Hitachi
お問い合わせお問い合わせ
2023年6月に提供を開始した、日立のクラウド運用改善サービスHARC(Hitachi Application Reliability Centers ハルク)。すでに40社を超える企業にお声がけをいただいているこのサービスについて、キーマンである株式会社 日立製作所 マネージド&プラットフォームサービス事業部の酒井宏昌、檜垣誠一、岡部大輔の3名に話を聞いた。第5回は、オリックス銀行株式会社(以下、オリックス銀行)の事例について。

「第1回:運用改善サービス『HARC』の誕生」はこちら>
「第2回:クラウド運用の健康診断」はこちら>
「第3回:運用の成熟度は、運用者の成熟度」はこちら>
「第4回:HARCのカスタマージャーニー」はこちら>
「第5回:HARC活用事例:オリックス銀行」

オリックス銀行のデジタル戦略

――HARCという新しいサービスをいち早く導入された事例として、オリックス銀行があります。導入に至る背景やきっかけを教えてください。

酒井
オリックス銀行に日立のデジタルに関するケイパビリティを紹介させていただいた中で、HARCに関して「HARCは今のオリックス銀行に必要なサービスかもしれない」と言っていただいたことがきっかけとなり、プロジェクトが始まりました。

オリックス銀行は店舗やATMを持たず、インターネットを通じた取引を中心とすることで運営費を抑え、高水準の預金金利を提供するインターネット銀行です。2018年度より「クラウドファースト戦略」を推進されていて、2023年度末にクラウド化率86%を達成し、2025年度末には95%を計画しているきわめて先進的な銀行です。クラウド化率をKPIにされているくらいですから、自社の情報システムのロードマップもしっかりと作られていて、次のフェーズではSRE(※)を取り入れるといった計画も立てられていました。しかし運用管理領域では、オンプレミス環境を前提とした従来型の手法から脱却できておらず、対応の即時性や運用状況の可視化といった課題に直面していました。そのタイミングで、HARCを知ったそうです。
※ Site Reliability Engineering:開発チームと運用チームが連携し、迅速にシステムの改善を実現するとともに、システムの信頼性を向上させるための方法論。

――マチュリティ・アセスメントサービスで、オリックス銀行の成熟度はどんなスコアでしたか。

岡部
具体的なスコアでの回答ではないですが、「オブザーバビリティ(可観測性)」「インシデント管理」「リリース管理」「レジリエンス(回復性)」「スケーラビリティ(拡張性)」の5つの観点で評価・分析した結果、「オブザーバビリティ」と「インシデント管理」については、システムの信頼性の可視化やアラート設定の最適化などに改善の余地があることが分かりました。私たちはこれらの評価結果や改善項目、改善に向けたロードマップを報告書としてまとめ、オリックス銀行の運用部門と議論を重ねました。

画像: アセスメントの5つの評価観点

アセスメントの5つの評価観点

2つの課題への取り組み

――現在はどんな課題に取り組まれているのですか。

岡部
2024年7月時点でマネジメントサービスの第2フェーズに入ったところです。取り組んでいる課題は2つあります。まず運用部門と開発部門の間に垣根があるという課題。そしてアセスメントで可視化されたインシデント管理に関する課題です。

オリックス銀行は確かにクラウド化率が高いのですが、運用に関しては従来のやり方のままになっている部分があります。例えば運用部門は、開発部門の要望に逐一対応できるほどのリソースがないので、開発部門が運用設計をしていました。しかしこれでは開発者ごとに運用が異なるため、複雑化してしまいますし、開発部門との垣根もなくなりません。運用部門はさまざまなシステムをまとめて運用するわけですから、開発部門には共通の運用基準で開発してもらう必要があります。今はその運用基準の策定に取り組んでいます。日立のクラウドエンジニアとオリックス銀行の運用部門のメンバーがSRE体制を組み、ポッドと呼ばれるチームで検討しながら進めているところです。

インシデント管理でも課題の根は同じで、運用部門ではさまざまなシステムのインシデントをまとめて管理しなければなりません。しかしこれまでばらばらでやってきていましたので、ひとつの基準に合わせる必要があります。私たちは日立の北米での事例や知見を参考にして、インシデント管理のめざすゴールを設定しました。これからそこに向かって動き出すところです。

――HARCは金融という業種でも高いニーズがあると思いますか。

酒井
強く思います。いろいろなお客さまとお話をさせていただくほど、このサービスが必要とされていることを実感します。特にオンプレミスを残しながらパブリッククラウドを活用するハイブリッド環境のお客さまから、興味を持ってお声がけいただく機会が増えています。金融に限らず、クラウド化が進められているあらゆる業種において、信頼性とアジリティ(機敏性)の両立が求められていますから、HARCの出番はこれからますます増えていくと確信しています。

