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株式会社 日立製作所 マネージド&プラットフォームサービス事業部 酒井宏昌/檜垣誠一/岡部大輔
2023年6月に提供を開始した、日立のクラウド運用改善サービスHARC(Hitachi Application Reliability Centers ハルク)。すでに40社を超える企業にお声がけをいただいているこのサービスについて、キーマンである株式会社 日立製作所 マネージド&プラットフォームサービス事業部の酒井宏昌、檜垣誠一、岡部大輔の3名に話を聞いた。第2回は、運用部門の抱える課題、そしてクラウド運用の健康状態を診断するアセスメントサービスについて。

「第1回:運用改善サービス『HARC』の誕生」はこちら>
「第2回:クラウド運用の健康診断」
「第3回:運用の成熟度は、運用者の成熟度」はこちら>
「第4回:HARCのカスタマージャーニー」はこちら>
「第5回:HARC活用事例:オリックス銀行」はこちら>

運用部門の現状

――現在クラウド運用部門の人たちは、どのような課題を抱えているのでしょう。

酒井
私は国内のさまざまな業種の企業とHARCを通してお付き合いをさせていただいていますが、共通している課題は3つあります。第1に、インシデントが起きやすい運用になっていることです。AWSやAzure、Google Cloudといった大手のクラウドサービスは、年間数千件のアップデートを行うと言われています。そのスピード感についていくことは片手間でできることではありません。アップデートに対応しないままサービスを展開していることで、重大なインシデントが発生しやすい状態にある企業が多いです。

第2に、運用部門の疲弊です。情報システムの運用部門は、メインフレーム時代から何か起きたら大問題で、何も起きないのが当たり前という世界です。何か起きた時にはいつどこにいても対応しなければならない、バージョンアップは頻繁にある、開発部門からは次々に新しい要求が入るといった環境で、慢性的な人手不足に陥り、疲弊しているケースが多いです。

第3はコストです。大手のクラウドサービスは、手間をかけて対策すればコストは下がるのですが、何もしなければ上がっていくという構造になっています。アメリカで起きていたのは、インシデントや不具合の対策に追われるようになって、クラウドのアップデートの対策ができなくなり、コストが上がってしまうという課題でした。この問題が今日本でも起きています。

これらの課題は、オンプレミスを前提にした組織や人、ナレッジのままクラウドを運用していることが原因になっている場合が多いです。例えば開発が先行して作ったクラウドの業務アプリの運用を、パブリッククラウドの知識や経験もないまま任される。それが積み重なると、どこから手をつけたらいいのかわからなくなっていきます。

画像: 酒井宏昌

酒井宏昌

岡部
お客さまと話をしていると、目的を明確にせずに、むやみに今あるサービスをクラウドに移行しているケースが多いです。それではクラウドに適した運用やアーキテクチャーなどのベースができていないので、さまざまな問題が起きやすい状態になってしまいます。

マチュリティ・アセスメントサービスとは?

――運用課題の解決のために、最初に行うマチュリティ・アセスメントサービスについて教えてください。

酒井
マチュリティ・アセスメントサービスは、日本語で言うと成熟度の評価・分析です。私はこれをクラウド運用の「健康診断」だと説明しています。お客さまのクラウド運用改善に取り組むためには、お客さまの現在の状態を正確に把握する必要があります。健康診断で例えるなら、血糖値はどうなのか、血圧は高いのか低いのか、体脂肪はどうなのかといった検査をするのと同じように、私たちはお客さまのクラウド運用を入念にチェックさせていただき、課題を抽出していきます。岡部のチームが提出するレポートは、第三者の専門家による子細な評価・分析としてこれまでお客さまから高い評価をいただいています。

岡部
マチュリティ・アセスメントはグローバル共通の方法で行っています。具体的には、事前のヒアリングや情報収集のあとに、オブザーバビリティ(可観測性)、インシデント管理、リリース管理、スケーラビリティ(拡張性)、レジリエンス(回復性)の5つの領域について運用部門の方にそれぞれ2時間ほどインタビューを行います。その結果を基にお客さまの運用の成熟度を評価し、レーダーチャートの5段階評価で可視化します。

画像: アセスメントの5つの評価観点

アセスメントの5つの評価観点

私たちは診断と共に、目標成熟度を設定し、それを達成するためには何を重点的に改善すれば良いかを併せてレポートします。SRE(※1)で重要なことはトイル(※2)の削減ですから、手動工程をできる限り自動化することでコストもインシデントも削減できる、といった説明をします。
※1 Site Reliability Engineering:開発チームと運用チームが連携し、迅速にシステムの改善を実現するとともに、システムの信頼性を向上させるための方法論。
※2 トイル(toil):サービスの提供に欠かせない作業の中で、自動化が可能であるにもかかわらず手作業で行われているもの。

――評価を聞いた時のお客さまの反応はいかがですか。

岡部
SREのスタートラインは5段階評価の3においています。5というスコアは、理想的な組織文化ができているので何も問題はありませんという評価です。実際には、1から2の間のスコアになることが多く、お客さまはその評価に驚かれます。しかし、私たちはこの評価の原因や影響、今後の改善のポイントなどを詳しくご説明し、現状を正しく認識することこそが改善のスタートであるとまずお伝えします。

酒井
そして実際に運用改善と取り組む時には、日立のクラウドエンジニアがお客さまと伴走する「マネジメントサービス」をご活用いただくことになります。(第3回へつづく

あなたの知らないクラウド運用へ Hitachi Application Reliability Centers (HARC)

「第3回:運用の成熟度は、運用者の成熟度」はこちら>

画像1: クラウドの運用改善でDX体制を強化する
【第2回】クラウド運用の健康診断

酒井宏昌(さかい ひろまさ)
株式会社 日立製作所 マネージド&プラットフォームサービス事業部 クラウドマネージドサービス本部 クラウド&デジタルマネージドサービス部 担当部長
1989年、日立製作所に入社。通信・ネットワーク機器、ストレージ・サーバ等の海外への拡販や新規事業推進に従事。2016年からデータ利活用を可能にするプラットフォーム「Pentaho」の拡販・営業支援を経験したのち、2022年より現職。

画像2: クラウドの運用改善でDX体制を強化する
【第2回】クラウド運用の健康診断

檜垣誠一(ひがき せいいち)
株式会社 日立製作所 マネージド&プラットフォームサービス事業部 クラウドマネージドサービス本部 クラウド&デジタルマネージドサービス部 担当部長 兼 HARCグローバルビジネス推進センタ センタ長
1993年、日立製作所に入社。ストレージ等のIT製品事業の海外展開に従事。2015年からHitachi Vantaraの米国本社に出向し海外での業務に従事後、2022年より現職。

画像3: クラウドの運用改善でDX体制を強化する
【第2回】クラウド運用の健康診断

岡部大輔(おかべ だいすけ)
株式会社 日立製作所 マネージド&プラットフォームサービス事業部 クラウドマネージドサービス本部 クラウド&デジタルマネージドサービス部 担当部長
1996年、日立製作所に入社。通信システムの設計・開発に従事。2018年からLSH(Lumada Solution Hub)ポータルやクラウド向けデジタルソリューションの開発を経験したのち、2022年より現職。

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