ビジネスの成長、持続可能な社会の実現が求められる中、ビッグデータなどを中心とした情報活用が進んでいる。

収集したデータをインテリジェンスへと変えていくイノベーティブな情報活用は、ビジネスにおいて広範なバリューチェーンの革新をもたらすと同時に、一人ひとりが最適な生活サービスを享受できる社会の実現や、グローバルな社会課題の解決へとその可能性を広げている。

本講演では日立がお客さまやパートナーと取り組む新しい情報活用や、トータルソリューションによって拡大していくイノベーションを紹介している。

株式会社日立製作所 執行役専務 情報・通信システム社 社長 齊藤 裕


求められるビジネスと社会のイノベーション

画像: 求められるビジネスと社会のイノベーション

私はこれまで長年にわたって、エンジニアとして、さまざまな社会インフラの制御システムを経験してきましたが、最近の社会インフラに対するニーズというのが、以前とは大きく変わってきたことを強く実感しています。ひとことで言えばサステナブルという言葉だと思いますが、事はそう簡単ではなく、スマートシティやスマートグリッドに代表されるように、生活者・利用者の人たちもそのシステムの中に参加しながら、社会インフラをうまく運用していくような仕組みが求められているということです。しかも、特に新興国では、短期間に、かつ適切な投資で構築するために、事業運営のノウハウやファイナンスなどもパッケージにしたトータルソリューションが求められています。そのためには、それぞれの領域でいろいろな経験やノウハウを持っている人たち、あるいは使う方々のノウハウや知恵を集めて活用することが重要になっています。

一方、ビジネスの分野では、情報を活用した経営がますます重要になってきています。すなわちグローバル化の中で成熟していく市場において、その生態系の一部として動いていくためには、消費者一人ひとりの満足のために、モバイルやソーシャルメディア、あるいはクラウドやビッグデータといったテクノロジーを取り込んで、しっかりしたサービスを他社に先駆けて提供していくことが必要になっているということです。最近、米国ではチーフデジタルオフィサー(CDO)と呼ばれる人たちが台頭していて、彼らはまさに、デジタルの知見によって、ビジネス全体を俯瞰しながら企業を社会や顧客に合う形に変革し、顧客を引き付けると同時に顧客に近づいていくための戦略を立案して実行していく役割を担っていると聞いています。要は、世の中や消費者の客観的かつ膨大なデータを集めながら、それを活用した先回りの経営が求められているということではないかと思います。

イノベーションをリードする新しい情報活用

まさに、情報の活用がイノベーションをもたらすということですが、冒頭、私は制御の世界で長年経験を積んできたという話をしました。社会インフラシステムの運用・保守において制御の最適化を図るには、まず現場のいろいろなデータを揃えて情報化し、見えるようにして、それをみんなの知恵を出し合ってインテリジェンスに変えていくということが必要になります。そしてその中から、ある種ひらめきのようなものを見つけてサービスの革新へつなげていく。そういうことがイノベーションを起こしていく根幹ではないかと思います。これは運用・保守の領域だけではなく、経営・運営の領域においても同じだと思います(図1)。

画像: 図1:インテリジェント化された情報の活用が鍵

図1:インテリジェント化された情報の活用が鍵

まず、運用・保守に関する業務効率化の観点から少し詳しく見てみます。この領域では安全性やサービスの向上、合理化、コスト削減だけではなく、その背景に現場の熟練者の方々がリタイアされてノウハウの継承が難しくなっているという事情もあります。この課題を解決するためには従来のやり方では難しく、新しい手法が必要となってきます。すでにいろいろなところで紹介されていますが、建設機械の新しい運用・保守サービスの例でご説明したいと思います。日立建機では、稼働状況などをセンサーでリアルタイムに監視するシステムをグローバルに展開していて、現場データに関するノウハウを持つ人が分析し、メンテナンスの時期や生産および在庫の最適化を図るだけでなく、故障発生の予測によって作業遅延を減らし、運用の効率化と信頼性の向上を実現しています。

