「第1回:暮らしを自分仕様にデザインする」はこちら>
「第2回:賞味期限を守らないと、毎日が忙しくて楽しい」はこちら>
「第3回:「人生の達人」の極意は比べないこと」はこちら>
「第4回:「草むしりが楽しい」という人生の素晴らしさ」はこちら>
「第5回:生活に参加することが毎日をおもしろくする」
進行中の青パパイヤ計画
山口
このシリーズで以前、対談させていただいたデザイナーの原研哉さんが、「家」もリベラルアーツの一つだとおっしゃっていたのが印象に残っています。住環境も含めた「暮らし」を豊かにすることはとても大切だと思うのですが。所さんはお料理とか家での時間を楽しんでおられますよね。
所
料理はたまに手伝うくらいですよ。料理っていうか、「親父の奇行」みたいなのがおもしろいんだよね。だから夜中に突然、「最高に美味いみたらし団子を俺はつくるんだ」とか言い出すの。「何やってるの?」とか言われたくて。で、初めてつくったみたらし団子が80点くらいもらったの。そうなったら100点もらいたいじゃん。それで毎日のようにつくるわけ。「今日は白玉粉と米粉の比率を変えてみる」とか言って。そうすると家族も毎日食べさせられてだんだんイヤになる。だから早めに100点くれるわけ。それがおもしろいんだよ。「おまえら、もう食べたくないから100点出したんだろう」っていうのがね。くすぐったくてしょうがないの。
山口
おもしろさのツボが所さんらしいです。
所
大笑いとかじゃなくて、「くすぐったい」くらいが丁度いい。「両手を広げて喜べない喜び」っていうのがなんともいいんだよね。今、うちの畑で進行しているのが青パパイヤ計画。これがとんでもない量ができそうなの。やばいの。これまでブンタンとか南国の植物を育てたことがあるんで、青パパイヤはどうかと思って、ネットで10本買って植えたの。それがどんどん大きくなってきて、カミさんに「今年はすごいよ。青パパイヤ。いっぱいなるからね」なんて自慢したの。そうしたら「私、青パパイヤあんまり好きじゃないんだよね」って言うじゃん。「えー!?」って。しかも別のところで予約してあった苗も10本届いて、しょうがないから植えたよね。これがまたよく育つのよ。
山口
今年は暑かったですし。
所
みんな2~3メートルになって。調べてみたら1本に40~50個実がなるっていうのよ。「嘘でしょ!? うち20本あるわ」と思って。で、普通に考えたら手で抜けるサイズのうちに何本か抜いておくべきでしょ。でも、「このまま20本がでかくなったら、カミさんにバカって言われるな」、そっちのほうがくすぐったいかな、と思って。たぶん何百個なると思うんですよ、青パパイヤが。そうしたらまずカミさんに「できたよ」って1個持っていくよね。あとはたぶんトラックに積んで行って、テレビ局の前に「ご自由にどうぞ。所ジョージ」って置くんだよ。道端にね。そうすると、近くで働いている人たちが持っていくんじゃないかと思って。
山口
想像すると「くすぐったい」ですね。
所
うん。だから目標が変わってきたのね。収穫したら、小型の油圧ショベルで抜いて、短く切って乾かして薪にして、「青パパイヤの薪でございます」って一枚写真を撮って、それを暖房に使おうかなって思って。それが今、進行している計画なんです。
自分で動いて「事件」を起こす
山口
所さんは、あえて引き下がれないところに自分を追い込んでおいて、そこで問題解決するというのがお好きなんですね。
所
好きだよね、「やっぱりこんな目に遭うんだ」とかっていうのが。あえてダメなほうに向かったりね。重要なのは、うまくいく可能性はゼロだとわかっていても動くことなんですよ。偶然うまくいくかも、ってかすかな期待をしながら動くことでおもしろくなるの。いろんな枝葉が出るから。
山口
動いていろんな「事件」を自分から起こすと、そのなかでいろいろな気づきとか、「人間ってこういうもの」みたいな発見があるかもしれない。
所
