「第1回:運用改善サービス『HARC』の誕生」はこちら>
「第2回:クラウド運用の健康診断」はこちら>
「第3回:運用の成熟度は、運用者の成熟度」はこちら>
「第4回:HARCのカスタマージャーニー」
「第5回:HARC活用事例:オリックス銀行」はこちら>
マチュリティ・アセスメントサービスの実際
――HARCの導入を決めたお客さまが、実際にどんなプロセスをたどることになるのか、できるだけ具体的に教えてください。
酒井
お客さまは、さまざまな情報システムを運用しています。それをいきなり全部改善するというのは現実的ではありません。情報システム全体を森と考えると、私たちは1本1本の木を改善するというアプローチをとります。つまり1つのシステムの運用改善からはじめます。
対象となるシステムを絞り込むためのヒアリングが、HARCのスタート地点です。お客さまの一番の運用課題は何か。モデルケースとして応用しやすいシステムは何か。さまざまな考え方がありますが、お客さまと議論しながら、アセスメントするひとつのシステムを決めていただきます。もちろん2つのシステムでやりたいというご要望があれば、柔軟に対応します。
システムが決まると、健康診断であるマチュリティ・アセスメントサービスで、お客さまのシステムの成熟度を評価・分析します。日立は4名ほどのチームで取り組みます。最初はお客さまのシステムや運用のヒアリングなどで事前準備を行い、お客さまの運用部門の方3名にインタビューさせていただきます。1名に2時間ほどかけて、詳細にお話をお聞きします。
酒井宏昌
これらをベースに日立の専門家が5つの領域を5段階評価でスコアをつけ、現状を客観的に評価・分析します。さらに改善の目標値を設定し、それをクリアするための改善項目までを最終報告としてまとめます。スタートから約4~5週間かけて行います。これがマチュリティ・アセスメントサービスです。
岡部
インタビューは基本3名ですが、お客さまのシステムによっては特殊なアーキテクチャーや機能を使っている場合もありますので、その時はそれを知っている人を追加でインタビューさせていただくこともあります。
アセスメントの5つの評価観点
マネジメントサービスの実際
――アセスメントを終えたお客さまは、次にマネジメントサービスでどう運用を改善していくのかを、具体的に教えてください。
酒井
マチュリティ・アセスメントサービスによって、現在のシステム運用の評価と改善点をご理解いただいたお客さまの多くは、マネジメントサービスによる改善への取り組みを望まれます。私たちのレポートには30~50ほど改善項目が上がりますので、お客さまとのディスカッションでどの項目をどのくらいの期間で改善していくのかを決めていきます。取り組む課題を選定し、期間を設定したあと、適切な体制を組んで改善を推進します。
岡部
私たちがポッドと呼んでいるチームは、運用部門からリーダー1名とメンバー1名、そこに課題によっては最初から開発部門の方に入っていただく場合もあります。日立はアセスメントを行ったメンバーが引き続き取り組みます。ポッドでは、クラウド運用の課題を日立のクラウドエンジニアと共に解決していくので、お客さまは業務を通してクラウドのスキルやナレッジを学ぶことになります。ここが、通常の「運用代行サービス」との大きな違いです。
酒井
契約終了後にさらなる改善を行う場合には、契約を延長して継続していきます。継続する場合、ポッドの人数を増やす場合もあれば、ポッドの数を増やして複数のシステムの改善に取り組む場合もあります。お客さまにとっては、運用部門の方たちが自律してポッドを回せるようになるのが理想なので、日立のメンバーは徐々にサポート役となって支援する割合を下げていきます。
――日本でHARCがスタートして約1年が経過しましたが、マネジメントサービスによる継続的な改善のフェーズに入っている事例は出てきているのですか。
酒井
おかげさまで、継続していただいている事例も数多く出てきていまして、HARCの成果や実績を日本の事例でご紹介できるようになりました。これまで製造、流通、金融などさまざまな業種40社以上の企業からお声がけいただいています。私たちもサービスのアップデートなどやるべきことはまだまだありますが、少しでも日本のクラウド運用の成熟に貢献できればと思っています。(第5回へつづく)
あなたの知らないクラウド運用へ Hitachi Application Reliability Centers (HARC)
酒井宏昌(さかい ひろまさ)
株式会社 日立製作所 マネージド&プラットフォームサービス事業部 クラウドマネージドサービス本部 クラウド&デジタルマネージドサービス部 担当部長
1989年、日立製作所に入社。通信・ネットワーク機器、ストレージ・サーバ等の海外への拡販や新規事業推進に従事。2016年からデータ利活用を可能にするプラットフォーム「Pentaho」の拡販・営業支援を経験したのち、2022年より現職。
檜垣誠一(ひがき せいいち)
株式会社 日立製作所 マネージド&プラットフォームサービス事業部 クラウドマネージドサービス本部 クラウド&デジタルマネージドサービス部 担当部長 兼 HARCグローバルビジネス推進センタ センタ長
1993年、日立製作所に入社。ストレージ等のIT製品事業の海外展開に従事。2015年からHitachi Vantaraの米国本社に出向し海外での業務に従事後、2022年より現職。
岡部大輔(おかべ だいすけ)
株式会社 日立製作所 マネージド&プラットフォームサービス事業部 クラウドマネージドサービス本部 クラウド&デジタルマネージドサービス部 担当部長
1996年、日立製作所に入社。通信システムの設計・開発に従事。2018年からLSH(Lumada Solution Hub)ポータルやクラウド向けデジタルソリューションの開発を経験したのち、2022年より現職。