画像: ――HARCは金融という業種でも高いニーズがあると思いますか。

あなたの知らないクラウド運用へ Hitachi Application Reliability Centers (HARC)

「第1回:運用改善サービス『HARC』の誕生」はこちら>
「第2回:クラウド運用の健康診断」はこちら>
「第3回:運用の成熟度は、運用者の成熟度」はこちら>
「第4回:HARCのカスタマージャーニー」はこちら>
「第5回:HARC活用事例:オリックス銀行」

画像1: クラウドの運用改善でDX体制を強化する
【第5回】HARC活用事例:オリックス銀行

酒井宏昌(さかい ひろまさ)
株式会社 日立製作所 マネージド&プラットフォームサービス事業部 クラウドマネージドサービス本部 クラウド&デジタルマネージドサービス部 担当部長
1989年、日立製作所に入社。通信・ネットワーク機器、ストレージ・サーバ等の海外への拡販や新規事業推進に従事。2016年からデータ利活用を可能にするプラットフォーム「Pentaho」の拡販・営業支援を経験したのち、2022年より現職。

画像2: クラウドの運用改善でDX体制を強化する
【第5回】HARC活用事例:オリックス銀行

檜垣誠一(ひがき せいいち)
株式会社 日立製作所 マネージド&プラットフォームサービス事業部 クラウドマネージドサービス本部 クラウド&デジタルマネージドサービス部 担当部長 兼
HARCグローバルビジネス推進センタ センタ長
1993年、日立製作所に入社。ストレージ等のIT製品事業の海外展開に従事。2015年からHitachi Vantaraの米国本社に出向し海外での業務に従事後、2022年より現職。

画像3: クラウドの運用改善でDX体制を強化する
【第5回】HARC活用事例:オリックス銀行

岡部大輔(おかべ だいすけ)
株式会社 日立製作所 マネージド&プラットフォームサービス事業部 クラウドマネージドサービス本部 クラウド&デジタルマネージドサービス部 担当部長
1996年、日立製作所に入社。通信システムの設計・開発に従事。2018年からLSH(Lumada Solution Hub)ポータルやクラウド向けデジタルソリューションの開発を経験したのち、2022年より現職。

シリーズ紹介

楠木建の「EFOビジネスレビュー」

一橋ビジネススクール一橋ビジネススクールPDS寄付講座特任教授の楠木建氏の思考の一端を、切れ味鋭い論理を、毎週月曜日に配信。

山口周の「経営の足元を築くリベラルアーツ」

山口周氏をナビゲーターに迎え、経営者・リーダーが、自身の価値基準を持つための「リベラルアーツ」について考える。

協創の森から

社会課題の解決に向けたビジョンの共有を図る研究開発拠点『協創の森』。ここから発信される対話に耳を傾けてください。

新たな企業経営のかたち

パーパス、CSV、ESG、カスタマーサクセス、M&A、ブロックチェーン、アジャイルなど、経営戦略のキーワードをテーマに取り上げ、第一人者に話を聞く。

Key Leader's Voice

各界のビジネスリーダーに未来を創造する戦略を聞く。

経営戦略としての「働き方改革」

今後企業が持続的に成長していくために経営戦略として取り組むべき「働き方改革」。その本質に迫る。

ニューリーダーが開拓する新しい未来

新たな価値創造に挑む気鋭のニューリーダーに、その原動力と開拓する新しい未来を聞く。

日本発の経営戦略「J-CSV」の可能性

日本的経営の良さを活かしながら利益を生み出す「J-CSV」。その先進的な取り組みに迫る。

ベンチマーク・ニッポン

日本を元気にするイノベーターの、ビジョンと取り組みに迫る。

デジタル時代のマーケティング戦略

マーケティングにおける「デジタルシフト」を、いかに進めるべきか、第一人者の声や企業事例を紹介する。

私の仕事術

私たちの仕事や働き方の発想を変える、膨らませるヒントに満ちた偉才たちの仕事術を学ぶ。

EFO Salon

さまざまな分野で活躍する方からビジネスや生活における新しい気づきや価値を見出すための話を聞く。

禅のこころ

全生庵七世 平井正修住職に、こころを調え、自己と向き合う『禅のこころ』について話を聞く。

岩倉使節団が遺したもの—日本近代化への懸け橋

明治期に始まる産業振興と文明開化、日本社会の近代化に多大な影響を及ぼした岩倉使節団。産業史的な観点から、いま一度この偉業を見つめ直す。

八尋俊英の「創造者たち」~次世代ビジネスへの視点~

新世代のイノベーターをゲストに社会課題の解決策や新たな社会価値のつくり方を探る。

This article is a sponsored article by
''.