2020年12月3日(木)にZoomにて行われた公開取材、オンラインミーティング『楠木建の一問一答』の様子をお届けする最終回。キャリアの悩み、SNSや読書との向き合い方など、楠木建教授が自身の体験を織り交ぜながら参加者の疑問に答えていく。

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Q:SNSとはどう距離を置いている?

――IT企業で事業企画に関わっております。SNSについて質問です。わたしはオープンデータの活用をすごく推していて、SNSの普及で民主化が進むことでオープンデータの市場がどんどん最適化されていくことを信じてやってきたのですが、近年SNS上ではフェイクニュースが盛り上がってしまって、「オープンデータの市場と民主主義はどうなってしまうのか」と、暗澹としておりました。そこで、楠木先生はどういうふうにSNSとの距離を置かれているのでしょうか。また、コミュニケーションについてはどうお考えでしょうか。

楠木
わたしは、SNSはほとんど使っていないですね。そもそもわりと距離を置いています。Twitterや自分のメディアに書いたものはメモ代わりに使っています。そこで書いたことにものすごく強い批判を受けることがあります。もうとにかく罵倒されるわけです。

先日、朝日新聞にアメリカの大統領選挙の関連で「良い負け方って何だろう」という記事を書いたんです。そしたらTwitterで非常に心温まるコメントをいただきまして。

「負け方に美しさを求めるのはスポーツだけ! 政治と戦争に美しい負け方なんてない!アホ抜かすな!」と。

相当怒っていらっしゃる。でも、「負け方に美しさを求めるのはスポーツだけ」なんて、なかなかいいこと言う (笑)。それもこれも、SNS上のつながりと言ってもものすごく薄いもので、直接会ったこともなければ、自宅に襲来することもないので、「基本スルー」でいいんじゃないかなと思っています。

距離を置くというより、もはや自分とは関係ないですよね。生活には影響を与えないですから。

楠木 建

一橋ビジネススクール教授
1964年東京生まれ。幼少期を南アフリカで過ごす。一橋大学大学院商学研究科博士課程修了(1992)。一橋大学商学部専任講師、一橋大学商学部助教授、一橋大学イノベーション研究センター助教授、ボッコーニ大学経営大学院(イタリア・ミラノ)客員教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授、2010年より現職。

著書に『逆・タイムマシン経営論』(2020,日経BP社)、『室内生活 スローで過剰な読書論』(2019、晶文社)、『すべては「好き嫌い」から始まる』(2019、文藝春秋)、『「好き嫌い」と才能』(2016、東洋経済新報社)、『好きなようにしてください:たった一つの「仕事」の原則』(2016、ダイヤモンド社)、『「好き嫌い」と経営』(2014、東洋経済新報社)、『戦略読書日記』(2013、プレジデント社)、『経営センスの論理』(2013、新潮新書)、『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』(2010、東洋経済新報社)などがある。

楠木教授からのお知らせ

思うところありまして、僕の考えや意見を読者の方々に直接お伝えするクローズドな場、「楠木建の頭の中」を開設いたしました。仕事や生活の中で経験したこと・見聞きしたことから考えたことごとを配信し、読者の方々ともやり取りするコミュニティです。
この10年ほどTwitterを使ってきて、以下の3点について不便を感じていました。

・140字しか書けない
・オープンな場なので、仕事や生活経験の具体的な中身については書きにくい
・考えごとや主張をツイートすると、不特定多数の人から筋違いの攻撃を受ける

「楠木建の頭の中」は僕のTwitterの拡張版というか裏バージョンです。もう少し長く書ける「拡張版」があれば1の問題は解決しますし、クローズドな場に限定すれば2と3の不都合を気にせずに話ができます。加えて、この場であればお読みいただく方々に質問やコメントをいただき、やりとりするのも容易になります。
不定期ですが、メンバーの方々と直接話をする機会も持ちたいと思います。
ビジネスや経営に限らず、人間の世の中について考えることに興味関心をお持ちの方々のご参加をお待ちしております。DMM社のプラットフォーム(月額500円)を使っています。

お申し込みはこちらまで
https://lounge.dmm.com/detail/2069/

ご参加をお待ちしております。