次に、サービスの改革という観点です。従来、人の行動の結果は評価することができても、例えば、商品を買わなかった人の理由といったプロセスは分析することができませんでした。加えて、最近ではお客さまが心地よいと感じる対応や満足度がますます求められており、従業員の活力を引き出し、創造性を発揮させていく環境づくりが必要になっています。日立では、こうした環境づくりを支援するために、人の状態や行動などをデータとして収集し、可視化することによって利活用する技術を開発してきました。体の動きや体温などを24時間毎日連続で記録して的確なパーソナルケアを実現するライフ顕微鏡、組織内コミュニケーションの量と質を世界で初めて見える化したビジネス顕微鏡、脳の活動を見える化した光トポグラフィといった技術です。日立ではこうしたデータをヒューマンビッグデータと呼んで、これからのサービス改革につながる取り組みを行っています。こうした技術を使った例を紹介してみたいと思います(図2)。

画像: 図2: サービス改革への取り組み(ヒューマンビッグデータ)

図2: サービス改革への取り組み(ヒューマンビッグデータ)

まずビジネス顕微鏡を使ったコールセンター業務の改革例です。これは接客時の対応や職場の活気に着目してデータを分析することで、電話セールスの売り上げと休憩中のチームのコミュニケーションに相関関係があることを発見し、チーム内のコミュニケーションがうまくいくようにチームの再編成をすることで、受注率を13%あげることができたという例です。また、ライフ顕微鏡を使った例としては、柏レイソルのU-18のトレーニングでの活用があります。選手が、センサーから得られる自分のデータを客観的に観察し、効果的なトレーニングを考えるきっかけを作ることで、強い選手になりたい若手選手の夢の実現へ貢献しています。

このようにこれまでマクロにしかとらえられなかった人の動きを個人単位でとらえ客観的に分析することができるようになってきました。つまり、こうした情報活用によって、従来見えなかった根本原因や因果関係をとらえて、個に対するサービスの改革ができるようになってきたということです。私自身は、この見える化に日本人ならではのおもてなしの心といった現場力を加えることで、日本の強さというのがサービスの面でもさらに出てくるのではないかと感じています。日立では「IT」×「社会インフラ」ということで、いまさまざまな社会イノベーション事業に取り組んでいます。しかし、その社会は人がいて初めて成立します。この人と社会、人と社会インフラをつなぐところにIT があります。そしてサービスを受け取る人、ビジネスを支える人がそこにいます。人に焦点を当ててデータでとらえることで、人を生かすビジネス、サービスが生まれてくると考えています。

現在、こうしたビッグデータに多くのIT ベンダーが取り組んでいます。その中で、日立は何を強みにしていくのかという疑問をお持ちの方もいらっしゃいます。私はその問いに対して、日立には情報活用を生み出す源泉があるとお答えしています。一つは、サイエンスやデータアナリティクスで応えてきたR&Dの部隊がいること。そして、実業の世界でお客さまと一緒につくり上げてきたノウハウやインテリジェンスがあること、さらにそうしたアナリティクスの力やインテリジェンスをお客さまの新しいビジネスにつなげられるコンサルティングがあること。これらをあわせ持っているということです(図3)。

画像: 図3:情報活用力を生み出す源泉

図3:情報活用力を生み出す源泉

一つの事例として、データ・アナリティクス・マイスターが用いている事業価値評価技術(ビジネスダイナミクス)についてご紹介したいと思います。これは、情報活用によって事業価値を可視化する技術で、例えば売り上げ、利益、原価などの相関関係をモデリングして、経営への影響を定量的にシミュレーションするものです。この技術は、グローバルでの事業性評価、プロジェクトのリスク管理、人材のポートフォリオ管理などに応用されています。また、このビジネスダイナミクスとビッグデータを組み合わせて、さまざまな関係性の精度を飛躍的に高めるチャレンジも行っています。

協創が生み出す、より大きな価値に向けて

いま日立が取り組んでいる社会イノベーション事業で重要なコンセプトの一つとなっているのが「協創」です。より大きなイノベーションを実現していくためには、自社の枠を越えて複数のプレイヤーが参加するビジネスのエコシステムが必要であり、日立は情報活用のエコシステムの中核となって価値を提供し、新しいビジネスを加速させていきたいと考えています。そうした事例のいくつかをご紹介します。

