最近の論調を見ていると、GAFA※というのが、あたかも国とか政府とか社会運動体みたいに取り上げられるケースを多く見かけます。そうした文脈で「世界を支配する」とか「富やデータの新たな寡占」とか言われたりしますが、GAFAというのは、単なる上場企業なんです。それぞれが上場企業としての長期利益を実現する手段として、今のような商売がある。重要なのは、企業という生き物である以上、儲かることにしか絶対本気にならないようにできているということです。その視点で、改めてGAFAの実像を見てみましょうというのが今回のテーマです。

※GAFA:Google、Apple、Facebook、Amazonの頭文字による呼称。

GAFAは、プラットフォーマーという言葉でくくられます。しかし、この4社をプラットフォーマーとひとくくりにするのは、「JR」と「ANA」と「クロネコヤマト」と「ジェイソン・ステイサム(映画『トランスポーター』の主演俳優)」を合わせて「トランスポーター」と言っているようなものです。まあどれもトランスポートはしているんだけれども、商売としては、それぞれ全然違う。島倉千代子さんは「人生いろいろ」と歌いましたが、「GAFAもいろいろ」なわけです。

では、どういろいろなのか。4つのプラットフォーマーは、下図のように2軸で整理できるというのが僕の分類枠組みです。

縦軸は、リアルかバーチャルかです。情報という形のないもので完結するビジネスをしているのか、モノとか人が実際に動くリアルなオペレーションを抱えているのか、という軸ですね。
横軸は、プロダクトかインフラかです。非常に強力なプロダクトで1点突破して展開するというタイプなのか、インフラ全体の面を作って勝負しようとしているのか、という軸です。
僕はこの4象限に、4社がきれいにわかれると思っているんです。

この図で見ますと、それぞれに強み弱みというのがやっぱりあります。プラットフォーマーというと何でもできる万能選手みたいに聞こえますが、実際は商売の間口はけっこう狭い。いずれも稼ぐ方法は、シンプルでフォーカスが効いています。やっていること(構造)には非常に複雑なメカニズムがあるのだけれども、最終的に出てくるアウトプットである商品やサービスの価値においては、単純である。これが、古今東西の優れた商売の原理原則なんじゃないかなと思っています。

例えば、トヨタがそうです。トヨタの組み上げたモノの作り方と売り方、特に作り方でいえばトヨタ生産方式は極めて複雑なメカニズムを持っていますが、そこから作られるモノの価値は、「燃費が良い」とか、「壊れない」というシンプルでわかりやすいものです。それはGAFAにも言えることです。

GAFAの2017年度の売上高を見ますと、Facebookが406億ドル、Googleは1,108億ドル、Amazonが1,778億ドル、Appleが2,292億ドルです。数字はみんな大きいのですが、AppleとFacebookでは5倍以上の開きがあります。

2017年度売上高(単位:億ドル)[各社アニュアルレポートより]

*GoogleはAlphabetとしての数字

次がポイントなのですが、売上高における中核事業比率を見てみますと、何でもかんでもやっているように見えて、Facebookというのはほぼ100%広告の会社です。4年前(2013年度)の数字をちょっと調べてみたら、89%なんです。つまり、どんどん幅が広がっているように見えて、結局どこで稼いでいるかというと、ますます広告に対する依存度が高まっているのです。Googleもいろいろなことをやりますけれども、これだけいろいろとやっていても86%が広告収入です。バーチャル領域のFacebookとGoogleは、基本的に広告の会社だということです。

2017年度売上高における中核事業比率[各社アニュアルレポートより]

Appleは87%がハードウェア、中でも圧倒的にiPhoneの会社です。利益でいえば、さらにiPhoneに偏ります。現時点でのAppleは、基本的には「iPhoneを作って売って稼いでいる会社」です。
Amazonも、最近だとAWS(アマゾンウェブサービス)というBtoBのサービスインフラの事業が注目されますが、結局9割は小売業なんです。

ひとくくりにGAFAといっても、このように見ていくと、商売としては意外とフォーカスが効いています。

楠木 建
一橋ビジネススクール教授
1964年東京生まれ。幼少期を南アフリカで過ごす。一橋大学大学院商学研究科博士課程修了(1992)。一橋大学商学部専任講師、一橋大学商学部助教授、一橋大学イノベーション研究センター助教授、ボッコーニ大学経営大学院(イタリア・ミラノ)客員教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授、2010年より現職。
著書に『「好き嫌い」と才能』(2016、東洋経済新報社)、『好きなようにしてください:たった一つの「仕事」の原則』(2016、ダイヤモンド社)、『「好き嫌い」と経営』(2014、東洋経済新報社)、『戦略読書日記』(2013、プレジデント社)、『経営センスの論理』(2013、新潮新書)、『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』(2010、東洋経済新報社)などがある。

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