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IoT(Internet of Things)は既存の枠組みを大きく変えるパワーを持っています。「クルマ」も例外ではありません。移動手段として発展してきたクルマがインターネットにつながることで、もっと安全でもっと楽しいモノに進化するのです。株式会社日立製作所、日立オートモティブシステムズ株式会社、クラリオン株式会社をはじめとしたクルマとITを知り尽くした日立グループ(以下、日立)が描く、これからのクルマ社会。その未来像をご紹介します。

クルマによる事故がなくなる未来へ

— 後を絶たない、クルマによる痛ましい事故

「ちょっと脇見運転をしていたら、前の車に衝突しそうになった」
「標識を見落として、一方通行を逆走しそうになった」
「カーブを曲がったとたん、障害物が見えて急ブレーキを踏んだ」
「あわててアクセルとブレーキを踏み間違えてしまった」

クルマを運転している方なら、こんな思いを一度や二度は経験したことがあるでしょう。ヒヤリとしただけで済めばまだしも、クルマ社会では痛ましい事故が後を絶ちません。「クルマの安全をどう確保するか」「誰もが安心してクルマを使える社会をどう実現するか」は、クルマ社会がかかえる長年の課題でした。

— 自動運転の実現でクルマの安全・安心をサポート

クルマの安全・安心を実現する技術として期待されているのが「自動運転」です。自動運転は交通の流れをスムーズにして渋滞を解消・緩和させるだけでなく、疲労などによる居眠り運転、操作ミスによる交通事故や、スピード違反なども減らせる効果があるといわれています。人間の操作を必要としない自動運転が実用化されれば、運転しているドライバーの精神的・身体的な負担が軽減し、長距離のドライブでも快適に移動できる余裕が生まれます。また、高齢者でも安全にクルマを利用できるようになれば、たとえ遠くても一人で病院や買い物に行きやすくなるなど、生活の質を向上できるでしょう。

このような社会的ニーズを受けて、日立では2020年をめどに、外部から得られる情報と、「走る」「曲がる」「止まる」といったクルマの機能を高度に協調させた自動運転支援システムの実現をめざしています。ポイントは「燃費・時間・快適・安全」という4つの機能をバランスよく満たすこと。現在製品化されているADAS(先進運転支援システム)を進化させた自動運転支援システムでは、最適ルートの選択による到達時間の短縮や燃費向上といったメリットが期待されています。

なぜ、日立がこのようなプロジェクトを推進できるのか。それは、クラウドやビッグデータ解析で実績のある株式会社日立製作所と、エンジン制御、電動システムや変速機制御といったパワートレイン系、ブレーキ、ステアリング、サスペンションといった走行系アクチュエータなど幅広い製品を供給してきた日立オートモティブシステムズ株式会社、そしてカーナビや地図情報を長年手がけてきたクラリオン株式会社が連携し、設計・開発をはじめ、生産・アフターサービスまで、クルマのライフサイクルすべてに関わる豊富な技術、ノウハウを有しているからです。

すでに始まっている自動運転を実現するステップの1つが、富士重工業株式会社と日立が共同開発した運転支援システム「アイサイト」です。距離情報を取得できるステレオカメラと緊急自動ブレーキを組み合わせたこの仕組みは、2008年発売の「レガシィ アイサイト」に搭載され「ぶつからないクルマ」として大きな注目を集めました。

また、クラリオン株式会社では、駐車を安全、かつ容易にできる駐車支援システム「SurroundEye(全周囲俯瞰映像システム)」を手掛けています。これらは日立の車載カメラによる画像認識技術を応用した製品です。

— コネクティッドカーがクルマと人をつなぐ

自動運転の実現には、クルマに搭載する自動運転支援システムが交通情報や信号情報などが含まれる社会インフラとつながり、前後の自動車と相互に通信して、周囲の広範囲な環境変化をクルマが判断できることが必要です。

例えば、カメラやレーダーなどのセンサーが車両周囲の360度をセンシングする技術により、他車や人の位置情報を取得することで衝突を回避したり、車線変更をアシストすることが可能になります。これは自動運転には必須の技術です。

また、ネットワークにいつもつながっているクルマ「コネクテッドカー」で考えてみましょう。コネクテッドカーは、GPS(全地球測位網)から収集される位置や速度などのプローブ情報、車両からの制御情報や各種センサー情報などのデータをクラウド上に集め、ビッグデータ解析することで「渋滞」「工事中」「交通事故」などの道路状況を把握。クラウドから車両に状況が自動配信されることで、迂回路の提示などの走行支援に役立てることができます。 このように、自動運転にはクルマの機能面の技術、ノウハウだけでなく、社会インフラ分野やビッグデータ解析技術などIT分野での技術、ノウハウも必要です。日立には、数多くの技術、ノウハウを垂直統合で提供できる総合力があります。それが、自動運転支援システムの実現に向けた大きなアドバンテージとなっているのです。

人とクルマから生まれる新しいビジネス

— スマートフォンを活用し、「安全・安心なクルマ社会」へ

IoTによって変わるのは、クルマの運転に関することだけではありません。視点を「クルマ」ではなく、そこに乗る「人」を中心に据えれば、さまざまな情報が「社会」ともつながり、新しい価値やビジネスの創造にも発展していくからです。コネクテッドカーから得られるさまざまな情報を利用して、便利なサービスを作りたい。そして、より安全・安心なクルマ社会を実現していきたい――そんな思いから「クルマ向けスマートモビリティサービス」が生まれました。そのサービスプラットフォームを使って、いま日立は街の情報をできるだけ多くの、クラウドの地図情報サービスに集めるしくみをつくっています。日立が実現しようとしている例をご紹介します。

