Lumada Innovation Hub Tokyoで協創するスペシャリストは、互いに連携し合うことでそれぞれの専門性を発揮している。そうしたつながりはお客さまとも、また、お客さま同士でも可能だとLIHT Directorの笠井嘉は指摘する。笠井と4人のスペシャリスト(新村幸裕、四ッ谷雅輝、赤司卓也、篠倉美紀)がそれぞれの立場から、Lumada Innovation Hub Tokyoに期待する機能と役割を語る。その先には、複雑な社会課題の解決という大きな目標がある。

「第1回:協創は課題の発見から始まる」はこちら>
「第2回:スペシャリストがチームで課題解決に伴走する」はこちら>
「第3回:多様な視点が課題を解決に導く」はこちら>
「第4回:Lumada Innovation Hub Tokyoはお客さま同士もつなぐ場でありたい」
「第5回:複雑な社会課題はオープンでフラットな協創のチームで解決する」はこちら>

より広く、深く、そして早く

――お客さまとの協創で印象的だったのはどんなことでしょう。特に、Lumada Innovation Hub Tokyoで仕事をするようになって、何か変化を感じていますか。

新村
あるとき、お客さま企業の社長さんから、「いや、実はね」という言葉を聞くことができました。その社長さんは部下の方と一緒に、何かアイデアを得ようとLumada Innovation Hub Tokyoにいらしていました。最初はガードが硬かったのですが、ある瞬間に「いや、実はね……」と心を開いてくださった。それをきっかけに、スペシャリストたちを巻き込んで、深掘りしていきました。このような、お客さまの中にあるものを引き出せた、心を開いていただけた瞬間が記憶に残っています。

四ッ谷
以前は、日立社内の担当者から断片的に聞くしかなかったような情報も、データの検証に入る前に、Lumada Innovation Hub Tokyoでのワークショップやディスカッションでお客さまの課題を俯瞰的に捉え、体系的に整理できるようになりました。Lumada Innovation Hub Tokyoには、このようなアプローチを行うためのナレッジやツールも整備されています。お客さまを深く理解できるようになったので、PoC(Proof of Concept)の段階に進んでからも、ご意向に沿ったアウトプットの方法を選ぶなどの建設的な試みができるようになり、「ここまでやってもらえるのか」と言っていただけたときには、嬉しく感じました。

――今のLumada Innovation Hub Tokyoという施設についてはどう感じていますか。また、今後はどのような場にしていきたいですか。

篠倉
お客さまがご覧になっても、「日立は本気だな」と感じていただけている施設になっていると思いますし、そういった気持ちがLumada Innovation Hub Tokyoに行ってみようというアクションにつながるケースが増えてきているのではないかとも思います。

四ッ谷
私はLumada Innovation Hub Tokyo開設に向けたプロジェクトにも関わっていたので、設備にも思い入れがあります。部屋一つひとつに個性があって、「こういうディスカッションをしたいからこの部屋を選ぼう」といった選び方ができます。

出会いを生み、アイデアを生む場に

新村
開設当初は「新しい施設が出来たから見に行ってみよう」が来場の動機という方も多かったはずです。しかし最近は「Lumada Innovation Hub Tokyoへ行くとヒントが得られる」というようなクチコミ的な広がりもあるように感じています。

笠井
新型コロナの影響で、これまではオープンなミートアップをするのが難しい面もありました。オンラインでの協働にも慣れてきましたが、状況が改善すれば、フィジカルな出会いの場、それも、ここへ来なければ出会えない人との出会いが得られる場を設けられないかと考えています。Lumada Innovation Hub Tokyoの開設に先駆けて日立では社会価値、環境価値、経済価値とQoLの向上を実現するオープンイノベーションを加速するパートナー制度「Lumadaアライアンスプログラム」を展開していますが、その実践の場としてもLumada Innovation Hub Tokyoを活用していきたいです。

赤司
私も、もっと気軽に来ていただける場にしたいと思っています。業界も経験も異なる人が同じ場所にいて、カジュアルな会話をするだけでもいいと思います。もちろんそこには、さまざまなプロジェクトでのデザイン経験があり、今年7月から在席しているGlobalLogic Japan社のメンバーもいます。Lumada Innovation Hub Tokyoは、多様な人たちがそれぞれの知見を組み合わせることで、新しいアイデアが日々生まれるような、そんな場になればと思います。

