2022年9月14日にSHIBUYA QWS(渋谷キューズ)にて、日立製作所主催のイベント「Z世代と企業リーダーが語る!社会貢献をビジネスにするには?〜社会課題を自分ごと化して創る未来〜」が開催された。佐座氏のキーノートスピーチに続き、株式会社Gabの山内萌斗氏のキーノートスピーチのテーマは「イノベーションの敷居を下げるには?」。環境問題に貢献したい。それもビジネスとして成り立たせた上で。そんな志を抱いたきっかけとは。22歳という若き経営者は、いかに起業し、その事業を進展させてきたか。波瀾万丈な山内氏の人生と共に、その詳しい経緯と志を抱く過程が語られた。

「第1回:サステナブルを自分ごとに」はこちら>
「第2回:気候危機下で私たちができること」はこちら>
「第3回:イノベーションの敷居を下げるには?」
「第4回:起業の原点となった志とは?」はこちら>
「第5回:サステナブル時代の人財開発戦略とは?」はこちら>
「第6回:サステナブル時代の人財育成のあり方とは?」はこちら>
「第7回:組織におけるイノベーションの仕組み」はこちら>
「第8回:社会課題を自分ごと化して創る未来」はこちら>

「must have」な事業の必要性

今回は「イノベーションの敷居を下げるためには?」というトピックで、皆さんが、今日から何かイノベーションに取り組める具体的なアクションプランが想像できる機会にしたいと思っています。

僕は2000年に静岡県浜松市で生まれました。静岡大学情報学部でプログラミングを学んでいまして、現在2年次休学中の22歳です。会社は3期目なので、大学2年生の19歳で会社を立ち上げております。起業の一番のきっかけは、大学1年生の冬にアメリカのシリコンバレーに行ったことです。現地で起業家や教授が共有されていたのは、起業するならば、人生で経験してきた自分よがりな視点の「nice to have」なサービスはだめ。人類規模で見て存続に必要不可欠な「must have」なサービスをつくれというものでした。それまで僕は普通に地元の高校で地元の大学に行って、本当に日本人としか接してこなかった中ですごく感化されて、めちゃくちゃかっこよくて、キラキラしていると思いました。いずれ起業するなら「must have」な事業を絶対に立ち上げようと志ました。

社会課題解決の敷居を極限まで下げたい

当社のミッションは「社会課題解決の敷居を極限まで下げる」です。社会課題、SDGsは多くの人が大事だとわかっていても、敷居が高く、最初の一歩をどう取り組むべきかわからないです。僕自身もそう感じてました。それを全員がアクセスできる概念に変えていく仕組みをにするサービスが必要ですし、イノベーションにおいてもまったく同じだと思っています。壮大なイノベーションでも最初のきっかけは小さな挑戦から始まっていて、それが思わぬ形で変化して、大きな敷居の高いイノベーションを実現していくのだと思います。

山内氏が経営するGabの事業領域は3つだ。

事業内容ですが、フォロワー3.9万人のInstagramのアカウント「エシカルな暮らし」の運営。それにQWSステージの最優秀賞をいただいたゲーム感覚ゴミ拾いイベント「清走中」があります。社会課題の解決のためにどうすればいいか日々取り組んでいるスタートアップです。社員の平均年齢は21歳ですが、若い力を最大限生かして、世界を変えようという思いでやっています。

「エシカルな暮らしラボ」は毎日の投稿で、社会課題をわかりやすく解説したり、さらに実際に解決につながるいろいろな商品を載せています。例えばゴミからつくられた生活雑貨。プラスチックを一切使ってない生活雑貨。アクセサリーに食品と、いろいろあります。その商品を僕らが実際にスタッフで使用をして、本気でレビューして皆さんにお伝えしています。インスタを見た人がオンラインストアで買える仕組みをつくったり、オンラインだけではハードルが高いので、オフラインで体験できる実店舗、ポップアップストアを期間限定で運営しています。この半年で11回開催して、1万人以上動員しました。

