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GAFAというメガプラットフォーマーに対して、われわれはどう構えるべきなのか。とにかく今はGAFAにやられちゃうっていう話が横溢しています。特にAmazonにやられるっていう話で、アメリカの株式市場には「Amazon恐怖銘柄指数」みたいなものがあったりします。それは、確かに真正面から競合する企業、たとえばウォルマートはもちろん大変でしょうし、Netflixも真正面競争なので大変でしょう。

でもそういう会社というのは、ごく一部です。多数のプレイヤーが乗ってくる土台というもともとのプラットフォームの意味からして、メガプラットフォームは「対抗」するものではなく、「利用」するものだということです。むしろメガプラットフォーマーは、簡便で低コストの外注先ととらえるべきです。お金さえ払えば、これだけのことができるっていうのは、非常に有用ですよね。つまり、誰でも利用できる非競争領域ということです。

誰でもGoogleやFacebookで、非常に安価でターゲットに効率的にリーチする広告をうてるようになった。これは、利用すればいいじゃないか、と。特に中小企業にとってAmazonは、モノを作る企画力さえあれば、非常に便利な販売流通のプラットフォームです。もちろん、その分の手数料は取られるのですが、自分でやろうと思ったらもっとコストかかってしまうので、かなり便利に使えるはずです。

意味はやや違うのですが、例えばiPhoneというのは、もの作りの観点からしても非常にプラットフォーム性の高い製品で、日本の電子部品メーカーから見ると、ものすごくいいお客さんです。最先端の新しい機能の提案があるような部品を、バンバン乗っけてもらっているわけで、そういう会社はプラットフォーマーをうまく利用しているわけです。これが、正しい姿勢だと思います。

たとえ対抗する場合でも、正面から対抗するよりは側面を突くべきです。AmazonとかGoogleのような水平的なプラットフォームに対しては、垂直的なプラットフォームに可能性がある。

例えば、洋服の世界でいうとユニクロ。ユニクロの商品はAmazonでは売っていません。自社のアプリを広めて、自社のECを作り込んでいる。自動化倉庫に投資をして、顧客にとって非常に便利なECのプラットフォームをつくりつつある。これはライフウェアに特化した垂直的なプラットフォームですよね。僕は十分に対抗できると思います。

ほかにも、プロユースの部材や工具を扱う卸にトラスコ中山という会社があります。これは、Amazonの仕入先です。問屋を極めるというコンセプトを実践して、きわめて広範な商材について即納体制を整えています。こういう商材については、さすがのAmazonも全部が全部自社でメーカーから直接仕入れるわけにはいかない。トラスコ中山は圧倒的な価値をもつ垂直的なプラットフォームを提供し、Amazonを顧客として成長している。

出発点に戻ると、結局GAFAは商売をしている企業に過ぎない。その商売の生命線は、汎用のプラットフォームであるということです。だから、ユニクロが成功しているからといって、洋服という限定された世界で、GAFAがユニクロに完全に対抗することなんてできるわけがないんです。どんなにAmazonがファッションに力を入れても、その特定の事業領域を垂直的に深掘りすることはできないし、そもそもそんなことをやっても儲からないので、その気もない。

メガプラットフォーマーという巨体になってしまうと、上場企業としてそれに見合う商売以外には手を出すことができません。こういう強力な企業が出てくる時代は、改めて競争戦略の原点に立ち戻るいい機会だと思います。それはつまり、よそができないこと、やらないことをやるということ。これこそが商売の原点です。

画像: メガプラットフォーマーの実像を見極める-その5
水平には垂直で。

楠木 建
一橋大学ビジネススクール教授
1964年東京生まれ。幼少期を南アフリカで過ごす。一橋大学大学院商学研究科博士課程修了(1992)。一橋大学商学部専任講師、一橋大学商学部助教授、一橋大学イノベーション研究センター助教授、ボッコーニ大学経営大学院(イタリア・ミラノ)客員教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授、2010年より現職。
著書に『「好き嫌い」と才能』(2016、東洋経済新報社)、『好きなようにしてください:たった一つの「仕事」の原則』(2016、ダイヤモンド社)、『「好き嫌い」と経営』(2014、東洋経済新報社)、『戦略読書日記』(2013、プレジデント社)、『経営センスの論理』(2013、新潮新書)、『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』(2010、東洋経済新報社)などがある。

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