Baby map、mamaroは、いずれも当初の予想を超えるスピードで成長している。今後は、2つのサービス/製品の連携強化や、IoTのインターフェースとしてmamaroを進化させることを検討中だという。「ただ良いことをするだけではなく、社会にインパクトを残したい」という長谷川氏は、そのためにITが欠かせないと語る。

「第1回:お母さんを取り巻く環境の『バランス調整役』に」はこちら>
「第2回:根底にあるのは「お母さん」という存在への感謝」はこちら>

単に「良い」だけではなく、インパクトを与えたい

「Trimでは、社会に良い影響を及ぼすサービスや製品を開発・提供することはもちろん、それによって大きなインパクトを与えるということを目標にしています。どんな良いことも、小さな影響力しか持てなければ、幸せにできる人の数は限られてしまうからです」

そのためには、サービス・製品を1人でも多くの人に提供し、価値を広く届けるとともに、ビジネスの持続性を高めることが不可欠になる。これを実現する方法として同社が構想しているのが、Baby mapとmamaroの連携を強化することだという。

「現在は、目覚ましく進化するデジタル技術が世の中を大きく変えつつあります。ただ、本当に意味のあることを成し遂げたければ、デジタルだけでは不十分。デジタルの世界とリアルの世界が密に連携することが大切であり、当社にとってはBaby mapとmamaroの連携が、その方法になると考えています。例えば、mamaroにはモニターが設置されており、設置元の商業施設がコマーシャルなどを流せるようになっています。このモニターを相互通信可能なインターフェースとして使うことができれば、個室でお母さんたちの相談を受け付けられるような仕組みが実現できると思います。また、mamaroには非接触型のセンサーも設置していて、子どもの体温や脈拍を測定することができます。それらの情報をBaby mapで閲覧できるようにすれば、利用者はスマートフォン上で子どもの体調管理が行えるようになります。さらに顔認証や指紋認証といった、生体認証技術を搭載すれば、繰り返し利用する家族の子どもの成長記録が行える設備へとmamaroを進化させることもできると思います。

もちろん、これらのアイデアを具現化するには情報セキュリティを担保する仕組みも検討しなければいけないため、今はまだ構想段階です。ただ、0歳から3歳までの乳幼児の行動データを取得する仕組みは、これまで世の中にほとんどなく、これが取得できることは、プロダクトの大きな付加価値になると考えています。Baby mapとmamaroという、デジタル/リアル両方のプロダクトを持つ私たちだからこそ可能な、さまざまな仕掛けを検討していきたいですね」

世界中の悩めるお母さんをサポートしていく

「直近の取り組みとしては、鉄道駅へのmamaro設置による実証実験や、一般企業とのコラボレーションなどが進んでいます。意外なところでは、神社からのお問い合わせもあります。お食い初めや七五三など、子どもと一緒に訪れる行事は多いものの、授乳室がある神社はあまり見かけないですよね。今後、まずは国内でのさらなる設置拡大に力を入れていきますが、ゆくゆくはBaby map同様、mamaroもグローバル展開を視野に入れていきます。子育て中にお母さんが感じる不満、不便には各国共通の部分も多いため、役に立てる余地は十分あると考えています」

金融業におけるFinTech、農業におけるAgriTechのように、子育てにまつわるテクノロジー活用は「BabyTech」と呼ばれる。Trimの事業は、そこからさらに枠を広げ、デジタルの世界と現実の世界の両方で、お母さんたちの毎日を助けてくれるものといえるだろう。

「やりたいことや挑戦したいことは山ほどありますが、どんな取り組みにおいても、お母さんへの感謝の気持ちをつなげていくということが軸にあります。小規模なスタートアップだからこそのスピード感を持って、取り組みを加速していきたいと思います」と長谷川氏は語った。

長谷川 裕介
1983年神奈川県横浜市生まれ。大学卒業後、広告代理店でコピーライター、プランナー、クリエイティブディレクターとしてキャリアを築いた後、医療系ベンチャーへ転職。CIO、新規事業責任者としてアプリ開発などを行う。2015年、「子育てをする、すべてのお母さんたちが快適に過ごせる社会の創造」をめざしてTrimを設立。授乳室、おむつ交換台の検索アプリ「Baby map」、完全個室型ベビーケアルーム「mamaro」を展開している。