そうした実績をもとに、オンラインからオフラインまで集客して売上を上げるというパッケージ化をしまして、三井不動産さま、丸井さまなどと一緒に共同で売り場つくりの事業を行っています。さらに、今までのノウハウを集結させた常設店舗を有楽町マルイの6階に9月からオープンしました。

ゴミ拾いをエンタメ化した「清走中」

「清走中」はここSHIBUYA QWSにいる方には、北村優斗というアクティブな男がいつもここで作業しているのをご存知だと思います。これはゴミ拾いをエンタメ化する事業です。ゴミ拾いはなかなか敷居が高くて、意識高い人しかやらなくて、毎日参加するためにはいろいろな懸念点があると思います。ですが、「清走中」はゴミ拾いに関心がない人であっても思わず参加してしまうような、いろいろな仕掛けを盛り込んでるイベントです。

過去に1,300人以上動員しており、クラウドファンディングでも340万円を集めています。5月3日のゴミの日に渋谷で開催したときは、200名がすぐに集まり、2時間で130キロのゴミを拾いました。こういうインパクトを出せるもの、多くの人が熱狂的にゴミを拾うことで生まれたエンタメの力こそ、社会的一歩なのだと思っています。

そうした仕組みやサービスをつくっております。ビジネスモデルはさまざまな自治体や企業からの依頼を受けております。企業のレクリエーションパッケージをつくるなどの、改善もしています。そのノウハウを企業さん向けにコンサルも行っています。社会貢献型事業を軸に黒字化を実現して、どうにかこうにか売上につなげている会社です。

高校生の北村優斗さんの活動に感銘を受けて、手を携えて事業化した「清走中」。

イノベーションの敷居を下げる3つのポイント

僕個人が事業化を志したところから、会社を3期やってきた今のフェーズだからこそ、皆さんに「自分ごと化」して理解してもらえる言葉があると思っています。

僕なりにイノベーションの敷居を下げるためには3つのポイントをまとめてみたいと思います。

まず最初の取り組みにおいて大事なのは、方向性あるいは志のみです。最初にすごいイノベーションを起こそうとサービスを考えても、その形は変わるものです。形は変わるけど志は変わらないのが大事です。絶対ぶれない軸は最初は必要ですが。サービスの形、アウトプットが変わるという前提を持つと、挑戦しやすくなるんじゃないかなと思っています。

2つ目は、とにかく試行錯誤して実行の中で解像度を高めたアップデートを重ねるという思考です。サービスの方向性を決めてつくりますが、解像度が明確になるのは行動の中でしかあり得ません。リリースしてから実際にお客さまが使ってどのぐらいインパクトがあるかをひたすらに繰り返すことで、サービスのあるべき姿になっていくと。

3つ目は、情熱だけは持ち続けて、3年間は決して諦めないことです。これが最終的にはいちばん大事です。まずその方向性を決めるときにも、情熱を絶やさないような、自分の気質にあったトピックを選ぶのも大事です。ひとまず3年間は、一つの挑戦に対して向き合い続けてほしいです。(第4回へつづく)

協力:SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)

「第4回:起業の原点となった志とは?」はこちら>

山内萌斗(やまうち・もえと)
株式会社Gab 代表取締役CEO 
2000年、静岡県浜松市生まれ。静岡大学情報学部行動情報学科2年次休学中(22歳)
東京大学起業家育成プログラムEGDE-NEXT2018年度、同プログラムシリコンバレー
研修選抜メンバー、MAKERS UNIVERSITY 5期生 水野雄介ゼミ代表。大学一年次の2月にシリコンバレーを訪れた際に、人類の存続に必要不可欠な「must haveな事業」をつくることを決意し、同年12月に「ポイ捨てをゼロにする。」ことをミッションに掲げ、株式会社Gabを創業。現在3期目。フォロワー3.9万人のInstagramアカウント「エシカルな暮らし」の運営や、ゲーム感覚ゴミ拾いイベント「清走中」を全国展開など、「社会課題解決の敷居を極限まで下げる。」ことをミッションに掲げて複数の事業を展開中。