まず、マーケティング分野における博報堂さまとの協創事例をご紹介します。これは、お客さま企業にあるビッグデータをもとに、顧客の声(VOC)マネジメントなどによって生活者の潜在ニーズを把握して、より付加価値の高いサービスや顧客接点の強化を図っていくものです。

農業分野では、アグリビジネスベンチャーであるグランパさまとの協創があります。ここではグランパドームという植物工場の施設管理や栽培管理、収穫物の販売管理とともに、植物工場の運営に必要なエネルギーや水のインフラ、そして物流など日立が持っているノウハウがワンパッケージとしてシステム化されています。

続いて、日産自動車さまと損保ジャパンさまをつないで新ビジネスを創出した協創事例です。これは電気自動車「日産リーフ」の走行情報などのテレマティクス分野のビッグデータを損保ジャパンさまが走行距離連動型保険に活用されているものです。これによって、お客さまは納得のいく保険料を実感していただけるだけでなく、走行距離のフィードバックや盗難追跡サービスなどの付加サービスを受けることができます。

一方、日立ではこうしたビッグデータを安心して活用できるようにするための取り組みも展開しています。その一つが博報堂さまと実施したプライバシー侵害に対する意識調査です。その結果、生活者情報を利用されることには期待と不安が半々であり、匿名化などの対策により抵抗感を減らせることがわかりました。そこで私どもは、個人を特定できないような情報加工処理や情報漏えいしないような管理体制の整備といった視点から、関係各所と連携しながら生活者とより良い関係を築ける情報活用のあり方を追求しています。また、日立では国内で初めてプライバシー保護のガイドラインも発表しています。一つはプライバシー影響評価(PIA)と呼ばれるもので、侵害リスクを最小限にとどめるため、情報利活用の前に独自のチェックリストに基づいて影響を評価するものです。もう一つはプロセスごとの保護対策で、データの取得、蓄積、分析、廃棄といった各段階でそれぞれに適した保護対策を行うものです。日立では、こうした自主的な取り組みを進めつつ、社会全体のコンセンサス形成に貢献していきたいと考えています。

情報活用を拡大するプラットフォーム

それでは最後に、情報活用を拡大する日立のプラットフォームについて、最新のハイライトを少しだけご紹介します。一つ目は、東京大学の生産技術研究所と共同開発した超高速データベースエンジン(※)です。これは、検索処理能力に関する業界標準ベンチマーク(TPC‐H)において、世界で初めて100TB クラスに登録されたものです。まさにこれからの超巨大データベース時代における情報活用を切り開くものだと考えています。トラフィック・マネジメント・ソリューション(TMS)は、データ通信のトラフィックをリアルタイムで計測、把握、分析して、ネットワーク帯域の周辺システムを制御することでネットワーク全体をインテリジェント化し、パフォーマンスを飛躍的に向上させることができます。日立では、こうしたプラットフォームもこれからの社会システムの重要な基幹コンポーネントであると考えており、今後、その開発も加速させる方向で進めてまいります。

以上、「情報活用がリードする、ビジネスと社会のイノベーション」という題でお話を進めてまいりました。日立グループはこれからもお客さまや社会の課題をともに見いだして、さまざまな製品やサービス、ソリューションを組み合わせて、ONE HITACHI として課題解決に取り組んでまいります。SOCIAL INNOVATIONIT'S OUR FUTURE これは世界に社会イノベーション事業で応えていく日立の決意を込めたスローガンでございます。ぜひ皆さまと一緒に、日本、そして世界の成長に貢献していきたいと思いますので、これからもなにとぞよろしくお願いします。

※内閣府最先端研究開発支援プログラム「超巨大データベース時代に向けた超高速データベースエンジンの開発と当該エンジンを核とする戦略的社会サービスの実証・評価」の研究開発成果。喜連川優 東大生研 教授/国立情報学研究所 所長と合田和生 東大生研 特任准教授が考案した「非順序型実行原理」を実装し、「Hitachi Advanced Data Binder」として製品化済み。


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