情報の収集に使うツールは、スマートフォン。例えば、クルマに取り付けたスマートフォンの加速度センサーが急ブレーキを検知して自動的にクラウドへ送信します。この情報が集中した地点を「急ブレーキ多発地点」として地図にマークされます。また、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)でも情報を集めます。スクールゾーンなど走行に注意が必要と感じたエリア、事故や災害で通れなくなった場所を見つけたら、利用者が安全な場所に停車してからスマートフォンでクラウドに投稿。その地点を地図にマークします。さらにスマートフォンのカメラが運転中に捉えた標識や看板の情報も、自動的にクラウドへ送信。見にくい標識や重要な標識も、投稿された情報を基に地図上にマークされていきます。

こうしてリアルタイムに更新されていく地図を使い、注意が必要な地点を走るドライバーに「この先、急ブレーキ多発地点です」「この先、スクールゾーンです」「この先、工事が行われています」といったメッセージをタイミングよく伝え、前もって注意を促すシステムを構築しています。このようにしてみんなで集めた情報を社会や会社で一緒に使えば、事故防止と安全への確かな力を手に入れられるはずです。これが日立の考える「安全・安心なクルマ社会」を実現するための1つのアプローチです。

— 同僚ドライバーのノウハウを従業員全員で共有する

また、ビジネスの面でもこのしくみは生かすことができます。

例えば、配送業や物販業、保守メンテナンスなどのルートサービスで効率的な配送・巡回計画を実現するための運行管理システムへの活用があげられます。

運行管理システムのベースとなる地図情報は、さまざまな用途で使われる汎用性の高い情報がメインです。そのため、お客さま独自の運行ルートや安全指示、注意点などを慣れない新人ドライバーに指示するのが難しいとの声が寄せられていました。そこで日立は、クラウドを活用した独自の地図情報を作成・配信できるサービスを提供しています。

このサービスを使えば、「この曲がり角は飛び出しが多い」「道幅が広いので休憩するならこの場所で」といった、実際に走って知り得た同僚ドライバーのノウハウを従業員全員で共有することができます。カーナビやタブレットなどに表示されるオリジナルアイコンは、手元のスマートデバイス から簡単に登録できるため、ある配送業の企業は1カ月あたり数千件ものアイコンを追加登録しながら、より利便性や安全性の高い運行管理とナビゲーションに役立てています。

これらのサービスの裏側では、クルマの制御情報やソーシャルデータなどのビッグデータを高速に収集・分析する技術、クラウド、クルマの制御技術など、日立が磨いてきたさまざまな技術が息づいています。

— 近未来にはこんな楽しいショッピングも可能に

クルマで走行中、最寄りのショッピングモールからカーナビに「タイムセール実施中」との情報が表示されました。「寄ってみようか。でも駐車できるかどうか心配だな」--そんな不安もなくなる時代が近づいています。日立はいま、カーナビやスマートデバイスに利用者の好みにあった店舗情報を配信した上で、最も近い駐車場の空きスペースに誘導し「自動駐車」するまでのシステム開発に取り組んでいます。

イメージ的には「バレーパーキング」が近いかもしれません。利用客がホテルの玄関前でクルマを降りると、係員がキーを預かり駐車場まで運んでくれるシーンを想い起こしてください。将来はそれをクルマの自動運転が実現してくれるのです。あなたはショッピングモールの入り口でクルマを降り、そのまま店内で買い物を楽しむだけ。その間にクルマは空きスペースを勝手に見つけて自動で駐車します。立体駐車場や、狭い柱の間のスペースだったとしても、衝突を回避しながらスムーズに駐車してくれるのです。さらに帰る時には、クルマがあなたを迎えにきてくれます。クルマのキーまたはスマートフォンからから信号を送れば、あなたがどこにいるのか、いつごろ到着するのかを計算し、ショッピングモールの駐車場の出口で待っていてくれるのです。このような話も決して夢物語ではありません。

— すでに萌芽しつつある新しいビジネスとは

このほかにも日立は、プローブ情報から分析されるドライバーの「運転特性診断サービス」を検討しています。

このサービスにより、自動車学校では運転指導を行えたり、保険会社では自動車保険を提供できることなどが期待されます。将来は、運転特性として「安全な運転をするドライバー」だと判定された場合、保険料が安くなる、逆に「危険な運転をしがちなドライバー」だった場合は、クルマに一定の自動制御(スピードや自動運転の有無など)を付ければ保険料が下がるといった新しい保険プランも出てくるかもしれません。あるいはカーシェアリングを提供する企業なら、ドライバーの運転特性に合わせてクルマの制御を自動的に変えるといったサービスも可能になるでしょう。

画像: — すでに萌芽しつつある新しいビジネスとは

このように、コネクテッドカーに代表されるクルマ自体の急速な進化が、より安全・安心で利便性の高い社会を実現する大きな推進力になろうとしています。クルマと人そして社会がネットワークによりシームレスにつながるIoT時代。それを最適につなげるためには、制御や自動運転をはじめとした「クルマ」のこと、安全性や利便性を求める「人」のこと、地図情報や交通情報、道路や街を中心とした「社会」のこと、さらにはそれを結びつける「ITやネットワーク」まで、あらゆる面に精通した「異業種をつなぐコーディネーター」が必要です。日立は、それを実現できる世界でも数少ない企業の1つとして、これからの社会をもっと安全に、もっと楽しくしていくために日立の総力を挙げて取り組みを推進していきます。

ADAS:Advanced Driver Assistance System
LEGACY、EyeSightは富士重工業株式会社の登録商標です。

・スマートフォンをクルマの中で使用する場合には、法規に従った装着と操作が前提です。

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