そうですね。あとは、面倒くさがらないで、生活に参加することですよね。例えば、ペットボトルのお茶は便利だけど、自分の家の中だったら急須と湯飲みを使おうよ。洗うとか、片付けだとかの手間をかけることが「暮らし」ということだから。生活の手間を省いてばかりだと、毎日がのっぺりしてつまんなくなっちゃう。
山口
生活に参加することが「幸せのひきがね」になるのに、諸々のことを面倒だと言ってやらないのは、なんだかすごくもったいない。
所
うん。もったいない。僕は「夕飯にピークを持っていく」っていつも言っているんだけど、出来上がったものをただ腹に入れるんじゃなくて、カミさんが料理をしている、そこから参加したいのね。台所のいろいろな音を聴きながらね、手伝えることは手伝う。「邪魔なんですけど」と言われれば、テーブルでも拭いておく。そうやって参加するのが「食事」だと思っていて、その食事が毎日楽しくて、幸せなわけ。だから夕飯までにいろんなことを済ませておいて、夕飯には必ず家にいる。
山口
自分の人生なんてどうせつまらないとか言う人がいますが、参加しない、動かないからつまらなくなっているとも言えますよね。
所
誰でもすごい人になれるの。みんな大谷翔平選手みたいになれるわけがない、って思ってるじゃん。でも僕は「なれるけど、今からだと間に合わないだけ」って言ってるの。すごいことを成し遂げた人って、それを長年やってきたからできるわけだから。「どうせ俺なんか」じゃなくて、「俺もそうなれるけど間に合わない」って考えたほうがいいの。
山口
所さんみたいに「生活を楽しんで生きる人」になるのは今からでも間に合いそうです。
所
ぜんぜん間に合う。明日からでもできるよ。特別なことをやっているわけじゃないんだもん。普通の暮らしをしているだけだから。
山口
「暮らし」には衣食住にまつわること、料理、装い、部屋のしつらえ、庭づくり、音楽など創造性を発揮できることばかりですよね。だから生活も芸術だというのが私の考えなのですが、普通の生活も、ちょっと考え方や見方を変えることで総合芸術になるということですよね。
所
まあ、やっているのは「パパイヤどうしよう」みたいな話なんだけれどね(笑)。
所 ジョージ
1955年埼玉県生まれ。O型。ダウン・タウン・ブギウギ・バンドの前座を務め、1977年にシンガーソングライターとしてデビュー。演奏としゃべりを組み合わせた独自のスタイルで、タレント、コメディアンとして人気を博す。日本テレビ系バラエティ『世界まる見え!テレビ特捜部』、『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』などの司会をはじめ、日本を代表するタレントとして多数のバラエティ番組で活躍。また俳優、声優、ラジオパーソナリティ、作家、コピーライター、発明家、ゲームクリエイター、YouTuber、漫画家などの顔を持ち、多才ぶりでも知られる。
現在、『所さんの目がテン!』(日本テレビ系列)、『所さん!事件ですよ』(NHK総合)、『所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!』(テレビ東京系列)、『ポツンと一軒家』(朝日放送テレビ・テレビ朝日系列)、『所さんの世田谷ベース』(BSフジ)にレギュラー出演中。
山口 周
1970年東京都生まれ。電通、ボストンコンサルティンググループなどで戦略策定、文化政策立案、組織開発等に従事した後、独立。
著書に『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社)、『武器になる哲学』(KADOKAWA)、『ニュータイプの時代』(ダイヤモンド社)、『ビジネスの未来』(プレジデント社)、『クリティカル・ビジネス・パラダイム』(プレジデント社)他多数。最新著は『人生の経営戦略 自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』(ダイヤモンド社)。慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院美学美術史学専攻修了。