2021年7月、M&Aによって日立の一員となった米国のGlobalLogic Inc.(以下GlobalLogic社)。デジタルエンジニアリングサービスのリーディングカンパニーであり、お客さまとの協創によってDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速する日立のLumadaといかにケイパビリティを融合し、どのような価値をもたらすのか。日本におけるGlobalLogic社のシナジーとは。【後篇】では、『Lumada Innovation Hub』のSenior Principalである加治慶光が2021年9月28日に行った報道機関向け説明会を取材した。

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「後篇:GlobalLogic社とLumadaの融合」

これからのイノベーション創出のあり方

記者発表の冒頭で、加治慶光はイノベーション創出のあり方を、「業界・空間・時間を超え、知恵やアイデアをつなぐ」と再定義したと述べた。それは、デジタル庁の新設に見られるように関係する組織や企業が業界を超えて連携し、デジタルで完結することが求められ、コロナ禍での在宅勤務などビジネスにおいても時間・空間を超えたコラボレーションが当たり前になってきていること。そして私たちが直面する社会課題は、1社では解決することが困難になっている今だからこそ、デジタルの力でボーダレスに知恵やアイデアをつなぐことの重要性を意味している。

Lumada Innovation Hub Tokyoは、イノベーション創出のためのフラッグシップ拠点として、2021年4月15日に開設した。ここではお客さま、パートナー、日立がバーチャル・リアルを問わずつながることで、DXに取り組み、社会価値・環境価値・経済価値の具体化をめざす。

2021年4月15日の開設以来、Lumada Innovation Hub Tokyoではオンライン説明会やワークショップなどが行われ、すでに2,600名を超える人が参加した。ここで行われたワークショップでは、デジタルを活用して業務改革を進めたいお客さまとリモートで接続しアイデアを創出したり、お客さまとデータサイエンティスト/デザインシンカーが議論しながら、その場でプロトタイプを開発したりするなど、組織・時間・空間を超えた協創がはじまっている。

めざすのはより洗練されたDX

GlobalLogic社とLumadaとの融合に関し加治は、こう語った。「GlobalLogic社の特長であるエクスペリエンスデザイン、エンジニアリング、Chip to Cloudの開発力と、日立の国内市場での経験、Lumada Innovation Hub Tokyoがもともと備えていたエクスペリエンスデザインの能力、日立独自のOT(Operational Technology)を組み合わせることで、より洗練されたDXプロセスをお届けできるようになると考えている」。

今後は協創プロセスの融合を進め、日本のお客さまにサービス提供できるように、早急に準備を進めていくということだ。

動き出したパイロットプロジェクト

すでに、GlobalLogic社とLumadaとの融合に向けた具体的なパイロットプロジェクトが動きはじめている。それは日立のストレージ事業の「as a Service」ビジネスモデル強化を題材にした、顧客協創プロセスの上流フェーズにおける親和性の確認だ。少し詳しく説明するとLumada Innovation Hub Tokyoのデザインシンカーが日本側の要望を吸い上げ、DXの経験豊富なGlobalLogic社側がプロジェクトをプランニング。現在はデザイナーとアーキテクトで構成されるアドバイザリー・チームがアーキテクチャーの具体的な検討フェーズに入っている。

このスライドが、4日間行われたワークショップの様子だ。GlobalLogic社の5拠点(米国・インド・ウクライナ・イギリス・ポーランド)とLumada Innovation Hub Tokyoを接続し、デザイナー、アーキテクト、DXプロセス専門家、エンジニアなど50名ほどが参加した。

ワークショップの成果として、GlobalLogic社の拠点ごとにそれぞれのケイパビリティやデザイン手法、パーソナリティを備えており、そこに国内事情に詳しいLumada Innovation Hub Tokyoのスペシャリストが加わることで、お客さまのニーズに沿った最適なプロセスを設計できることがわかり、GlobalLogic社とLumada Innovation Hub Tokyoの高い親和性が確認できたという。

サービス提供へ、協創のスピードアップを図る

今回のワークショップでは、協創プロセスの上流部分である関係構築から価値創出の前半までを両社で確認した。今後も引き続き、社内外の複数プロジェクトを通じて協創プロセスのブラッシュアップを進め、国内サービス開始に向けての人財交流や育成など必要な準備を進める。

このワークショップを経たGlobalLogic社と日立の融合について、加治は最後にこうまとめた。「このワークショップの一連のプロセスで日立が一番驚いたことは、GlobalLogic社のスピードです。ミッションクリティカルな仕事をしている日立にとって、ワークショップを通じて感じたスピード感はすでにいい意味での影響をもたらしました。アジャイル型の議論に習熟したGlobalLogic社に学びながら、われわれもスピードを上げて、少しでもお客さまのお役に立てるようなチャレンジをどんどん繰り返していきたい」

2022年度のサービス提供をめざし、GlobalLogic社と日立の協創はスピードを上げている。

加治慶光 Yoshimitsu Kaji
Lumada Innovation Hub Senior Principal。シナモンAI 取締役会長、 鎌倉市スマートシティ推進参与。

青山学院大学経済学部を卒業後、富士銀行、広告会社を経てケロッグ経営大学院MBAを修了。日本コカ・コーラ、タイム・ワーナー、ソニー・ピクチャーズ、日産自動車、オリンピック・パラリンピック招致委員会などを経て首相官邸国際広報室へ。その後アクセンチュアにてブランディング、イノベーション、働き方改革、SDGs、地方拡張などを担当後、現職。2016年Slush Asia Co-CMOも務め日本のスタートアップムーブメントを盛り上げた。