家と議論し、6つのテーマを設けました。その中でEnergy Storage and Supplyというのはカーボンニュートラルを実現するための水素の研究であり、CO2価値資源転換というのはCO2から資源を作る研究です。つまり2050年にカーボンニュートラルで完全循環型の社会を実現するために、必要となる技術を先んじて研究しておく。これはすぐにイノベーションにつながるものではありませんが、次のイノベーションに備える、そういう活動になります。

駆け足になりましたが、以上で私のプレゼンテーションを終えたいと思います。ご清聴ありがとうございました。(第4回へつづく

「第4回:日立の変革」はこちら>

画像1: 両利きの経営から考えるDX デジタルとデザインで導くイノベーション
【第3回】社会イノベーションへの日立の取り組み

入山 章栄(いりやま あきえ)
早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール教授
慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了後、三菱総合研究所を経て、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院より博士号(Ph.D.)を取得。同年、米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授に就任。2013年に早稲田大学ビジネススクール准教授、2019年4月から現職。
専門は経営学。国際的な主要経営学術誌に多く論文を発表している。著書の『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』、『世界標準の経営理論』はベストセラーとなっている。近著は『宗教を学べば経営がわかる』池上彰・入山章栄 共著。

画像2: 両利きの経営から考えるDX デジタルとデザインで導くイノベーション
【第3回】社会イノベーションへの日立の取り組み

森 正勝(もり まさかつ)
株式会社日立製作所 理事 イノベーション成長戦略本部長
1994年、京都大学大学院工学研究科修士課程を修了後、日立製作所に入社。システム開発研究所にて先端デジタル技術を活用したサービス・ソリューション研究に従事した。2003年から2004年までUniversity of California, San Diego 客員研究員。日立製作所 横浜研究所にて研究戦略立案や生産技術研究を取りまとめた後、2018年より日立ヨーロッパ社CTO 兼 欧州R&Dセンタ長。2020年、日立製作所 研究開発グループ 社会イノベーション協創統括本部長 兼 東京社会イノベーション協創センタ長。2023年より現職。博士(情報工学)。

画像3: 両利きの経営から考えるDX デジタルとデザインで導くイノベーション
【第3回】社会イノベーションへの日立の取り組み

加治 慶光(かじ よしみつ)
株式会社日立製作所 Lumada Innovation Hub Senior Principal。シナモンAI 会長兼チーフ・サステナビリティ・デベロプメント・オフィサー(CSDO)、鎌倉市スマートシティ推進参与。青山学院大学経済学部を卒業後、富士銀行、広告会社を経てケロッグ経営大学院MBAを修了。日本コカ・コーラ、タイム・ワーナー、ソニー・ピクチャーズ、日産自動車、オリンピック・パラリンピック招致委員会などを経て首相官邸国際広報室へ。その後アクセンチュアにてブランディング、イノベーション、働き方改革、SDGs、地方拡張などを担当後、現職。2016年Slush Asia Co-CMOも務め日本のスタートアップムーブメントを盛り上げた。

シリーズ紹介

楠木建の「EFOビジネスレビュー」

一橋ビジネススクール一橋ビジネススクールPDS寄付講座特任教授の楠木建氏の思考の一端を、切れ味鋭い論理を、毎週月曜日に配信。

山口周の「経営の足元を築くリベラルアーツ」

山口周氏をナビゲーターに迎え、経営者・リーダーが、自身の価値基準を持つための「リベラルアーツ」について考える。

協創の森から

社会課題の解決に向けたビジョンの共有を図る研究開発拠点『協創の森』。ここから発信される対話に耳を傾けてください。

新たな企業経営のかたち

パーパス、CSV、ESG、カスタマーサクセス、M&A、ブロックチェーン、アジャイルなど、経営戦略のキーワードをテーマに取り上げ、第一人者に話を聞く。

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私たちの仕事や働き方の発想を変える、膨らませるヒントに満ちた偉才たちの仕事術を学ぶ。

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