篠倉
ふらっと立ち寄られたお客さま同士のディスカッションから偶発的に、「あっ」と驚くようなアイデアが生まれる。そんな場になれば理想的です。

新村
そうですね。Lumada Innovation Hub Tokyoであれば、そうして生まれたアイデアを形にして先へとつないでいくことができます。そのためのスペシャリストがここにはいます。

笠井
公民館よりも敷居が低く、井戸端会議よりはもう少しちゃんと何かやっている、集会所のようなイメージですね。実はここLumada Innovation Hub Tokyoには、日立のロゴがありません。日立であるか日立でないかという分け隔ても必要なく、たとえば、あるお客さま企業の経営者の方と、別のお客さまの新入社員が、フラットに話をしているようなシーンをここで見てみたいと思っています。(第5回へつづく)

「第5回:複雑な社会課題はオープンでフラットな協創のチームで解決する」はこちら>

新村幸裕(しんむら・ゆきひろ)
株式会社日立製作所 デジタルシステム&サービス統括本部 社会イノベーション事業統括本部 Lumada CoE DX協創推進部 主任技師。DXコーディネーター。
通信系システムをはじめとしたミッションクリティカルなシステムのソフトウェア開発や新規事業開拓のプロジェクトマネージャーを経験。現在はさまざまな業務経験やコネクションを生かしながら、DXコーディネーターとして活動。お客さまが抱える課題への共感を第一に、より良い課題解決、関係者の巻き込みを行いながら、その先の社会イノベーション実現をめざす。

四ッ谷雅輝(よつたに・まさき)
株式会社日立製作所 デジタルシステム&サービス統括本部 社会イノベーション事業統括本部 Lumada CoE AIビジネス推進部 主任技師。データサイエンティスト。
2003年入社。ミドルウェア研究開発部門からキャリアをスタートし、データベースやアプリケーションのプロトタイプ開発などに携わる。その後、ソリューションやサービスの検討業務を経験し、2012年にはデータ利活用に関するコンサルティング「データマイスターサービス」の立ち上げに参加。以後、公共や金融、小売など多岐にわたる分野のデータ活用コンサルティングや協創活動などに従事。

赤司卓也(あかし・たくや)
株式会社日立製作所 デジタルシステム&サービス統括本部 社会イノベーション事業統括本部 Lumada CoE NEXPERIENCE推進部 主任デザイナー。デザインストラテジスト。
2003年、日立製作所入社。メディカルバイオ計測機器やエレベーターなどの公共機器、家電の先行デザイン開発などプロダクトデザインを担当。2007年以降、金融サービスやWebサービスをはじめとする情報デザイン、サービスデザインなどに従事。2010年には、未来洞察から新事業の可能性を探索するビジョンデザイン領域を立ち上げ、ビジョン起点の顧客協創をリード。現在は日立のDX推進拠点Lumada Innovation Hub Tokyoにてデザインストラテジストとして活動し、顧客協創プロジェクトを推進している。

篠倉美紀(しのくら・みき)
株式会社日立製作所 デジタルシステム&サービス統括本部 社会イノベーション事業統括本部 Lumada CoE NEXPERIENCE推進部 主任技師。ユーザーリサーチャー。
日立製作所入社後、情報システムや建設機械等のユーザーリサーチに従事。土木工事における現場調査をもとに、ICT/IoT施工のクラウドソリューションを事業化。2019年より、デザインシンキングをベースとした、日立独自の顧客協創活動であるExアプローチを推進。日立グループ内のデザインシンカーを対象とした、社内コミュニティの立ち上げにも携わる。

笠井 嘉(かさい・よしみ)
株式会社日立製作所 デジタルシステム&サービス統括本部 社会イノベーション事業統括本部 Lumada CoE NEXPERIENCE推進部 LIHT Director。
日立製作所入社後、医療機器および情報機器のプロダクトデザインを担当。ユーザーリサーチを経て、デザインの技術を活かした顧客協創活動に従事。2016年にHitachi America User Experience Design Labのラボ長として、北米での顧客協創活動や協創方法論の手法化を推進。帰国後、サービス/ビジョンデザインの実践および手法開発をするデザイン部のマネジメントに従事。2021年より現職。