一橋ビジネススクール教授 楠木 建氏 / 独立研究者・著作家・パブリックスピーカー 山口周氏

Q1:自分のセンスを知り、磨く方法は?
Q2:自分の好き嫌いの市場価値は?
Q3:スキルを越えた自分のポジションを見つけるヒントは?
Q4:仕事を選ぶ時の基準は?
Q5:センスを育てるために教育の現場でできることは?
Q6:望まない仕事でも関心を持って取り組む方法は?
Q7:センスを排除しようとする人たちとの戦い方は?

Q2:自分の好き嫌いの市場価値は?

センスは磨けるものだという前提に立った上で、そのセンスを磨く方向性を考えるときに、自分の肌に合うのかという好き嫌いのピュアな方向性と、これはマーケットで価値が付くのかな、受けるのかなといったちょっと下心的なところのバランスをどういうふうにお考えでしょうか。

山口
お金が付くかどうかというのは、試してみないとわからないことなので、あまり市場規模とかを考えるより、まずは何かを出してみるのがいいと思います。

楠木
それは非常に重要な問題で、私もよく考えます。今のところの結論は、「結局はラリーなんだ」ということです。需要がなければ供給は意味がない、でも供給があって需要があるわけで、常に需要と供給のラリーなんです。ただし、そのときのサーブ権は自分で持っているということが重要だと思います。

1球目はこちらでサーブをして、相手が返してくれてラリーが始まる。このサーブ権が相手側にあると、それは“マーケットイン”で需要に合わせていこうということなので、僕にとってはあまりいいラリーにならない。もちろんすべて自分の好き嫌いの“プロダクトアウト”では仕事になりませんが、それでもサーブ権は渡さないほうがいいと考えています。自分が好きなことでサーブを打っていると、時々向こうからすごくいい球が返ってきてラリーが始まる。やればやるほど、どんどん気持ち良くなっていくラリーになれば、それは向いていること、センスが発揮できるということだと思います。

Q1:自分のセンスを知り、磨く方法は?
Q2:自分の好き嫌いの市場価値は?
Q3:スキルを越えた自分のポジションを見つけるヒントは?
Q4:仕事を選ぶ時の基準は?
Q5:センスを育てるために教育の現場でできることは?
Q6:望まない仕事でも関心を持って取り組む方法は?
Q7:センスを排除しようとする人たちとの戦い方は?

山口 周(やまぐち しゅう)

独立研究者・著作家・パブリックスピーカー。1970年東京都生まれ。電通、BCGなどで戦略策定、文化政策立案、組織開発等に従事した後、独立。著書に『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 』、『武器になる哲学』など。最新著は『ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式』(ダイヤモンド社)。慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院美学美術史学専攻修了。神奈川県葉山町に在住。

楠木 建

一橋ビジネススクール教授
1964年東京生まれ。幼少期を南アフリカで過ごす。一橋大学大学院商学研究科博士課程修了(1992)。一橋大学商学部専任講師、一橋大学商学部助教授、一橋大学イノベーション研究センター助教授、ボッコーニ大学経営大学院(イタリア・ミラノ)客員教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授、2010年より現職。
著書に『室内生活 スローで過剰な読書論』(2019、晶文社)、『すべては「好き嫌い」から始まる』(2019、文藝春秋)、『「好き嫌い」と才能』(2016、東洋経済新報社)、『好きなようにしてください:たった一つの「仕事」の原則』(2016、ダイヤモンド社)、『「好き嫌い」と経営』(2014、東洋経済新報社)、『戦略読書日記』(2013、プレジデント社)、『経営センスの論理』(2013、新潮新書)、『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』(2010、東洋経済新報社)などがある。